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36:両家顔合わせ
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僕は朝からドキドキだった。
今日は学院が休みの日で、
兄もガイも休みの日。
とうとう、兄と一緒に
ガイの家に婚約の挨拶をしにいくんだ。
セバスチャンは、もう婚約の書類は
整っているし、ガイの両親に
顔を見せるだけだから
心配はない、って言ってくれている。
本当は両家の顔合わせって、
僕の父と母が領地から出てきて
ガイの家族みんなと挨拶をする
必要があるみたいなけど。
僕とガイの婚約式は、
僕が社交界にデビューしてからだし、
互いの両親もすでに仲良しだから
今回は、僕と兄と、それから
ガイとガイの両親だけの
顔合わせになったんだ。
ガイのお兄さんも、
今日はお仕事だからいないんだって。
簡単な食事会だから
気楽にすればいい、って
ガイも言ってくれている。
でも、ドキドキだよね?
緊張はするよね?
今日の僕のシャツは白だけど、
ガイの色と同じ金色の糸で
胸元と袖口に刺しゅうが入っている。
いつもよりも大きなフリルが
沢山ついているシャツで、
ボタンの糸も金色だ。
髪を結んだリボンは、
僕の瞳の色の緑に、
やっぱり金色で縁取りを
しているものなので、
僕は今日、たくさんガイと
同じ色を見に纏ってることになる。
ちょっと恥ずかしいけど、
婚約者だもん、いいよね。
「ぼっちゃま、
とてもご立派になられて」
と涙ぐむ仕草をするセバスチャンに
見送ってもらって、
僕は兄と一緒に馬車に乗り込んだ。
今日はお膝に乗らずに
頑張って一人で座る。
馬車は揺れるから、
本当は膝に乗せて貰った方が
僕は楽だけど。
でも今日はしない、って
心に決めてきた。
だって僕はもう子どもじゃない。
いつまでも兄に甘えるだけの
僕じゃダメだって思うから。
兄に僕だってひとりで
馬車に乗れるってことを
今日は証明するんだ。
社交界のデビューだって
もうすぐだし、
僕は一人でなんだって
できるんだから。
と、馬車を下りるまでは
そう思っていた。
でも、馬車がブレイトン公爵家の
タウンハウスについて、
兄の手を借りて馬車を降りた時。
僕は、つよつよ無敵だった気持ちが
一気に下がった。
だって、物凄く沢山の
使用人の人たちを引き連れて
ガイと、ガイの両親らしき人たちが
並んで僕を迎えてくれたのだ。
こんなに多くの見知らぬ人に
一斉に見つめられるのは初めてだし、
急に怖くなる。
きゅって兄の手を握ったら
兄は優しく頭を撫でてくれたけど。
兄が先に挨拶をして、
僕の背に手を回す。
僕は緊張してしまって
上手く声が出ない。
どうしよう、って。
ガイの両親の前なのに、
怖くなって、涙が出そう。
「エレ」
そんな僕の前に、
ガイが手を差し出してくれた。
「大丈夫だ、俺の両親だよ」
と言い、ガイは僕の手を取ると、
そっと手を引いた。
「父上、母上、
バーンズ侯爵家のエレミアス殿です」
「は、初めまして。
エレミアス・バーンズです」
ガイが僕を紹介してくれた。
今なら名前を言えるって思って、
僕は勇気を出して声を出す。
ちょっと震えてたけど、
ガイが手を握ってくれたから
ものすごく頑張った。
「あらあら、可愛らしいこと」
と言ったのは、ガイのお母さんだと思う。
すぐ隣にいた少し暗い金色の髪と、
金色の目をした男性が笑顔で
僕を見てくれる。
「ジャスティス・ブレイトンだ。
隣にいるのが妻のロザンヌ。
よろしく頼むよ。
それにしても、バーンズ侯爵家の秘宝が
天使のようだというのは
本当だったのだな」
少しふくよかな体を揺らして
