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90:ちょっぴり誤解
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僕は夕方まで眠ってしまっていて、
アンナに起こされた。
起きたときガイは
そばにいなかったけれど、
アンナに聞くと、
近くの森に狩り出たという。
夕食はガイが仕留めた野鳥を
使った料理が出るらしい。
狩りだって。
もちろん僕はしたことがないし、
たぶん、兄も父もしないと思う。
いや、領地ではしてるのかな?
狩りって貴族のたしなみって
言われているみたいだけれど、
僕は狩りをする人を初めて見た。
それがガイだなんて。
「きっと自分が仕留めた
獲物をぼっちゃまに
献上することで、
自分の良さをアピールしたいのでしょう」
アンナの口調はどこか
トゲを感じたけれど、
そんなわけないよね?
「じゃあ、僕、
ガイが戻ってくるの、
玄関で待ってる」
と言ってみたけれど、
すでにガイは別荘に
戻ってきていて、今は
料理を手伝っているらしい。
ガイって料理もできるんだ。
びっくりしたけれど、
アンナは「騎士ですので当然でしょう」と
軽い口調で言う。
なんでも騎士は、
場合によっては野営もするし、
料理や洗濯なども
一人でできるように
訓練生の時から鍛えられるらしい。
僕はアンナの手を借りて
髪を整えた。
それから着替えをして
食堂に向かう。
アンナがすでに
夕食の支度は終わっていると
言ったからだ。
食堂にはガイがすでにいて、
僕の姿を見ると
すぐにそばにきてくれた。
「ゆっくり休めたか?」
「うん。ありがとう」
ガイは僕をエスコートして
食堂の椅子に座らせてくれた。
ガイはすぐ隣に座る。
僕たちが座ると
すぐに食事が運ばれてきた。
「わぁ!」
驚いたのは、
メインのお肉が
鳥の丸焼きだった。
ガイが仕留めたという鳥は
シェフが目の前で
切り分けてくれた。
大きなナイフで
鳥のお腹を切ると、
中から野菜や短いパスタが出てきた。
「すごい、すごい」
こんな料理、初めて見た。
「ここでは客を
歓迎するときに
作る料理なんだ」
ガイが僕を見て笑う。
「僕のために
獲ってきてくれたの?」
「こんな豪快な料理は
見たことがないと思ってな。
珍しいだろ?」
「うん、すごい!
ありがとう、ガイ」
僕がすごい、すごいと
はしゃぐとガイは嬉しそうな顔になる。
シェフが鳥肉と野菜を
お皿に取り分けてくれる。
それ以外にもサラダにパン、
スープもあって、
僕は見ただけでお腹が
いっぱいになりそうだ。
でもガイのお皿には
僕の倍以上の量の料理が乗っている。
僕も頑張って食べなくっちゃ。
僕はさっそくフォークで
鶏肉を食べてみた。
「おいしい」
パリパリの皮はもちろん、
身はしっとりしていて、
一緒に焼いた野菜やパスタは
鳥の味が滲みている。
塩加減もものすごくいい。
僕は今までにないぐらい
沢山食べてしまった。
そんな僕を見たガイが
「また明日も獲ってくるか」
なんていうから、
僕は慌てて止める。
ガイにわざわざ
狩りに行ってもらうのは
申し訳なかったし、
何より、ガイが狩りに
出てしまうと
僕はお留守番をすることになってしまう。
「僕はガイと美味しいものを
食べるのも好きだけど、
ガイと一緒にいる方が好き。
だから、狩りより、
一緒にお散歩しよう」
僕が言うと、
ガイは顔を赤くした。
「か、かわ、かわい」
「ガイ?」
「い、いや、そうだな。
一緒に森を散歩しよう。
そうだ。
馬車で少し行けば
町もある。
治安も良いし、
町を歩いてみるのもいいな」
「町?
行きたい、僕、見てみたい」
「よし。
じゃあ、明日は森にするか。
その次は町だな。
のんびり過ごす時間はある。
エレのやりたいことを
全部やっていこう」
僕はその言葉に大はしゃぎだ。
たくさん食べて、
僕はおなかいっぱい、と
カトラリーを置いた。
「ぼっちゃま、
お茶のおかわりはいかがでしょうか」
アンナが僕のそばに来た。
「うん。お願い」
アンナは僕の言葉に頭を下げ、
カップにお茶を淹れる。
「そうだ。アンナ。
今日は一緒にお風呂に入る?」
僕の言葉に、
お茶を淹れていたアンナの
手が一瞬、ゆらぐ。
いつもは乱れることがない
アンナがお茶を少し
ソーサーにこぼしていた。
「アンナ?
大丈夫?
