長編版・不能の公爵令息は婚約者を愛でたい(が難しい)

たたら

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11:貴族院と僕

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 あの騎士さんと出会ってから
僕の毎日は物凄く変わってしまった。

何故って、あの騎士さんが。
僕の初めてのお友達が、
僕の婚約者になったんだ。

名前はガイディスって言うけれど、
僕はガイって呼んでる。

最初、上手く呼べなかったからだけど
ガイって呼ぶのは世界中で
僕だけだっていうから、
僕はそれだけで嬉しくなる。

だって僕だけ、特別ってことだもんね。

ガイは騎士をしているけれど、
僕が成人を迎えて結婚できる年になったら
騎士を辞めてバーンズ侯爵家に
婿入りしてくれるんだって。

だから今から徐々にだけれど、
僕と一緒にバーンズ侯爵家で
当主になるための勉強をしてくれているんだ。

僕もガイと一緒に居れるのは嬉しいし、
この家に僕が必要とされてるみたいで
学ぶのも楽しい。

兄は本当の母様が持っていた爵位を継いで
お嫁さんを貰うんだって言っていた。

兄がこの家を出てしまうのは悲しいけれど、
いつでも会えるよ、って言ってくれた。

それにお嫁さん……未来の義姉さんも
とっても素敵な人だ。

僕のことを可愛い、可愛いって
いつも笑顔で言ってくれるし、
とっても優しい。

あと、兄様がカッコイイってこと、
ちゃんとわかってくれている。

兄様は見た目が怖そうに見えるから
誤解されやすいみたいだけれど、
義姉様はちゃんとそれを
理解してくれているんだ。

そんなところも、僕は嬉しい。

ってことをガイに言ったら、
「まぁ、団長がカッコイイのは
本当だからな」と頷いてくれた。

少しもったいぶった言い方だったけれど
ガイも兄様のことをカッコイイって
思ってるってことだ。

だからガイも義姉様とは
仲良くできると思う。

女の人が苦手だって言ってたけれど、
きっと義姉様は別に違いない。

今度、紹介できたらいいんだけどな。

そんなガイは毎日は無理だけど
週に何度も僕に会いに来てくれる。

会いに来てくれた日は
一緒に勉強したり、
時間が無い時はお茶を飲んで過ごしている。

僕は毎日が楽しくて仕方がないんだ。

 ガイが来てくれるようになってから
僕の体調は驚くほど良くなった。

熱を出すことも無くなったし、
庭を散歩しても息切れしなくなったのだ。

 お医者さんはガイと
一緒に庭を散歩したり
沢山、おしゃべりをするようになり
体力がついて来たのではないか?

ということだった。

そう言われたら、
この屋敷の皆は僕の体調を
気遣ってくれるので、
おしゃべりをしていると
僕をソファーに座らせたり、
お茶を飲ませたり、
お昼寝させようとする。

でもガイがいると僕は
ガイと一緒に歩きながら
おしゃべりしたり、

サロンに行く途中に
休憩することもなく
ガイの腕に掴まって
一気にサロンまで歩いたりする。

そうしているうちに
自然と体力がついて来たのかもしれない。

僕の周囲は過保護ばかりだから
ガイが会いに来てくれるようになって
本当に良かった。

僕は元気になってきたら
学院に通うことも考え始めた。

今までは、行かなくてもいいや、
って思っていたけれど。

ガイの学院時代の話を聞いて、
僕も行きたいって思うようになったんだ。

僕とガイは6歳ぐらい離れてるけど
ガイの知っている学院の先生たちは
いまだに学院で教師をしている。

その先生たちの話を聞いていて
僕もその先生を見たくなった。

親近感?みたいなのが湧いてきて
授業を受けてみたくなる。

今まではたまにしか行かないし、
学院の先生たちも
気にしたことはなかったけれど、

先生たちそれぞれの癖や、
課題の出し方、それに
それぞれの先生たちの
生徒への付き合い方まで
教えてくれて、僕は学院に行っても
何にも見てなかったんだって気が付いた。

