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「トロタどこ行ったんだよ!タクシは死にやがるし、お前らは怪我してるし!早く立てよ!」
魔人を前にして、カズオの怒声が飛ぶ。
スミレは慌てて立ち上がり、ジュンはタクシが落とした槍を拾い上げる。
「偉そうに怒鳴ってんなよ、カズオ!」
「何だと!Rの分際でよー!」
「URなんて、偶々そうだっただけじゃんかよ!」
「つーか、それが才能って奴だろーよ!Rは足引っ張らずに、俺を助けろっつーの!」
「カズオのクセに偉そうに!」
カズオとジュンは言い争いを始めてしまった。
スミレは2人を止められずに、オロオロしている。
「大体よ、カズオ。お前がトロタの事をトロタなんて言うのが、気に入らないんだよ!」
「は?あいつは逃げ出した、弱虫のトロタだろ?ダメなヤツにはダメって言ってあげるのが、正義ってもんだろーよ!」
「バレー部の事は、俺達バレー部で落とし前つけるんだよ。部外者のお前らが、野次馬根性で、いっちょ噛みしてくるんじゃねえよ」
「あいつは、学校中の嫌われものじゃねーか?叩いて何が悪いんだよ」
「何が悪いのかも分からねーのかよ、脳味噌にウジ湧いてるのか?」
「止めて下さい、お2人とも!」
堪りかねたスミレが2人の間に割って入る。
その間、魔人はにやにやしながら何かを用意していた。
「そろそろ攻撃するぞ?ちゃんと防げよ」
魔人は笑いながら、箱のようなモノを投げた。
「私の後ろに下がって下さい!」
スミレは咄嗟に前に出て、スキルを発動させた。
「『バリアー』!!」
「お前は良い女だから、殺さずに連れて帰るぞ。『アイアン・メイデン』!」
魔人の投げた箱から鎖が飛び出し、スミレをバリアーごと拘束した。
箱は人間大の大きさに拡張すると、中にスミレを引きずり込んでいった。
「助け……」
「スミレ!!」
カズオとジュンの目の前で箱が閉じ、スミレが閉じ込められる。
魔人は箱に繋がった鎖を引っ張って回収し、箱を大事そうに自分の隣に置いた。
「てめー、スミレを離しやがれ!『ファイヤーボール』!!」
ジュンがスキルを発動させ、魔人へと撃つ。
が!
「おいおい、どこに撃ってるのだ?」
火球は魔人から逸れ、後方に建つ塔を吹き飛ばした。
「威力は高いなぁ!当たらなければ、意味はないのだがなぁ!」
「つっかえねぇな!引っ込んでろ、ジュン!『スティング・ブレイク』!!」
魔人は大笑いし、カズオは紫の光を纏って魔人に突撃した。
「素人臭くていかんなぁ!てんでなってない」
「なんだと!」
魔人はカズオの剣を軽く弾き、自身の剣を振りかぶった。
「『曖昧な刃』」
「く!『身体強化』!」
魔人の攻撃が発動し、カズオは剣で攻撃を防ごうとする。
「ぐああああ!」
「は?」
上がる悲鳴はジュンのものだった。
刃はカズオではなく、ジュンの周囲に発生して彼を切り裂いていた。
「あの火球は、当たれば怖いからなぁ。貴様の素人剣とは違ってなぁ」
「てめえ!URをバカにすんじゃねーよ!!」
挑発されたカズオは、力任せに剣を叩き付けようとする。
魔人はバックステップで剣を回避し、カズオは勢い余ってたたらを踏んだ。
「『滅茶苦茶な刃』!!」
魔人の剣に恐ろしい量の魔力が発生する。
空間を歪める濃度のその一撃は、易くカズオを粉砕するだろう。
「今回も神とやらは、世界の破壊に失敗した訳だなぁ!」
魔人の剣がカズオを切り合くその刹那――
「『―――』!!」
――遠くからスキルが発動され、世界の全てが停止した。
「なんなのだ?」
カズオを粉砕しようとした魔人は、自身の攻撃が止まっている事に気が付いた。
目の前のカズオも、何が起きたのか分からずに呆けている。
「『大斬撃』!!」
「ぬお!」
魔人は左後方から迫る斬撃を辛うじて躱す。
カズオを巻き込まない様に、斬撃は縦斬りだった。有効範囲が狭いため回避できたが、横切りだったら無防備に直撃していたことだろう。
「そうだ、無防備だ。何をされたのだ?」
魔人はカズオへの興味は失い、大斬撃を放った人物を確認する。
