10 / 132
10・恐怖の義兄
しおりを挟む
バーンズ侯爵家で夕食を食べ、
俺は妖精の誘いを涙を堪えて断った。
「お泊りして一緒に寝よう」と
可愛い顔をされて頷いた俺は
悪くないと思う。
が。
背中に感じた殺気に、
咄嗟に「もうしわけありません!」と
深く頭を下げた。
妖精はビックリして、
「また今度ね」と言ってくれたが
俺は妖精に断りの返事をしたのでも
申しわけないと思ったわけでもない。
凍り付くような殺気を放つ
騎士団長に、反射的に
謝罪の言葉を口に出してしまっただけだ。
あの視線を向けられるだけで
騎士団の全員が反射的に
「もうしわけありません!」と
頭を深く下げる。
それぐらいに俺たちは
騎士団長に飼いならされている。
「さぁ、今日はもう遅い。
見送りはいいから
早く寝なさい」と
俺に向けた殺気を一瞬で消し去り、
団長殿は優しい声で
妖精を寝室に促す。
すると控えていた侍女たちが
あれよ、あれよと妖精を連れ出し
玄関ホールには俺と団長殿だけになった。
いや、執事がまだ残っていたか。
「来い」
玄関ホールにいるというのに、
団長殿は短く俺に言うと
さっさと歩き出す。
俺は慌てて後を追った。
馬車の準備をしてくれたのでは?
と思ったが、逆らえる者も、
意見を言える者もこの場には誰もいない。
玄関近くの小さな応接室に
俺は通された。
団長殿は俺に座るように
視線だけで促してくる。
執事が頭を下げてドアを閉めた。
部屋には団長殿と俺の二人だけだ。
重たい空気の中、俺は素直に
ソファーに座った。
団長殿は俺の前にゆっくりと座る。
「それで」
殺気が含まれる声に、
俺は心臓が口から飛び出そうになった。
「私の可愛いエレに、
随分と懐かれたようではないか」
嫉妬か!?
嫉妬されているのか?
「い、いえ。
は、初めての、おと、
おともだち、と言われました」
なんとかそれだけを
喉から絞り出す。
そう。
俺は両手を握られ、
「お友達になってください」と
可愛らしくお願いをされたのだ。
内心、悶絶してしまったのは
言うまでもない。
「友だち? なるほど」
団長殿は納得したように頷く。
「まぁ、それでいい。
なら、異論はないな」
何が?と思った。
だが、結婚の話しかと瞬時に思い直す。
「お聞きしてもよろしいでしょうか」
俺は声が震えないように
丁寧に声を出した。
「なんだ?」
「その、今回のお話は、
私にとっては光栄過ぎる話だと
思っております。
いくら父が団長殿に頼んだからと言って、
侯爵家への婿など、身に余ります。
ましてや、あの……、か、可愛らしい
エレミアス様を伴侶にして、
私のような者がバーンズ侯爵家を
継ぐなどと……」
何かの間違いでは無いかと
俺は思う。
最初は喜びにあふれたが、
どう考えても俺には身に余る幸せだ。
だが俺の言葉を団長殿は
当たり前だとでも言うような顔で聞く。
「可愛いエレの伴侶になれるのだ。
身に余る幸せでない者などいない」
真顔で言われた。
それには頷くしかできないが、
厳格で恐ろしい騎士団長の印象が
妙な方向で変ってきそうだ。
「あの子は可愛い。
幼い天使だ」
そして恐怖の魔王、氷の悪魔とも
呼ばれている団長殿が、語り出した。
変なスイッチが入ったかのように
可愛い天使の話をし始める。
あの妖精の可愛らしさには
同意しかないし、
話している内容は頷けるのだが
なんだかおかしいと思うのは
俺がおかしいのか?
「つまりだ。
私が君を選んだのは
ブレイトン公爵家との付き合いと、
君の父上の顔を立てたこと。
そして、君が不能だからだ」
いや、待て。
ほんとに、耳がおかしくなってしまったのか?