ガイのお父さんである
ジャスティスさんは笑う。
ガイのお母さん、ロザンヌさんは、
ガイと同じアッシュグレイの長い髪を
一つにまとめて、明るい茶色の瞳を細めた。
金色は王家の血を引く証拠だって
聞いたことがあるから、
きっとガイのお父さんが
王家の血筋なんだな、って僕は思う。
「さぁ、中に入ってくれ」
という言葉に促され、
僕たちが1歩、足を踏み出した時、
門の方から大きな声が聞こえてくる。
ジャスティスさんが視線だけで
側にいた執事らしき人を見ると
その人は一礼してどこかに
消えてしまった。
僕たちは玄関に入り、
そのまま応接室に案内されたんだけど、
ソファーに座る前に、
大きなノックの音で動きを止めた。
「失礼致します」
さっきの執事らしき人は入って来た。
「何事だ?」
ジャスティスさんに、すっと
手紙が渡される。
「王家より早馬でございます」
「「早馬?」」
ガイと兄の声が重なった。
ジャスティスさんは手紙を開けて
さっと目を走らせると、
兄とガイにも手紙を見せた。
「私は今すぐ王宮へ向かう」
「ではご一緒させていただこう」
ジャスティスさんの言葉に
兄もすぐに返事をする。
「ガイディス、お前は……」
ジャスティスさんはガイを見て、
それから僕を見た。
なんか、事件が起こったのかな。
ガイも兄と一緒に王宮に
向かった方が良いのかもしれない。
「ガイ、僕は大丈夫だよ」
全然大丈夫じゃないけれど。
でも僕はそう言った。
「一人で屋敷に帰ることもできるよ」
そう、僕はもう大人なのだ。
「エレ、すまない」
ガイはそう言うと
「俺も行きます」と返事をする。
それから慌ただしく兄は
僕の頭を撫でて、
「ロザンヌ夫人、迎えの馬車は
手配しますので、この子のことを
しばしの間、よろしくお願いします」
「ええ、もちろんですわ。
馬車も大丈夫ですわよ。
我がブレイトン公爵家が責任を持って
送り届けて差し上げますわ」
「感謝いたします」
兄は頭を下げ、
「いい子にしてなさい」と
僕に言い、部屋を出ていく。
ガイも僕の頭を撫で、
「落ち着いたら会いに行く」
と言って、あっという間に部屋を出て行った。
ジャスティスさんはすでにいない。
いったい何があったのだろう。
しん、と部屋が静かになり、
僕は不安になってくる。
「さぁ、では始めましょうか」
そんな不安が充満した静かな部屋に、
明るい声が響いた。
「は、始める?」
何を?
と僕はロザンヌ夫人を見た。
「男たちは王家の事情で
忙しいのでしょう?
そんな時はね、
楽しいことをして
待っているのが一番なのよ」
ね?
と笑顔で言われ、
僕は、それもそうかと頷く。
だって僕には何もできないし、
不安で過ごすよりも、
気がまぎれた方が良い気がする。
「さぁ、エレミアスちゃん」
……エレミアスちゃん?
「私と一緒に遊びましょうね」
にこやかなのに、笑顔なのに。
拒否できない圧を感じて
僕はただただ首を縦に動かした。
今日は学院が休みの日で、
兄もガイも休みの日。
とうとう、兄と一緒に
ガイの家に婚約の挨拶をしにいくんだ。
セバスチャンは、もう婚約の書類は
整っているし、ガイの両親に
顔を見せるだけだから
心配はない、って言ってくれている。
本当は両家の顔合わせって、
僕の父と母が領地から出てきて
ガイの家族みんなと挨拶をする
必要があるみたいなけど。
僕とガイの婚約式は、
僕が社交界にデビューしてからだし、
互いの両親もすでに仲良しだから
今回は、僕と兄と、それから
ガイとガイの両親だけの
顔合わせになったんだ。
ガイのお兄さんも、
今日はお仕事だからいないんだって。
簡単な食事会だから
気楽にすればいい、って
ガイも言ってくれている。
でも、ドキドキだよね?
緊張はするよね?