その視線の先には、囚われていた筈のユウとレンが居た。
「別の神のおもちゃか。面倒な事だ!『吹き飛ぶ極光』!!」
魔人の両の翼から、2本の光線が発射される。光線は交わって1本になり、極太の破壊としてユウ達に迫った。
「『フリーズ』!!」
再び世界が停止する。
世界が停止した後に、またしても魔人の攻撃はキャンセルされていた。
「おのれ……『滅茶苦茶な刃』!!」
「ぐ!」
魔人は苛立ちと共に剣を振るい、カズオを吹き飛ばした。
「『リペア』!!」
その隙に、レンがユウに修復のスキルを使用していた。
青い顔をしていたユウは、気力を持って剣を握り直す。
「『大斬撃』」
「調子に乗らないで欲しいな!」
魔人は地面を蹴って上空に飛び、ユウの大斬撃を回避する。
そのまま剣を振り被り、急降下と共にユウへと振り下ろす。
「『フリー」
「く!」
ユウがスキル発動の素振りを見せると、魔人は攻撃を止めて、羽で自身を防御した。
しかし、ユウはスキルを発動させず、防御態勢で着地した魔人の左手側に回る。
「はああ!!」
「ち!神のおもちゃの癖に、少しは動けるという事か!」
ユウは魔人に剣を叩き付ける。魔人は剣で攻撃を防いだが、ユウは右から、左からと攻撃を連続する。
「ぐ……!」
魔人は後退しながら、ユウの攻撃を弾いていく。
ユウは高校生としては中々の動きをしている。とは言え、魔人を打ち負かせる武術的研鑽はない。
それでも魔人が防戦に回っているのは、ユウのスキルが不明だからだ。
(こいつは俺の攻撃をキャンセルさせた……どういうスキルなのだ!)
スキルで攻撃がキャンセルされた後は、魔人は無防備になってしまう。幾ら魔人と言えど、防御無しで大斬撃を食らえば無事では済まない。
「ちい!!」
魔人は大きく剣を振るい、ユウを後退させる。
ユウには突進力が見受けられない。距離さえ離せば問題ないと、大きく後方に飛んだ。
「『フリーズ』!!」
「ぐ……!!」
後方に飛んだ行動はキャンセルされ、次の瞬間、魔人の胸にユウの突きが迫る。
魔人は左腕で防御したが、肉が切り裂かれて鮮血が舞う。
「『大斬撃』!!」
たたらを踏む魔人に向かって、ユウの攻撃が襲い掛かる。
「『曖昧な刃』!!」
魔人は苦し紛れに刃を振るう。
大斬撃は魔人を吹き飛ばし、地面に鮮血の轍を拵えた。
「はああ!!」
ユウは剣を振り上げ、地面に転がる魔人へと駆ける。
さすがの魔人もすぐには立ち上がれない様子。ユウは一気に勝負を決めに掛かった。
「脆い事だなぁ!遊んでないのに壊れたぞ!」
「なに?」
地に伏した魔人の方が、勝ち誇った笑い声を上げる。
ユウは魔人の笑みにハッとして、後方を確認した。
「レン!?」
後ろを確認すると、傷だらけのレンが倒れている。
無残にも切り刻まれた肉体は、タクシの死体の傷跡に似ていた。
「さっきの攻撃は、私ではなくレンを狙ったのか!」
「ああ、当然だ。お前は、スキルを多くは使えないと分かったからな」
「く……」
「顔色が悪いぞ?魔力が減っているぞ?あの玩具に、直して貰わなくていいのか?3回だ!お前は3回スキルを使ったら、壊れ切ってしまうのだろう!」
魔人はユウの秘密を暴き立て、性交前の如く高揚する。
立ち上がって両の翼をはためかせると、ユウを吹き飛ばさんとスキルを発動させた。
「『吹き飛ぶ極光』」
ユウは魔人に剣が届く距離には居ない。
フリーズを使えば魔人の攻撃をキャンセルできるが、キャンセルした所でもう一度攻撃されるだけだ。
「『大斬撃』!!」
「ぐあ!!」
「ぼさっとしてるんじゃねーよ!」
魔人の腹を、カズオの大斬撃が切り裂いた。
ユウはハッとして、魔人との距離を殺しにかかる。
「出来損ないの玩具が鬱陶しい!!『出鱈目な刃』」
「カズオくん!危ないぞ!」
魔人の剣から、質量を持った嵐の如き斬撃が放たれる。
ユウは咄嗟にスキルを使おうとしたが、カズオの目が「邪魔をするな」と訴えていた。
「俺は出来損ないなんかじゃねーんだよ!『肉体強化』」
カズオは叫び、槍の様な剣を構える。
全体重を剣先に乗せ、全力の攻撃を解き放つ。