学院の先生たちは僕にとって
ただ『先生』という記号で
見ているだけだった。

ひとりひとり個性を持ってるなんて
考えたことなかった。

そう思ったら、クラスメイトたちも
僕は『クラスメイト』という
一塊で見ていたけれど。

ひとりひとりに目を向けたら
僕と友達になってくれるひとも
いるかもしれない、って思えた。

だから僕はガイの休みの日以外で
体調が良い時は学院に行くことに決めた。

兄も学院に関しては
行っても行かなくてもいいって
思ってるみたいだったから
執事のセバスにこの話をしたら
何故か涙ぐみながら
「素晴らしいご決断です」って言われた。

この屋敷の皆は僕が何かを
しようとするといつも涙ぐんで
大喜びをしてくれるから、
この時のセバスもいつもと同じ
反応だっただけだろうけど。

でも僕は背中を押されたみたいで
嬉しかったんだ。

だから僕は今日、学院に行く。

侍女のアンナに制服を準備してもらい
久しぶりに長袖の白シャツに腕を通した。

「ぼっちゃま、素敵ですわ」

アンナが僕の袖口のボタンを留めてくれる。

「タイとタイピンはどれになさいますか?」

学院には学年ごとにネクタイの色が違う。

僕の学年は緑色だ。

たまたま僕の目と同じ色なので
目立たないけれど。

もし赤とか鮮やかな色だったら
ぼんやりとした色彩の僕は、
ネクタイばかりが目につく
制服姿になっていたと思う。

僕はアンナが差し出してくれた箱を見た。

色んなタイピンやブローチが並んでいる。

僕は普段、タイピンは使わないから
こんなに数はいらないけど、
両親と兄が沢山揃えてくれている。

制服のネクタイは2種類あって、
薄い布でスカーフっぽいものと
ネクタイの形をしているものだ。

学年の色さえ合っていれば
あまり厳しくは言われないので、
女生徒たちはスカーフ型のタイを
リボンみたいに結んでブローチで
留めている人もいるし、

男子生徒でもネクタイを半分に折って
さらに細い形にしてピンで留めてる人もいる。

みんなおしゃれだな、って思うけれど
僕には真似できそうにない。

何故って、なにかの拍子にピンが
外れてしまったら
自分で元の形に戻せないからだ。

その代りに、僕は可愛いタイピンを
使うことにした。

箱の中には兄が普段使っているような
クールな形のものもあるけれど、
うさぎや猫の形をした可愛いものもある。

「あれ? アンナ、これは?」

僕が見たことのないブローチがある。

「これは先日、ブレイトン公爵子息が
置いて行かれたものですわ」

「ガイが?」

「はい。ぼっちゃまがお疲れで
サロンでお休みになっている時に、
次にぼっちゃまが学院に行かれる際、
よければ使って欲しいと」

「そうなんだ。
ガイってば、言ってくれればよかったのに」

僕に直接渡してもらえたら
お礼だって言えたし……と思ったけれど、

思い返せばその日は、
僕はガイとの散歩が楽しくて
いつもより長時間、庭で過ごしてしまい、
結局、ガイが来ているのにお昼寝して、
目が覚めたらガイがもう帰宅しなければ
ならない時間になっていたのだ。

「なら、今日はこれにする」

「かしこまりました」

アンナはそう言い、
薄い布のスカーフ型タイを持つ。

「アンナ? 今日はこれ?」

「はい、こちらのブローチは
大ぶりですので、こちらの方が
映えると思われます」

僕は基本的にやってもらうことに
文句は言わないようにしているので
わかった、と頷いた。

アンナは僕の方に緑色のスカーフを
僕の首にふんわり巻いた、

襟もとには、ガイがプレゼントしてくれた
猫が可愛くお座りしているブローチを付けた。

ブレイトン公爵家の家門は
確か獅子だったと思う。

モチーフの猫は可愛いけれど、
どこか獅子っぽい。

それに猫の目が金色で、
ガイみたいだって僕は思った。

「さぁ、できましたよ」と
アンナに言われて僕は鏡を見た。

可愛い猫が、僕を守ってくれている。

「ありがとう、アンナ。
今日は頑張って行ってくるよ」

「はい。ただご無理はしませんように」

アンナはそう言い、頭を下げる。

「うん」と僕は返事をして、
まずは朝食を食べるために
アンナを連れて食堂に向かった。




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