俺が不能だと言う話が
何故ここで出てくる?
「あの子は賢い。
ただ、世間知らずだ。
私と両親が大切に育てて来たからな。
あの子が社交界にデビューをして
令嬢たちの欲にまみれるのが恐ろしい」
そうだ。
俺は身震いした。
あの女性たちの恐ろしさは
俺が身をもって知っている。
貴族社会は男女ともに
純潔を大切にしている。
特に初婚相手に関しては
高位貴族は特に重要視しているのだ。
だからこそ、高位貴族の子どもは
低い身分の令嬢たちに狙われる。
多少強引にでもコトが進めば
純潔を盾に婚姻に結びつけることが
可能になるからだ。
だからこそあの令嬢たちは
公爵家である俺にまで
強引に迫ることが
できたのだろう。
一夜をともにすることができれば
公爵家の次男の嫁になれる
可能性がかなり高くなるのだ。
あんな令嬢たちの猛攻撃を
可愛い妖精が受けたらどうなるのか……。
俺は血の気が引くのを感じた。
「理解したか?
あの子はまもなく15歳になる。
だがあの子は……
外の世界を知らずに、
この屋敷の中だけで生きてきたのだ。
身体も弱く、
女性との婚姻も
難しいとも思える。
あの子は小さいだろう?
小さく、小さく生まれてきたのだ。
生まれた時は、
これぐらいしかなかった」
と団長殿が手のひらを広げた。
さすがにそれは小さすぎるのでは?
と思ったが、もちろん、俺は
口にすることは無い。
それに、小さく生まれたというのは
本当だと思った。
最初は、幼い子どもだと思った。
イスに座っていたから、
身長がわからなかったことと、
幼い顔立ちで、そう思ったのだが、
来年、成人を迎えると聞いて
本気で驚いた。
最初見た時は、
10歳程度の子どもだと
思ったからだ。
「そこで私は考えたのだ。
君があの子の相手ならば、
あの子は穢されることなく、
この侯爵家で守られて
生きていくことができるのではないかと」
穢される……つまり、
閨事が無いという意味だよな。
俺が一瞬でも、ムラッときたことは
永遠の秘密にしなければならないようだ。
「悪い話ではないだろう?
あの子を守るだけで、
バーンズ侯爵家の次期当主の
婿になることができるのだ」
「身に余るお話だと思います。
きっと、父も納得しているからこその
お話だと思います。
ですが、団長殿はどうされるのでしょうか」
俺はバーンズ侯爵家は団長殿が
継ぐものだとばかり思っていた。
「私か?
私はこれでも騎士団長の地位が
あるからな。
どうにでも生きていける」
にやり、と口元が歪む。
「それに私は亡き母の
爵位を持っていてな。
来年は婚約者との式も挙げる予定だ。
君がエレを生涯守ると誓うのであれば
私は心置きなく、新婚生活を
迎えることができるというものだ」
「ですが、その。
私は領地経営など……」
バーンズ侯爵家は広大な領土を持ち、
資産にも困らない。
ただ王家との縁があるだけの
公爵家とはわけが違う。
そんな侯爵家の領地経営など
できるはずがないし、
それ以前に俺は座学は苦手だった。
「あぁ、それに関しては大丈夫だ」
俺の不安を払うかのように
団長殿は言う。
「領地にはまだ父がいるし、
優秀な補佐役が何人もいる。
あの子も体は弱いが、
経験が無いだけで、
知識や学力だけで考えれば
私よりもはるかに優秀だよ」
え?
あの妖精が?
