贖罪少女と慈愛の姉は俺を愛欲で惑わす

ららんぼ

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贖罪と慈愛の果て

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 俺と芽衣子のカップルの件は、あっという間に全校生徒に広まってしまった。
 無理もないことだった。人前では控える、と言いながらも、明らかにそれとわかる形で俺に接してくる。どんなに鈍感な人間でも、彼女の俺への接し方を見れば、ただならぬ関係であることは簡単に察しがつくであろう。
 結局、中学時代とは180度異なったベクトルで好奇の目にさらされることになってしまった。最早、平穏な学園生活などと言うものは、少なくとも俺にとっては夢のまた夢の話である。
 ただ、中学時代の注目のされ方と明らかに違うのは、大多数の人間の視線が好意的なものだということだった。
 女子からは、

「楠さんと付き合ってるとか、どんだけいい人なんだろう」

「楠さんから告白したって話だよ」

「普通は告白される側なのに、告白するってマジですごくない?」

 などと噂され、一種の羨望めいた視線が集まっていた。
 一方、男子からはというと、

「楠を彼女にするとかお前どんだけ女の扱い上手いんだよ」

「彼女ほどの完璧美人をぞっこんにさせるんだから、もう太刀打ちできねぇ」

「おかしい……本来ならば憎悪でお前を殴るべきなのに、なぜか敗北が清々しい気分だ……」

「ぶっちゃけ聞くけど……あいつはどんな喘ぎ方をするんだ?」

 と、称賛されているのかからかわれているのかはわからないが、一応一目置かれるようになっていた。おかげで、一気に友達が増えていた。
 批判や侮蔑といった視線ばかり受け続けていた俺には、あまりの違いに驚くばかりであったが、意外と気持ちがよかったのも事実である。
 平穏さは皆無であるが、陰湿さや不穏さとは無縁の環境も悪くはない。

 そんなこんなで金曜日。俺は芽衣子との交際を発端に仲良くなったクラスの男ども数人とボウリングを楽しむことになった。
 芽衣子は俺と過ごしたかったらしく、少しつまらなそうなメッセージを送ってきたが、「友達付き合いも大事だね」と言って、結局は納得してくれた。ちなみに、彼女は俺と会えないならすることがない、という理由で学校の図書室に行くらしい。休日にわざわざ学校に行くというのが、まじめな彼女らしいなと思った。俺にはそんな考えは微塵も浮かぶことがなさそうだ。
 友人と出かけるという、これまでの俺の学校生活では想像だにしない出来事に、俺は少し緊張しつつも、思った以上に楽しく過ごすことができた。
 男同士の付き合いなので、やはり話題は俺と芽衣子のことになったが、その茶化され方も嫌ではない。
 ただ、やったかやってないかという話題にはキョドってしまったので、多分していると確信されてしまっただろう。流石に内容や事の流れまでは悟らせないように頑張ったが。

 ボウリングとその後のファーストフード店での雑談のあと、カラオケに行こうかという話になった。が、もはや俺の財布の中身は紙幣が無くなっていた。見栄を張ってラブホテル代を払ったのが地味に痛い。
 結局、金欠であることを理由にして俺は退散することにした。帰りがけに、またしても芽衣子のことで冷やかされたが、それは仕方のないことだ。多少の誇らしさと妙なむず痒さを感じながら、俺は帰路につく。
 ちょくちょくスマホの画面は確認していたが、どういうわけか一時間ほど前から芽衣子へのメッセージに既読がつかなくなっていた。それ以前まではすぐに確認していたのか、瞬時に返事が来る状態だったにも関わらずだ。

(何か手放せない用事でも出来たのかな?)

 既読がつかなかったり、既読がついても返事が来ないことに不快感を持つ人間もいるらしいが、俺はそこまで執着するタイプではない。そのうち返事が来るだろうと思い、「今から帰るよ」とだけ追加でメッセージを送信した。
 同時に翔子にもメッセージを送っておく。この時間ならば、バイトから帰っているころだろう。帰宅する旨を伝えておかないと、食事を作る時間がどうのこうのと後からうるさい。

(……あれ? 返事が来ないぞ……?)

 いつもはすぐに返事の来る帰宅メッセージなのだが、どういうわけかその返事がいつまで経っても送信されてこない。それどころか、既読にすらならなかった。

(まだバイト終わってないのかな? 今日はいつもより長いシフトだったっけ……?)

 たまにいつも以上に長いシフトの日があるので、今日がその日かとも思ったが、そんなときは前もって伝えてくるのが彼女の常であった。翔子からそんなことは聞いていない。
 何か言いようのない不穏な予感が体を震わせた。芽衣子どころか翔子まで既読がつかないのは何か釈然としない。たまにはそんなこともあるかと考えるが、それでも胸の中にうずく得体のしれない疑念は晴れなかった。

(……とりあえず帰るか)

 ここで一人思案したところで、何かがわかるわけではない。とりあえずは帰るのが先だと思い、俺は家へと歩を進めるのだった。
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