「『スティング・ブレイク』!!」
剣が、カズオの体が、紫の光に包まれ、高速で発射される。
撃ち出された砲弾に匹敵する速度と威力が、空気を震わせて嵐を打ち払っていく。
ユウもカズオの攻撃に合わせて、魔人との距離を詰めていく。
(スキルを3回使用すると壊れるか。確かにスキルを1回使用する度に頭が割れ、内臓が焼き切れるかと思う。死んでしまってもおかしくないだろう。寧ろ、回復なしで使えるのは2回までだ。読み間違えてくれたのはありがたい)
ユウは思う。
――だからこそ。
「短期決戦で行かせて貰う!」
懐にさえ入れば、後一回のスキルで確実に首を――
「うわああああ」
「カズオくん!」
視界の端で紫の光は消え、どす黒い嵐と血に飲み込まれていった。
カズオの攻撃は、あえなく魔人の攻撃に押し潰されたのだ。
「そうだな。短期で終わってしまうようだなぁ!」
カズオの攻撃の成功を信じたユウと、失敗を確信していた魔人。
次の行動が早いのがどちらか?答えは明白だった。
「『滅茶苦茶な刃』!!」
「『フリーズ』!!」
魔人の攻撃を見て、ユウは反射的にスキルを使ってしまう。
脳細胞が死滅していく感覚と共に、思考や肉体が倦怠感に支配されていく。鼻腔に鉄の臭いが充満し、視界がマトモに効かなくなっていく。
「やはりおかしなスキルだな、攻撃が止められた。で?どうするのだ?『傲慢な刃』!!」
フリーズによって滅茶苦茶な刃はキャンセルされたが、だからと言ってダメージがある訳では無い。
攻撃がキャンセルされることを踏まえていた魔人は、即座に全方位に広がる衝撃波を放った。
「『大斬撃』!!……あぁっ!!」
ユウは大斬撃で魔人の攻撃を相殺しようとしたが、大海に剣を突きたてるような意味の無さ。
大斬撃ごと衝撃波に飲み込まれ、十数メートル吹き飛ばされてしまった。
「はっはははっ!今回も神とやらの抵抗はお終いか!回を重ねるごとにお粗末になっていくのだなあ」
戦場に魔人の勝ち誇った声が残響する。
――殺されると。
ユウは確信したものの、剣を握り立ち上がる力は残っていなかった。
魔人を前にして、カズオの怒声が飛ぶ。
スミレは慌てて立ち上がり、ジュンはタクシが落とした槍を拾い上げる。
「偉そうに怒鳴ってんなよ、カズオ!」
「何だと!Rの分際でよー!」
「URなんて、偶々そうだっただけじゃんかよ!」
「つーか、それが才能って奴だろーよ!Rは足引っ張らずに、俺を助けろっつーの!」
「カズオのクセに偉そうに!」
カズオとジュンは言い争いを始めてしまった。
スミレは2人を止められずに、オロオロしている。
「大体よ、カズオ。お前がトロタの事をトロタなんて言うのが、気に入らないんだよ!」
「は?あいつは逃げ出した、弱虫のトロタだろ?ダメなヤツにはダメって言ってあげるのが、正義ってもんだろーよ!」
「バレー部の事は、俺達バレー部で落とし前つけるんだよ。部外者のお前らが、野次馬根性で、いっちょ噛みしてくるんじゃねえよ」
「あいつは、学校中の嫌われものじゃねーか?叩いて何が悪いんだよ」
「何が悪いのかも分からねーのかよ、脳味噌にウジ湧いてるのか?」
「止めて下さい、お2人とも!」
堪りかねたスミレが2人の間に割って入る。
その間、魔人はにやにやしながら何かを用意していた。
「そろそろ攻撃するぞ?ちゃんと防げよ」
魔人は笑いながら、箱のようなモノを投げた。
「私の後ろに下がって下さい!」
スミレは咄嗟に前に出て、スキルを発動させた。
「『バリアー』!!」
「お前は良い女だから、殺さずに連れて帰るぞ。『アイアン・メイデン』!」
魔人の投げた箱から鎖が飛び出し、スミレをバリアーごと拘束した。
箱は人間大の大きさに拡張すると、中にスミレを引きずり込んでいった。
「助け……」
「スミレ!!」
カズオとジュンの目の前で箱が閉じ、スミレが閉じ込められる。
魔人は箱に繋がった鎖を引っ張って回収し、箱を大事そうに自分の隣に置いた。
「てめー、スミレを離しやがれ!『ファイヤーボール』!!」
ジュンがスキルを発動させ、魔人へと撃つ。
が!