「君がすることは
領地経営ではない。
あの子を守ることだ。
この屋敷の外で起こりうる
あらゆる危険から。
そして社交界に渦巻く
令嬢と令息から。
君は剣になり、盾になり、
あの子のために生きろ」
それは命令だった。
俺が拒絶するなど
まったく思っていない顔で、
するどい声で。
ただ、あの子を守れ、という。
その強い声に、
俺は咄嗟に立ち上がる。
そして、反射的に動くのではなく、
自分の意志で胸に手を当てた。
敬礼ではなく、相手に敬意を示す
騎士としての礼だ。
「この命が尽きる限り、
お守り致します」
俺の言葉に団長殿は
満足そうな顔をした。
「いいだろう。
その誓い、忘れるな」
そして俺は、たった一日で
バーンズ侯爵家の次期当主の婿に
なることが決まった。
夜中に屋敷に戻った俺を
俺の両親も兄までもが
寝ずに待っており、
話を聞きたがる。
俺は簡潔に騎士団長の弟と
顔合わせをして、婚約が決まったこと。
そしてバーンズ侯爵家は
その弟が継ぐことを告げた。
俺の言葉に家族全員が、
いや、屋敷中の者たちが
大喜びをしたのは言うまでもない。
俺は妖精の誘いを涙を堪えて断った。
「お泊りして一緒に寝よう」と
可愛い顔をされて頷いた俺は
悪くないと思う。
が。
背中に感じた殺気に、
咄嗟に「もうしわけありません!」と
深く頭を下げた。
妖精はビックリして、
「また今度ね」と言ってくれたが
俺は妖精に断りの返事をしたのでも
申しわけないと思ったわけでもない。
凍り付くような殺気を放つ
騎士団長に、反射的に
謝罪の言葉を口に出してしまっただけだ。
あの視線を向けられるだけで
騎士団の全員が反射的に
「もうしわけありません!」と
頭を深く下げる。
それぐらいに俺たちは
騎士団長に飼いならされている。
「さぁ、今日はもう遅い。
見送りはいいから
早く寝なさい」と
俺に向けた殺気を一瞬で消し去り、
団長殿は優しい声で
妖精を寝室に促す。
すると控えていた侍女たちが
あれよ、あれよと妖精を連れ出し
玄関ホールには俺と団長殿だけになった。
いや、執事がまだ残っていたか。
「来い」
玄関ホールにいるというのに、
団長殿は短く俺に言うと
さっさと歩き出す。
俺は慌てて後を追った。
馬車の準備をしてくれたのでは?
と思ったが、逆らえる者も、
意見を言える者もこの場には誰もいない。
玄関近くの小さな応接室に
俺は通された。
団長殿は俺に座るように
視線だけで促してくる。
執事が頭を下げてドアを閉めた。
部屋には団長殿と俺の二人だけだ。
重たい空気の中、俺は素直に
ソファーに座った。
団長殿は俺の前にゆっくりと座る。
「それで」
殺気が含まれる声に、
俺は心臓が口から飛び出そうになった。
「私の可愛いエレに、
随分と懐かれたようではないか」
嫉妬か!?
嫉妬されているのか?
「い、いえ。
は、初めての、おと、
おともだち、と言われました」
なんとかそれだけを
喉から絞り出す。
そう。
俺は両手を握られ、
「お友達になってください」と
可愛らしくお願いをされたのだ。
内心、悶絶してしまったのは
言うまでもない。
「友だち? なるほど」
団長殿は納得したように頷く。
「まぁ、それでいい。
なら、異論はないな」
何が?と思った。
だが、結婚の話しかと瞬時に思い直す。
「お聞きしてもよろしいでしょうか」
俺は声が震えないように
丁寧に声を出した。
「なんだ?」
「その、今回のお話は、
私にとっては光栄過ぎる話だと
思っております。
いくら父が団長殿に頼んだからと言って、
侯爵家への婿など、身に余ります。
ましてや、あの……、か、可愛らしい
エレミアス様を伴侶にして、
私のような者がバーンズ侯爵家を
継ぐなどと……」
何かの間違いでは無いかと
俺は思う。
最初は喜びにあふれたが、
どう考えても俺には身に余る幸せだ。
だが俺の言葉を団長殿は
当たり前だとでも言うような顔で聞く。
「可愛いエレの伴侶になれるのだ。
身に余る幸せでない者などいない」
真顔で言われた。
それには頷くしかできないが、
厳格で恐ろしい騎士団長の印象が
妙な方向で変ってきそうだ。
「あの子は可愛い。
幼い天使だ」
そして恐怖の魔王、氷の悪魔とも
呼ばれている団長殿が、語り出した。
変なスイッチが入ったかのように
可愛い天使の話をし始める。
あの妖精の可愛らしさには
同意しかないし、
話している内容は頷けるのだが
なんだかおかしいと思うのは
俺がおかしいのか?
