長編版・不能の公爵令息は婚約者を愛でたい(が難しい)

たたら

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116:神様の街

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 僕は賊の襲来に驚いたものの、
それ以降は問題なく
旅をすることができた。

目的の街に着くまでに
2つの町に少しだけ立ち寄って、
早めの昼ご飯と
夕ご飯を食べた。

最初に立ち寄った町には
ガイの友達が経営している
宿屋があって、
そこでご飯を食べさせてもらった。

長いパスタに野菜が沢山入っていて、
上にチーズが乗っている。

それをまたオーブンで
焼いたという料理は、
チーズが溶けていて、
カリカリでものすごくおいしかった。

僕はお願いして、
料理の作り方を教えてもらった。

それをメモしたのはアンナだったけど、
僕は屋敷に戻ったら
同じものを作ってもらうつもりだ。

次の町は騎士の町だった。

大きな騎士団が
町の中心にあって、
そこは王都の騎士団に
入るための訓練所も
兼ねているらしい。

ここで訓練をして
合格したら王の騎士に
なる資格を得られるんだとか。

兄も、ガイも、ケインも
ここで訓練したというから
驚きだ。

僕はもっと見たかったけど、
ガイもケインも
長居はしたくないみたいで
夕食を食べたら
早々に出発した。

時折、ガイやケインに
話しかけたそうに
している人も見かけたけど、
二人はすべて無視して
僕を馬車に乗せた。

「あと少しだから
先に進もう」

ってガイは言ったけど、
あの人たちは大丈夫だったのかな?

もともとはこの町には
立ち寄るつもりはなくて、
別の町で一泊してもいいって
話だったけど。

あの盗賊たちのことも
あったから、
念のため報告を
しておこうということに
なったみたい。

「すまない。
向こうの街に
着くのは夜になる」

「それはいいけど、
あの町は好きじゃないの?」

「いや、好きとか嫌いとか
そういう話ではなくてな」

馬車の中でガイが嫌そうな顔をした。

「若いころに、
あの場所でかなり上官に
しぼられたからな。

まぁ、俺も若かったし、
そんなもんかもしれないが」

そう言ってガイは苦笑する。

「訓練が辛い、って
思い出ばかりがあってな。
ケインもそうだろう」

ガイやケインがそんなに
嫌がるなんて、
どんな訓練をしたのか
知りたいような、
知りたくないような。

「まぁ、騎士は体力仕事だ。
多少のことで倒れたり
しないように、
多少の無茶をしても
潰れない程度には
鍛えてもらった」

ガイはそう言って、
僕の髪を撫でる。

これ以上は話したくないかも、
と思って僕は口を閉ざした。

その代わり、
目的地の街の話を聞く。

大神官様がいるだけあって
次の街は大きな神殿が
ある街らしい。

その神殿を囲むように
信者たちが集まり
街になったので、
信仰心が強い住人が
住んでいるのだという。

ただしそういった人たちは
神殿の周囲に住んでいて、

その外側には、
商売をするために
集まった人たちが住んでいるから
宿屋は神殿から少し
離れた場所にあるという。

神聖教会や神聖神殿は
王宮にあるのが一番偉い。

でも今から行く街の
神殿はその王宮の
神聖神殿から高齢のために
退いた神官たちが
たくさんいる場所らしい。

そもそも、王宮の
神聖神殿や教会に
入ることができる人間は
限られている。

だからこそ、
平民でも祈る場所が
必要だから街に
たくさんの教会ができた。

勢力図的に言えば、
その町の小さな教会を
束ねているのが
いまからいく街の神殿で、

その上に、
王宮の神聖教会、
さらに神聖神殿になる。

教会も貴族社会と同じで
明確な上下関係があるみたいだ。

ガイが言うには、
組織には一定の権力が
存在していて、
それは必要なことだという。

みんな平等を説いている
教会でも、それは例外ではないらしい。

僕の屋敷の図書館には
神様の本もなかったから、
ガイの話は面白かった。

誰もが知っている
知識だったのかもしれないけれど。

目的地の街に着いたのは
日が沈んでからだった。

先に護衛たちが街に入り、
僕たちを宿に案内してくれる。

街は夜だったのに、
あちこちに明かりが灯り
昼間のように明るかった。

ガイの話では、
夜でも巡礼している者が
街に入ってくることが
あるから、この街は
一日中こうして旅人を
出迎える準備ができているらしい。

真夜中だって
街の明かりは消えないし、
飲食店も宿屋も、
ずっと営業中だって聞いて、
僕は驚くしかない。

ただ、店によっては
休憩時間を長く取ったり、
もちろん、夜中は休む
店もあるので、
全部が営業中ではないらしいけど。

僕たちは宿に入った。

いきなり来たので、
部屋はあまり空いてなかったらしく、
僕はガイと一緒の部屋になる。

いつもとは違って、
少し狭い部屋だったので、
部屋を準備した護衛が
申し訳なさそうに言うので、
僕は大丈夫だよ、って言った。

ついでに不満そうな
アンナにも手を握って
大丈夫だよ、って
何回も伝えた。

一緒に来た皆も
ひとつの宿に集まることが
できなかったので、
分かれて泊まるという。

「じゃあ、また明日ね」

着いた時間は遅かったし、
夕食も食べ終わっている。

後は寝るだけだ。

僕は最後にアンナと
ケインに挨拶をして
ガイと部屋に入る。

部屋は狭かったけれど、
ベッドも小さかった。

「ガイ、ひっつかないと
一緒に寝られないよ」

僕が言うと、
ガイもベッドに目を向けた。

「そう、だな。
俺はソファで寝るから
エレはベッドで寝ればいい」

「ソファ?
なんで?
僕、寝相は良いほうだよ」

「それはそうだが……
いや、だが。
一緒に寝るとなると」

ガイが小さく言い、首を振る。

「エレ」

「なに?」

「一緒に寝るのなら、
俺はエレを抱きしめて寝る。
それでもいいか?」

物凄くまじめな顔でガイは言う。

僕は全然かまわないし、
一緒に寝るのは嬉しい。

だって馬車の中で
次に街に泊まるときは
ガイと一緒に寝たいな、って
思ってたもん。

だから不思議に
思ったんだけど。

僕と一緒に寝るだけで、
そんなにまじめに、
宣言するように
言う必要があるんだろうか。

僕が「いいよ」って
だっこして、のポーズで
両手を広げたら、
ガイは目を見開いた

「い、いや、まだダメだ。
まずは寝間着に着替えよう」

それもそうか。

僕はうなずいて、
ガイが渡してくれた寝間着を受け取った。


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