「おいおい、どこに撃ってるのだ?」
火球は魔人から逸れ、後方に建つ塔を吹き飛ばした。
「威力は高いなぁ!当たらなければ、意味はないのだがなぁ!」
「つっかえねぇな!引っ込んでろ、ジュン!『スティング・ブレイク』!!」
魔人は大笑いし、カズオは紫の光を纏って魔人に突撃した。
「素人臭くていかんなぁ!てんでなってない」
「なんだと!」
魔人はカズオの剣を軽く弾き、自身の剣を振りかぶった。
「『曖昧な刃』」
「く!『身体強化』!」
魔人の攻撃が発動し、カズオは剣で攻撃を防ごうとする。
「ぐああああ!」
「は?」
上がる悲鳴はジュンのものだった。
刃はカズオではなく、ジュンの周囲に発生して彼を切り裂いていた。
「あの火球は、当たれば怖いからなぁ。貴様の素人剣とは違ってなぁ」
「てめえ!URをバカにすんじゃねーよ!!」
挑発されたカズオは、力任せに剣を叩き付けようとする。
魔人はバックステップで剣を回避し、カズオは勢い余ってたたらを踏んだ。
「『滅茶苦茶な刃』!!」
魔人の剣に恐ろしい量の魔力が発生する。
空間を歪める濃度のその一撃は、易くカズオを粉砕するだろう。
「今回も神とやらは、世界の破壊に失敗した訳だなぁ!」
魔人の剣がカズオを切り合くその刹那――
「『―――』!!」
――遠くからスキルが発動され、世界の全てが停止した。
「なんなのだ?」
カズオを粉砕しようとした魔人は、自身の攻撃が止まっている事に気が付いた。
目の前のカズオも、何が起きたのか分からずに呆けている。
「『大斬撃』!!」
「ぬお!」
魔人は左後方から迫る斬撃を辛うじて躱す。
カズオを巻き込まない様に、斬撃は縦斬りだった。有効範囲が狭いため回避できたが、横切りだったら無防備に直撃していたことだろう。
「そうだ、無防備だ。何をされたのだ?」
魔人はカズオへの興味は失い、大斬撃を放った人物を確認する。
その視線の先には、囚われていた筈のユウとレンが居た。
「別の神のおもちゃか。面倒な事だ!『吹き飛ぶ極光』!!」
魔人の両の翼から、2本の光線が発射される。光線は交わって1本になり、極太の破壊としてユウ達に迫った。
「『フリーズ』!!」
再び世界が停止する。
世界が停止した後に、またしても魔人の攻撃はキャンセルされていた。
「おのれ……『滅茶苦茶な刃』!!」
「ぐ!」
魔人は苛立ちと共に剣を振るい、カズオを吹き飛ばした。
「『リペア』!!」
その隙に、レンがユウに修復のスキルを使用していた。
青い顔をしていたユウは、気力を持って剣を握り直す。
「『大斬撃』」
「調子に乗らないで欲しいな!」
魔人は地面を蹴って上空に飛び、ユウの大斬撃を回避する。
そのまま剣を振り被り、急降下と共にユウへと振り下ろす。
「『フリー」
「く!」
ユウがスキル発動の素振りを見せると、魔人は攻撃を止めて、羽で自身を防御した。
しかし、ユウはスキルを発動させず、防御態勢で着地した魔人の左手側に回る。
「はああ!!」
「ち!神のおもちゃの癖に、少しは動けるという事か!」
ユウは魔人に剣を叩き付ける。魔人は剣で攻撃を防いだが、ユウは右から、左からと攻撃を連続する。
「ぐ……!」
魔人は後退しながら、ユウの攻撃を弾いていく。
ユウは高校生としては中々の動きをしている。とは言え、魔人を打ち負かせる武術的研鑽はない。
それでも魔人が防戦に回っているのは、ユウのスキルが不明だからだ。
(こいつは俺の攻撃をキャンセルさせた……どういうスキルなのだ!)