「つまりだ。
私が君を選んだのは
ブレイトン公爵家との付き合いと、
君の父上の顔を立てたこと。
そして、君が不能だからだ」
いや、待て。
ほんとに、耳がおかしくなってしまったのか?
俺が不能だと言う話が
何故ここで出てくる?
「あの子は賢い。
ただ、世間知らずだ。
私と両親が大切に育てて来たからな。
あの子が社交界にデビューをして
令嬢たちの欲にまみれるのが恐ろしい」
そうだ。
俺は身震いした。
あの女性たちの恐ろしさは
俺が身をもって知っている。
貴族社会は男女ともに
純潔を大切にしている。
特に初婚相手に関しては
高位貴族は特に重要視しているのだ。
だからこそ、高位貴族の子どもは
低い身分の令嬢たちに狙われる。
多少強引にでもコトが進めば
純潔を盾に婚姻に結びつけることが
可能になるからだ。
だからこそあの令嬢たちは
公爵家である俺にまで
強引に迫ることが
できたのだろう。
一夜をともにすることができれば
公爵家の次男の嫁になれる
可能性がかなり高くなるのだ。
あんな令嬢たちの猛攻撃を
可愛い妖精が受けたらどうなるのか……。
俺は血の気が引くのを感じた。
「理解したか?
あの子はまもなく15歳になる。
だがあの子は……
外の世界を知らずに、
この屋敷の中だけで生きてきたのだ。
身体も弱く、
女性との婚姻も
難しいとも思える。
あの子は小さいだろう?
小さく、小さく生まれてきたのだ。
生まれた時は、
これぐらいしかなかった」
と団長殿が手のひらを広げた。
さすがにそれは小さすぎるのでは?
と思ったが、もちろん、俺は
口にすることは無い。
それに、小さく生まれたというのは
本当だと思った。
最初は、幼い子どもだと思った。
イスに座っていたから、
身長がわからなかったことと、
幼い顔立ちで、そう思ったのだが、
来年、成人を迎えると聞いて
本気で驚いた。
最初見た時は、
10歳程度の子どもだと
思ったからだ。
「そこで私は考えたのだ。
君があの子の相手ならば、
あの子は穢されることなく、
この侯爵家で守られて
生きていくことができるのではないかと」
穢される……つまり、
閨事が無いという意味だよな。
俺が一瞬でも、ムラッときたことは
永遠の秘密にしなければならないようだ。
「悪い話ではないだろう?
あの子を守るだけで、
バーンズ侯爵家の次期当主の
婿になることができるのだ」
「身に余るお話だと思います。
きっと、父も納得しているからこその
お話だと思います。
ですが、団長殿はどうされるのでしょうか」
俺はバーンズ侯爵家は団長殿が
継ぐものだとばかり思っていた。
「私か?
私はこれでも騎士団長の地位が
あるからな。
どうにでも生きていける」
にやり、と口元が歪む。
「それに私は亡き母の
爵位を持っていてな。
来年は婚約者との式も挙げる予定だ。
君がエレを生涯守ると誓うのであれば
私は心置きなく、新婚生活を
迎えることができるというものだ」
「ですが、その。
私は領地経営など……」
バーンズ侯爵家は広大な領土を持ち、
資産にも困らない。
ただ王家との縁があるだけの
公爵家とはわけが違う。
そんな侯爵家の領地経営など
できるはずがないし、
それ以前に俺は座学は苦手だった。
「あぁ、それに関しては大丈夫だ」
俺の不安を払うかのように
団長殿は言う。
「領地にはまだ父がいるし、
優秀な補佐役が何人もいる。
あの子も体は弱いが、
経験が無いだけで、
知識や学力だけで考えれば
私よりもはるかに優秀だよ」
え?
