長編版・不能の公爵令息は婚約者を愛でたい(が難しい)

たたら

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34:成長と恋

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 僕はガイのお膝の上で
ティーナの屋敷での話をした。

僕が嫉妬したとか、
恥ずかしかったけれど、
これも成長だって思えたし、
ちゃんと伝えないと、
ガイは心配性だから
心配しすぎて倒れちゃうと思ったのだ。

「それでね、マックスさんは
僕のことを成長の証だって
言ってくれたの。

ティーナはね、
僕の気持ちが恋だって」

「こ、こ、恋!?」

「うん。
会えない時間が恋を育てるって
指南書に書いてあったから、
きっとそうだと思う」

僕がそういうと、
ガイはものすごく挙動不審になった。

僕を膝の上から
おろしたかと思うと、
床に跪く。

「俺は……俺はもう、
死んでもいい。
いや、まだ死ねない。
だが、もう……」

「ガイ?
どうしたの?
大丈夫?」

いきなり跪いたかと思うと
小声で何やらつぶやいて
体を震わせている。

どうしたんだろう。
泣いてる……みたい?

そこに、カチャリと部屋の
扉が開く音がした。

「……ガイディス・ブレイトン、
何をしている?」

「兄様」

兄が部屋に入ってくるなり
ガイを見下ろした。

「こいつは何してるんだ?」

そう聞かれても僕もわからないから
首をかしげるしかない。

「顔をあげろ、ガイディス・ブレイトン」

「はっ!」

素早い動作で立ち上がったけど、
ガイの顔は真っ赤だった。

「報告を」

「はっ!
可愛く愛らしい妖精に
愛を乞うておりました!」

敬礼をしながら叫ぶようにガイは言う。

「ふむ。
跪いて私の天使に愛を乞うとは
なかなか殊勝な心掛けだな」

兄はそういうと、
僕に手を伸ばした。

おいで、と腕を広げるので
僕は迷わず立ち上がって
兄の腕に飛び込んでいく。

「しばらく帰れなくてすまなかった」

ちゅって頭にキスをされる。

「いいんです。
兄様がお仕事なのは
わかってますから」

でも、寂しかったのは
本当だから、僕は兄の腰に
しがみついて、大きな胸に
頭をぐりぐりする。

「相変わらず私のエレは可愛いな」

よしよしと頭を撫でられ
僕は嬉しくなった。

「今日は一緒に寝るとするか」

「ほんと!」

「え?」

喜ぶ僕の声に、
ガイの声が重なった。

「どうしたの? ガイ」

「い、いえ、その、
団長殿と一緒に寝る……とは?」

何を聞いてるのかわからずに
僕は「兄様と一緒に寝るんだよ」と
返事をしてしまう。

「兄様はね、
寝る前に本を読んでくれたり、
お話をしてくれたりするんだ」

「そ、そう、なのですね」

ガイが急に変な口調になる。

「なにか不満でも?」

兄様が言うと、ガイはブンブンと
首を横に振った。

「そうだ、兄様。
今日はね、ガイも一緒に
夕食を食べようって言ってるの」

「そうか。
それは楽しみだな」

「うん!」

なぜかガイが目を見開いて
僕を見たけれど。

僕はガイがなんでそんな
顔をしたのかわからずに、
夕食のデザートを思い浮かべる。

星のゼリーは、僕が考えた
星の形をした果物が入ったゼリーなんだ。

小さなココの実は、ブドウみたいに
甘くておいしいけれど、
とっても変な形をしている。

それを切ったら星みたいな
形だと気が付いて、
僕はシェフにこれを入れて
ゼリーを作ったら
星のゼリーになりそう、って
言ってみたんだ。

そしたらシェフはぜひやってみましょう、
って言ってくれて。

ゼリーはできたけれど、
僕は兄とガイにも
食べてもらいたくって、
ゼリーは食べずに
保存してもらっていたのだ。

それをようやく食べることができる。

ふふ。
きっと二人とも、
お星さまの形に驚くよね。

くふくふと笑いがこみあげてきて
僕が声を漏らしたら、
兄は優しく僕の髪をなでる。

「楽しそうだな」

「うん。
一緒にご飯を食べるの、楽しみ」

「あぁ」

と兄は返事をして、
僕をまたソファーに座らせる。

「着替えてくるから、
夕食までゆっくりしておくといい」

「はい、兄様」

「ガイディス・ブレイトン、
頼むぞ」

「お任せください」

ガイは兄に何かを頼まれた。
でも僕にはそれが何かわからない。

兄が部屋から出ていくのを見て
僕はガイに聞く。

「兄様に何を頼まれたの?」

「いや、頼まれたというか、
俺がやりたいからやってるだけで」

「何をしてるの?」

「……妖精を愛でて
命がけで守る……こと」

「うん? なに?」

声が小さくてよく聞こえない。

「俺、俺は!」

今度は急にガイの声が大きくなった。

「エレを愛してる」

びっくりした。
急にそんなことを言われて。

でも、驚いたけれど、嬉しい。

「嫉妬した、寂しかったと
そう言われて、俺は、
気が狂うかと思った。

それぐらい、嬉しかった」

大きな手が僕に差し出された。

「愛してる。
このまま、連れて帰りたいぐらいに。
だから、だから」

さっき兄がしたみたいに、
ガイの手が、おいで、ってなった。

僕はいつだってガイの膝に乗ったし、
抱っこもしてもらってるし。

それはいつものことで
当たり前だったけれど。

こうやってガイが僕を誘って、
僕の意思で、ガイの胸に
飛び込むのは初めてだった。

いつも、なんとなくガイに甘えて。
なんとなく抱っこしてもらって。

兄にしていたみたいに、
いつも当たり前にしていたこと。

でも、自分が望んで、
ちゃんとガイが望んでくれて
ぎゅって抱き着くと
ものすごく胸が熱くなった。

嬉しい!って胸の奥が言ってるみたい。

僕が大きな背中に手をまわして、
ぎゅう、ってすると、
いつもな背中に添えてくれてるだけの
大きな手が、僕を安心させる手が
僕を引き寄せるようにして
抱きしめられる。

ガイのにおいがして、
嬉しくて、ドキドキして、
それから……なんだか恥ずかしくなった。

僕が嫉妬してたって、
ガイに恋してるんだってことを
思い出したからだ。

違う、なんて言えない。
だって僕がガイが大好きだったし、
この気持ちは、兄への好きとは
違うって思ったから。

ずっと一緒にいたいって、
ガイに連れて帰ってほしいって
そう思う気持ち。

僕、ガイに恋してるんだ。

なんだか顔が熱くなってくる。

ガイの顔が見たいのに、
顔を上げることができない。

ティーナの言ってたことは本当だった。

「エレ、顔を見せてくれ」

僕が無理って思ってたのに、
優しく髪を撫でられた。

頑張って、頑張って顔を上げたら、
ガイの優しい顔が僕を見つめている。

アイシテルって、ガイの唇が動いた。

僕は、うん、って言った。

僕も、って言った方が良かったかな。

そう思ったけれど。
それは言葉にはならなかった。

だってそっと。
ガイの唇が重なったから。

しびれるようなぬくもりと、
そっと離れたときの
ガイの顔を赤くした顔に僕は。

何を言っていいかわからずに
ぎゅう、とガイにしがみついた。


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