今日の僕のシャツは白だけど、
ガイの色と同じ金色の糸で
胸元と袖口に刺しゅうが入っている。
いつもよりも大きなフリルが
沢山ついているシャツで、
ボタンの糸も金色だ。
髪を結んだリボンは、
僕の瞳の色の緑に、
やっぱり金色で縁取りを
しているものなので、
僕は今日、たくさんガイと
同じ色を見に纏ってることになる。
ちょっと恥ずかしいけど、
婚約者だもん、いいよね。
「ぼっちゃま、
とてもご立派になられて」
と涙ぐむ仕草をするセバスチャンに
見送ってもらって、
僕は兄と一緒に馬車に乗り込んだ。
今日はお膝に乗らずに
頑張って一人で座る。
馬車は揺れるから、
本当は膝に乗せて貰った方が
僕は楽だけど。
でも今日はしない、って
心に決めてきた。
だって僕はもう子どもじゃない。
いつまでも兄に甘えるだけの
僕じゃダメだって思うから。
兄に僕だってひとりで
馬車に乗れるってことを
今日は証明するんだ。
社交界のデビューだって
もうすぐだし、
僕は一人でなんだって
できるんだから。
と、馬車を下りるまでは
そう思っていた。
でも、馬車がブレイトン公爵家の
タウンハウスについて、
兄の手を借りて馬車を降りた時。
僕は、つよつよ無敵だった気持ちが
一気に下がった。
だって、物凄く沢山の
使用人の人たちを引き連れて
ガイと、ガイの両親らしき人たちが
並んで僕を迎えてくれたのだ。
こんなに多くの見知らぬ人に
一斉に見つめられるのは初めてだし、
急に怖くなる。
きゅって兄の手を握ったら
兄は優しく頭を撫でてくれたけど。
兄が先に挨拶をして、
僕の背に手を回す。
僕は緊張してしまって
上手く声が出ない。
どうしよう、って。
ガイの両親の前なのに、
怖くなって、涙が出そう。
「エレ」
そんな僕の前に、
ガイが手を差し出してくれた。
「大丈夫だ、俺の両親だよ」
と言い、ガイは僕の手を取ると、
そっと手を引いた。
「父上、母上、
バーンズ侯爵家のエレミアス殿です」
「は、初めまして。
エレミアス・バーンズです」
ガイが僕を紹介してくれた。
今なら名前を言えるって思って、
僕は勇気を出して声を出す。
ちょっと震えてたけど、
ガイが手を握ってくれたから
ものすごく頑張った。
「あらあら、可愛らしいこと」
と言ったのは、ガイのお母さんだと思う。
すぐ隣にいた少し暗い金色の髪と、
金色の目をした男性が笑顔で
僕を見てくれる。
「ジャスティス・ブレイトンだ。
隣にいるのが妻のロザンヌ。
よろしく頼むよ。
それにしても、バーンズ侯爵家の秘宝が
天使のようだというのは
本当だったのだな」
少しふくよかな体を揺らして
ガイのお父さんである
ジャスティスさんは笑う。
ガイのお母さん、ロザンヌさんは、
ガイと同じアッシュグレイの長い髪を
一つにまとめて、明るい茶色の瞳を細めた。
金色は王家の血を引く証拠だって
聞いたことがあるから、
きっとガイのお父さんが
王家の血筋なんだな、って僕は思う。
「さぁ、中に入ってくれ」
という言葉に促され、
僕たちが1歩、足を踏み出した時、
門の方から大きな声が聞こえてくる。
ジャスティスさんが視線だけで
側にいた執事らしき人を見ると
その人は一礼してどこかに
消えてしまった。
僕たちは玄関に入り、
そのまま応接室に案内されたんだけど、
ソファーに座る前に、
大きなノックの音で動きを止めた。
「失礼致します」
さっきの執事らしき人は入って来た。
「何事だ?」
ジャスティスさんに、すっと
手紙が渡される。
「王家より早馬でございます」
「「早馬?」」
ガイと兄の声が重なった。
ジャスティスさんは手紙を開けて
さっと目を走らせると、
兄とガイにも手紙を見せた。
「私は今すぐ王宮へ向かう」
「ではご一緒させていただこう」
ジャスティスさんの言葉に
兄もすぐに返事をする。
「ガイディス、お前は……」
ジャスティスさんはガイを見て、
それから僕を見た。
なんか、事件が起こったのかな。
ガイも兄と一緒に王宮に
向かった方が良いのかもしれない。
「ガイ、僕は大丈夫だよ」
全然大丈夫じゃないけれど。
でも僕はそう言った。
「一人で屋敷に帰ることもできるよ」
そう、僕はもう大人なのだ。
「エレ、すまない」
ガイはそう言うと
「俺も行きます」と返事をする。
それから慌ただしく兄は
僕の頭を撫でて、
「ロザンヌ夫人、迎えの馬車は
手配しますので、この子のことを
しばしの間、よろしくお願いします」
「ええ、もちろんですわ。
馬車も大丈夫ですわよ。
我がブレイトン公爵家が責任を持って
送り届けて差し上げますわ」
「感謝いたします」
兄は頭を下げ、
「いい子にしてなさい」と
僕に言い、部屋を出ていく。
ガイも僕の頭を撫で、
「落ち着いたら会いに行く」
と言って、あっという間に部屋を出て行った。
ジャスティスさんはすでにいない。
いったい何があったのだろう。
しん、と部屋が静かになり、
僕は不安になってくる。
「さぁ、では始めましょうか」
そんな不安が充満した静かな部屋に、
明るい声が響いた。
「は、始める?」
何を?
と僕はロザンヌ夫人を見た。
「男たちは王家の事情で
忙しいのでしょう?
そんな時はね、
楽しいことをして
待っているのが一番なのよ」
ね?
と笑顔で言われ、
僕は、それもそうかと頷く。
だって僕には何もできないし、
不安で過ごすよりも、
気がまぎれた方が良い気がする。
「さぁ、エレミアスちゃん」
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「私と一緒に遊びましょうね」
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