調子悪い?」
たくさん馬車に乗ったから
きっと疲れてるんだ。
僕は昼寝をしたから元気だけど。
早く休んで、って僕が言うと
アンナは「申し訳ございません」
って新しいお茶を淹れる。
「エレ?
どういう意味だ?」
ガイが低い声を出す。
「なにが?」
「アンナと風呂?」
「うん、いつも一緒に入ってるんだ」
ガイの目が見開かれ、
壁に控えていた使用人たちの
空気が、一瞬、止まる。
あれ?
僕、変なことを言った?
「ぼっちゃま。
少しお言葉が足りないかと」
アンナが小さな声で助言をする。
「足りない?
何が?」
「私がぼっちゃまと
湯を共にするのは、
私がぼっちゃまのお髪を
洗うためでございます。
衣服も着ておりますし、
なんら問題はないかと存じますが。
先ほどの言いようですと、
何も知らない者が聞けば、
私とぼっちゃまが
同じバスタブで湯に
浸かっていると思われますでしょう」
「ええ?僕の
部屋のバスタブは
小さいから、
アンナと一緒には無理だよ」
僕の大きさにぴったりだもん。
って僕が笑ったら、
止まっていた時間が
急に動いたかのように
空気がゆるんだ。
「エレはアンナに
洗髪を手伝ってもらってるのか?」
「うん。
僕、自分で洗ったことがないんだ。
あ、そうだ。
今日はガイと一緒に入るから、
ガイに洗い方を
教えてもらおうと思ってたんだ」
そうだ、思い出した。
僕が、お願い、って
ガイを見る。
するとガイは目を見開き、
「そう、だな。
俺が一緒に……一緒に?
一緒に入る?
そうか、一緒に入るのか。
いや、別にやましくはないぞ」
とブツブツ何かを言い出す。
「ガイ?」
「ぼっちゃま。
どうぞ、くれぐれもお気をつけて。
何かあれば、
このアンナをお呼びください」
お風呂だよ?
何があるというの?
真剣なアンナの忠告に
僕は首をかしげるしかない。
「大丈夫だ、エレ。
俺が付いてるからな」
アンナの言葉に
戸惑う僕にガイの
頼もしい声がかけられる。
「うん。ありがとう」
お風呂、楽しみだ。
僕はニコニコ笑顔になった。
でも、楽しみすぎたからだと思う。
僕は目の前で
ガイとアンナが険しい顔で
視線を合わせていたことに
最後まで気が付かなかった。
アンナに起こされた。
起きたときガイは
そばにいなかったけれど、
アンナに聞くと、
近くの森に狩り出たという。
夕食はガイが仕留めた野鳥を
使った料理が出るらしい。
狩りだって。
もちろん僕はしたことがないし、
たぶん、兄も父もしないと思う。
いや、領地ではしてるのかな?
狩りって貴族のたしなみって
言われているみたいだけれど、
僕は狩りをする人を初めて見た。
それがガイだなんて。
「きっと自分が仕留めた
獲物をぼっちゃまに
献上することで、
自分の良さをアピールしたいのでしょう」
アンナの口調はどこか
トゲを感じたけれど、
そんなわけないよね?
「じゃあ、僕、
ガイが戻ってくるの、
玄関で待ってる」
と言ってみたけれど、
すでにガイは別荘に
戻ってきていて、今は
料理を手伝っているらしい。
ガイって料理もできるんだ。
びっくりしたけれど、
アンナは「騎士ですので当然でしょう」と
軽い口調で言う。
なんでも騎士は、
場合によっては野営もするし、
料理や洗濯なども
一人でできるように
訓練生の時から鍛えられるらしい。
僕はアンナの手を借りて
髪を整えた。
それから着替えをして
食堂に向かう。
アンナがすでに
夕食の支度は終わっていると
言ったからだ。
食堂にはガイがすでにいて、
僕の姿を見ると
すぐにそばにきてくれた。
「ゆっくり休めたか?」
「うん。ありがとう」
ガイは僕をエスコートして
食堂の椅子に座らせてくれた。
ガイはすぐ隣に座る。
僕たちが座ると
すぐに食事が運ばれてきた。
「わぁ!」
驚いたのは、
メインのお肉が
鳥の丸焼きだった。
ガイが仕留めたという鳥は
シェフが目の前で
切り分けてくれた。
大きなナイフで
鳥のお腹を切ると、
中から野菜や短いパスタが出てきた。
「すごい、すごい」
こんな料理、初めて見た。
「ここでは客を
歓迎するときに
作る料理なんだ」
ガイが僕を見て笑う。
「僕のために
獲ってきてくれたの?」
「こんな豪快な料理は
見たことがないと思ってな。
珍しいだろ?」
「うん、すごい!