あの妖精が?
「君がすることは
領地経営ではない。
あの子を守ることだ。
この屋敷の外で起こりうる
あらゆる危険から。
そして社交界に渦巻く
令嬢と令息から。
君は剣になり、盾になり、
あの子のために生きろ」
それは命令だった。
俺が拒絶するなど
まったく思っていない顔で、
するどい声で。
ただ、あの子を守れ、という。
その強い声に、
俺は咄嗟に立ち上がる。
そして、反射的に動くのではなく、
自分の意志で胸に手を当てた。
敬礼ではなく、相手に敬意を示す
騎士としての礼だ。
「この命が尽きる限り、
お守り致します」
俺の言葉に団長殿は
満足そうな顔をした。
「いいだろう。
その誓い、忘れるな」
そして俺は、たった一日で
バーンズ侯爵家の次期当主の婿に
なることが決まった。
夜中に屋敷に戻った俺を
俺の両親も兄までもが
寝ずに待っており、
話を聞きたがる。
俺は簡潔に騎士団長の弟と
顔合わせをして、婚約が決まったこと。
そしてバーンズ侯爵家は
その弟が継ぐことを告げた。
俺の言葉に家族全員が、
いや、屋敷中の者たちが
大喜びをしたのは言うまでもない。
44
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由
スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの二人は、スキルを得た事で魔王討伐に旅立つ勇者と彼の帰還を待つだけのただの親友となる。
勇者と親友の無自覚両片想いのじれったい恋愛の物語。
聖女を演じた巻き添え兄は、王弟殿下の求愛から逃げられない
深嶋(深嶋つづみ)
BL
谷口理恩は一年ほど前、妹と一緒に異世界に転移してしまった。
聖女として魔術の才を開花させた妹・世奈のおかげもあって、二人はアルゼノール王国の大教会に保護され、不自由のない暮らしを送ることができている。が、最近は世奈の奔放さに理恩は頭を抱えることもあった。
ある日、世奈の仕事を肩代わりした理恩は、病に臥せっている幼い第二王子・イヴァン王子のもとに参じることに。
――「僕が大人になったら、僕の妃になってくれませんか」。
何度も謁見を重ねるうちに理恩に懐いた彼は、目の前の聖女が偽者であることに気付かぬまま、やがて理恩に求愛する。
理恩は驚き、後ろめたい気持ちを抱きながらも、「大人になっても同じ気持ちでいてくれたなら」と約束を交わした。
その直後、何者かの陰謀に陥れられた世奈の巻き添えとなり、理恩は辺境の地へと飛ばされてしまい……。
――数年後、アルゼノール王国を出て世界中を巡っていた理恩は、とある国で偶然、王弟・イヴァンと再会する。
傷心の旅をしているのだという彼は、どういうわけか理恩との交流を持ちたがって――?