スキルで攻撃がキャンセルされた後は、魔人は無防備になってしまう。幾ら魔人と言えど、防御無しで大斬撃を食らえば無事では済まない。
「ちい!!」
魔人は大きく剣を振るい、ユウを後退させる。
ユウには突進力が見受けられない。距離さえ離せば問題ないと、大きく後方に飛んだ。
「『フリーズ』!!」
「ぐ……!!」
後方に飛んだ行動はキャンセルされ、次の瞬間、魔人の胸にユウの突きが迫る。
魔人は左腕で防御したが、肉が切り裂かれて鮮血が舞う。
「『大斬撃』!!」
たたらを踏む魔人に向かって、ユウの攻撃が襲い掛かる。
「『曖昧な刃』!!」
魔人は苦し紛れに刃を振るう。
大斬撃は魔人を吹き飛ばし、地面に鮮血の轍を拵えた。
「はああ!!」
ユウは剣を振り上げ、地面に転がる魔人へと駆ける。
さすがの魔人もすぐには立ち上がれない様子。ユウは一気に勝負を決めに掛かった。
「脆い事だなぁ!遊んでないのに壊れたぞ!」
「なに?」
地に伏した魔人の方が、勝ち誇った笑い声を上げる。
ユウは魔人の笑みにハッとして、後方を確認した。
「レン!?」
後ろを確認すると、傷だらけのレンが倒れている。
無残にも切り刻まれた肉体は、タクシの死体の傷跡に似ていた。
「さっきの攻撃は、私ではなくレンを狙ったのか!」
「ああ、当然だ。お前は、スキルを多くは使えないと分かったからな」
「く……」
「顔色が悪いぞ?魔力が減っているぞ?あの玩具に、直して貰わなくていいのか?3回だ!お前は3回スキルを使ったら、壊れ切ってしまうのだろう!」
魔人はユウの秘密を暴き立て、性交前の如く高揚する。
立ち上がって両の翼をはためかせると、ユウを吹き飛ばさんとスキルを発動させた。
「『吹き飛ぶ極光』」
ユウは魔人に剣が届く距離には居ない。
フリーズを使えば魔人の攻撃をキャンセルできるが、キャンセルした所でもう一度攻撃されるだけだ。
「『大斬撃』!!」
「ぐあ!!」
「ぼさっとしてるんじゃねーよ!」
魔人の腹を、カズオの大斬撃が切り裂いた。
ユウはハッとして、魔人との距離を殺しにかかる。
「出来損ないの玩具が鬱陶しい!!『出鱈目な刃』」
「カズオくん!危ないぞ!」
魔人の剣から、質量を持った嵐の如き斬撃が放たれる。
ユウは咄嗟にスキルを使おうとしたが、カズオの目が「邪魔をするな」と訴えていた。
「俺は出来損ないなんかじゃねーんだよ!『肉体強化』」
カズオは叫び、槍の様な剣を構える。
全体重を剣先に乗せ、全力の攻撃を解き放つ。
「『スティング・ブレイク』!!」
剣が、カズオの体が、紫の光に包まれ、高速で発射される。
撃ち出された砲弾に匹敵する速度と威力が、空気を震わせて嵐を打ち払っていく。
ユウもカズオの攻撃に合わせて、魔人との距離を詰めていく。
(スキルを3回使用すると壊れるか。確かにスキルを1回使用する度に頭が割れ、内臓が焼き切れるかと思う。死んでしまってもおかしくないだろう。寧ろ、回復なしで使えるのは2回までだ。読み間違えてくれたのはありがたい)
ユウは思う。
――だからこそ。
「短期決戦で行かせて貰う!」
懐にさえ入れば、後一回のスキルで確実に首を――
「うわああああ」
「カズオくん!」
視界の端で紫の光は消え、どす黒い嵐と血に飲み込まれていった。
カズオの攻撃は、あえなく魔人の攻撃に押し潰されたのだ。
「そうだな。短期で終わってしまうようだなぁ!」
カズオの攻撃の成功を信じたユウと、失敗を確信していた魔人。
次の行動が早いのがどちらか?答えは明白だった。
「『滅茶苦茶な刃』!!」
「『フリーズ』!!」
魔人の攻撃を見て、ユウは反射的にスキルを使ってしまう。
脳細胞が死滅していく感覚と共に、思考や肉体が倦怠感に支配されていく。鼻腔に鉄の臭いが充満し、視界がマトモに効かなくなっていく。
「やはりおかしなスキルだな、攻撃が止められた。で?どうするのだ?『傲慢な刃』!!」
フリーズによって滅茶苦茶な刃はキャンセルされたが、だからと言ってダメージがある訳では無い。
攻撃がキャンセルされることを踏まえていた魔人は、即座に全方位に広がる衝撃波を放った。
「『大斬撃』!!……あぁっ!!」
ユウは大斬撃で魔人の攻撃を相殺しようとしたが、大海に剣を突きたてるような意味の無さ。
大斬撃ごと衝撃波に飲み込まれ、十数メートル吹き飛ばされてしまった。
「はっはははっ!今回も神とやらの抵抗はお終いか!回を重ねるごとにお粗末になっていくのだなあ」
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