ありがとう、ガイ」
僕がすごい、すごいと
はしゃぐとガイは嬉しそうな顔になる。
シェフが鳥肉と野菜を
お皿に取り分けてくれる。
それ以外にもサラダにパン、
スープもあって、
僕は見ただけでお腹が
いっぱいになりそうだ。
でもガイのお皿には
僕の倍以上の量の料理が乗っている。
僕も頑張って食べなくっちゃ。
僕はさっそくフォークで
鶏肉を食べてみた。
「おいしい」
パリパリの皮はもちろん、
身はしっとりしていて、
一緒に焼いた野菜やパスタは
鳥の味が滲みている。
塩加減もものすごくいい。
僕は今までにないぐらい
沢山食べてしまった。
そんな僕を見たガイが
「また明日も獲ってくるか」
なんていうから、
僕は慌てて止める。
ガイにわざわざ
狩りに行ってもらうのは
申し訳なかったし、
何より、ガイが狩りに
出てしまうと
僕はお留守番をすることになってしまう。
「僕はガイと美味しいものを
食べるのも好きだけど、
ガイと一緒にいる方が好き。
だから、狩りより、
一緒にお散歩しよう」
僕が言うと、
ガイは顔を赤くした。
「か、かわ、かわい」
「ガイ?」
「い、いや、そうだな。
一緒に森を散歩しよう。
そうだ。
馬車で少し行けば
町もある。
治安も良いし、
町を歩いてみるのもいいな」
「町?
行きたい、僕、見てみたい」
「よし。
じゃあ、明日は森にするか。
その次は町だな。
のんびり過ごす時間はある。
エレのやりたいことを
全部やっていこう」
僕はその言葉に大はしゃぎだ。
たくさん食べて、
僕はおなかいっぱい、と
カトラリーを置いた。
「ぼっちゃま、
お茶のおかわりはいかがでしょうか」
アンナが僕のそばに来た。
「うん。お願い」
アンナは僕の言葉に頭を下げ、
カップにお茶を淹れる。
「そうだ。アンナ。
今日は一緒にお風呂に入る?」
僕の言葉に、
お茶を淹れていたアンナの
手が一瞬、ゆらぐ。
いつもは乱れることがない
アンナがお茶を少し
ソーサーにこぼしていた。
「アンナ?
大丈夫?
調子悪い?」
たくさん馬車に乗ったから
きっと疲れてるんだ。
僕は昼寝をしたから元気だけど。
早く休んで、って僕が言うと
アンナは「申し訳ございません」
って新しいお茶を淹れる。
「エレ?
どういう意味だ?」
ガイが低い声を出す。
「なにが?」
「アンナと風呂?」
「うん、いつも一緒に入ってるんだ」
ガイの目が見開かれ、
壁に控えていた使用人たちの
空気が、一瞬、止まる。
あれ?
僕、変なことを言った?
「ぼっちゃま。
少しお言葉が足りないかと」
アンナが小さな声で助言をする。
「足りない?
何が?」
「私がぼっちゃまと
湯を共にするのは、
私がぼっちゃまのお髪を
洗うためでございます。
衣服も着ておりますし、
なんら問題はないかと存じますが。
先ほどの言いようですと、
何も知らない者が聞けば、
私とぼっちゃまが
同じバスタブで湯に
浸かっていると思われますでしょう」
「ええ?僕の
部屋のバスタブは
小さいから、
アンナと一緒には無理だよ」
僕の大きさにぴったりだもん。
って僕が笑ったら、
止まっていた時間が
急に動いたかのように
空気がゆるんだ。
「エレはアンナに
洗髪を手伝ってもらってるのか?」
「うん。
僕、自分で洗ったことがないんだ。
あ、そうだ。
今日はガイと一緒に入るから、
ガイに洗い方を
教えてもらおうと思ってたんだ」
そうだ、思い出した。
僕が、お願い、って
ガイを見る。
するとガイは目を見開き、
「そう、だな。
俺が一緒に……一緒に?
一緒に入る?
そうか、一緒に入るのか。
いや、別にやましくはないぞ」
とブツブツ何かを言い出す。
「ガイ?」
「ぼっちゃま。
どうぞ、くれぐれもお気をつけて。
何かあれば、
このアンナをお呼びください」
お風呂だよ?
何があるというの?
真剣なアンナの忠告に
僕は首をかしげるしかない。
「大丈夫だ、エレ。
俺が付いてるからな」
アンナの言葉に
戸惑う僕にガイの
頼もしい声がかけられる。
「うん。ありがとう」
お風呂、楽しみだ。
僕はニコニコ笑顔になった。
でも、楽しみすぎたからだと思う。
僕は目の前で
ガイとアンナが険しい顔で
視線を合わせていたことに
最後まで気が付かなかった。
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