「地味な婚約者を捨てて令嬢と結婚します」と言った騎士様が、3ヶ月で離婚されて路頭に迷っている
歩人
ファンタジー
薬師のナターリアは婚約者の騎士ルドガーに「地味なお前より伯爵令嬢が
ふさわしい」と捨てられた。泣きはしなかった。ただ、明日から届ける薬が
一人分減るな、と思っただけ。
ルドガーは華やかな伯爵令嬢イレーネと結婚し、騎士団で出世する——はずだった。
しかしイレーネの実家は見栄だけの火の車。持参金は消え、借金取りが押し寄せ、
イレーネ本人にも「稼ぎが少ない」と三行半を突きつけられた。
3ヶ月で全てを失ったルドガーが街角で見たのは、王宮薬師に抜擢された
ナターリアが、騎士団長と笑い合う姿だった。
「なあ、ナターリア……俺が間違っていた」
「ええ、知ってます。でも、もう関係のない話ですね」
薄紅の檻、月下の契り
雪兎
BL
あらすじ
大正十年、華やかな文明開化の影で、いまだ旧き因習が色濃く残る帝都。
没落しかけた名家に生まれた“Ω(オメガ)”の青年・白鷺伊織は、家を救うため政略的な「番(つがい)」として差し出される運命にあった。
しかし縁談の相手は、冷酷無慈悲と噂される若き実業家であり“α(アルファ)”の当主・九条鷹司。
鉄道・銀行事業で財を成した九条家は、華族でもありながら成り上がりと蔑まれる存在。
一方の伊織は、旧華族の矜持を胸に秘めながらも、Ωであるがゆえに家族から疎まれてきた。
冷ややかな契約婚として始まった同居生活。
だが、伊織は次第に知ることになる。
鷹司がΩを所有物としてではなく、一人の人間として尊重しようとしていることを。
発情期を巡る制度、番契約を強制する家制度、そして帝都に広がる新思想。
伝統と自由のはざまで揺れながら、二人は「選ばされた番」から「自ら選ぶ伴侶」へと変わっていく——。
月明かりの下、交わされるのは支配ではなく、誓い。
大正浪漫薫る帝都で紡がれる、運命を超える愛の物語。
遊び人殿下に嫌われている僕は、幼馴染が羨ましい。
月湖
BL
「心配だから一緒に行く!」
幼馴染の侯爵子息アディニーが遊び人と噂のある大公殿下の家に呼ばれたと知った僕はそう言ったのだが、悪い噂のある一方でとても優秀で方々に伝手を持つ彼の方の下に侍れれば将来は安泰だとも言われている大公の屋敷に初めて行くのに、招待されていない者を連れて行くのは心象が悪いとド正論で断られてしまう。
「あのね、デュオニーソスは連れて行けないの」
何度目かの呼び出しの時、アディニーは僕にそう言った。
「殿下は、今はデュオニーソスに会いたくないって」
そんな・・・昔はあんなに優しかったのに・・・。
僕、殿下に嫌われちゃったの?
実は粘着系殿下×健気系貴族子息のファンタジーBLです。
断罪回避のために親友と仮婚約したはずが、想像以上に執着されていた。
鷲井戸リミカ
BL
ある日アーサーは、自分がネット小説の世界に転生していることに気が付いた。前世の記憶によれば親友のフェルディナンドは、悪役令息という役割らしい。最終的に婚約者から婚約破棄され、断罪後は国外追放されてしまうのだとか。
大事な親友が不幸になるのを見過ごすわけにはいかない。とにかく物語の主人公たちから距離をとらせようと、アーサーはフェルディナンドを自分の婚約者にしてしまった。
とりあえず仮婚約という形にしておいて、学園を卒業したら婚約を解消してしまえばいい。そう考えていたはずがアーサーのとある発言をきっかけに、フェルディナンドの執着が明らかになり……。
ハッピーエンドです。
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
拗らせ問題児は癒しの君を独占したい
結衣可
BL
前世で限界社畜として心をすり減らした青年は、異世界の貧乏子爵家三男・セナとして転生する。王立貴族学院に奨学生として通う彼は、座学で首席の成績を持ちながらも、目立つことを徹底的に避けて生きていた。期待されることは、壊れる前触れだと知っているからだ。
一方、公爵家次男のアレクシスは、魔法も剣術も学年トップの才能を持ちながら、「何も期待されていない」立場に嫌気がさし、問題児として学院で浮いた存在になっていた。
補習課題のペアとして出会った二人。
セナはアレクシスを特別視せず、恐れも媚びも見せない。その静かな態度と、美しい瞳に、アレクシスは強く惹かれていく。放課後を共に過ごすうち、アレクシスはセナを守りたいと思い始める。
身分差と噂、そしてセナが隠す“癒やしの光魔法”。
期待されることを恐れるセナと、期待されないことに傷つくアレクシスは、すれ違いながらも互いを唯一の居場所として見つけていく。
これは、静かに生きたい少年と、選ばれたかった少年が出会った物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる