長編版・不能の公爵令息は婚約者を愛でたい(が難しい)

たたら

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118:ちっちゃい神と信徒

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 結局僕は、あの香のお店で
ブレスレットをもらった話から、
ガイと一緒に露天風呂に
入りたいと思ったこと。

その次は一人で大浴場に
入りたいと思ったけど、
泳いでいたらしんどくなって、
助けて、って思ったら
ガイが来てくれたこと。

それから野盗に襲われたとき
誰も傷つかないで!と
叫んだら、ブレスレットが
反応したことを話した。

最後に、
「それでさっきは、
神様の力って
天変地異とか起こすような
ものかと思ったけど、
僕を一人でお風呂に
入らせてくれるとかって、
嬉しかったけど、
ちょっと、ちっちゃいとか
思ってしまって」

と僕がいうと、
またテーブルの上で
ブレスレットがブルブルと震える。

「でもね、嬉しかったんだよ。
それは本当だから
ありがとう」って
僕がブレスレットに
向かって言うと、
透明な石の花が
うっすらとピンクになった。

「おぉ!」と
大神官様は声を出して
素晴らしい!と立ち上がる。

「これは、天使の加護という
名がついてたんですな?」

「僕にブレスレットを
手渡した女の人は
そう言ってました」

「わかりました。
少し調べてみましょう。
これはお預かりしてもよろしいでしょうか?」

もちろんです、って
僕はうなずく。

なんなら差し上げます、って
僕が言ったら、
ブレスレットは抗議するように
透明な石を真っ赤にして
ブルブル震えた。

大神官様は大喜びで、
ガイはなんだか呆れているみたい。

ただ、大神官様の話では
調べると言っても、
すぐにわかることではないという。

「では、何かわかったら
ブレイトン公爵家へ
連絡を入れていただけますか?」

「わかりました。
では、お預かり致します」

大神官様が言い、
僕たちは立ち上がる。

そのまま部屋を出ても
良かったんだけど、
僕はちょっと心苦しくて
ブレスレットに目を向けた。

「あのね。
僕はね、
君が嫌なんじゃないよ。

たくさん助けてもらったし、
感謝してるんだ。

でもね、
僕は今のままで十分
楽しくて幸せだし、
欲しいものなんてないんだ」

僕が話しかけると、
ブレスレットの石が
僕の髪と同じ水色になる。

「だからね。
君が力を使うなら
僕よりも困っている人に
力を使った方が良いと思うんだ」

ごめんね、って僕は言うと、
ガイが僕の肩を抱き寄せた。

「別にブレスレットを
手放すわけではない。

大神官に預けて
どのようなものかを
調べてもらうだけだ」

「そうだね。
ただ、なんだかね、
ブレスレットが納得
していないように感じたから」

僕は笑ってごまかした。

ブレスレットに真剣に
話しかけるなんておかしいよね。

「では、我々はこれで」

ガイが大神官様に よろしくお願いします、と
頭を下げる。

僕もその隣で頭を下げた。

それから二人で部屋を出て、
来た道を戻る。

「ガイは迷子にはならないの?」

「うん?」

「だって出口まで
迷っていないみたいだし」

「まぁ、こういう建物の
造りってのは、
どこも同じようなもんだからな」

つまりガイは
それがわかるぐらい、
いろんな場所に行ったことが
あるってことだ。

やっぱりガイはすごい。

二人で神殿を出ると
ケインたちが待っていてくれた。

「いかがでしたか?」

ケインが聞いてくるので
僕はブレスレットを預けてきたと
ケインに伝える。

「すぐに次の街に行こう」

その後、ガイが言い、
護衛の一人が先に走る。

宿で待っているアンナたちに
連絡をしてくれるらしい。

「ガイ?」

「ここは観光するような
場所ではないからな」

ガイはそれだけ言って、
そのまま僕を馬車に連れていく。

僕は宿には行かず、
そのまま街を出た。

アンナたちの馬車は
すぐに追ってくるから
大丈夫だとガイは言う。

街を出て、
馬車はしばらくの間
猛スピードで走っている。

普段なら休憩しているぐらい
長距離を走ったのに、
馬車は止まらなかった。

「ガイ? どうしたの?」

僕はガイの隣に座り、
袖を引っ張った。

ガイは、困った顔をして、
一応な、と声を出す。

「あそこは信仰が強い街だ。
あのブレスレットはどう見ても
奇妙な力を持っていたし、
それは神力かもしれないと言う。

エレがそんな神力を持つ
ブレスレットに気に入られたと
知られたら、何があるか
わからないだろう?

まぁ、ブレイトン公爵家の
名を名乗ってるから
妙なことは無いと思うが、
難癖をつけてエレを
あの街から出さないとか、

神子として担ぎ上げるとか、
何か画策されても
おかしくはないと思ったんだ」

 僕は驚いた。
言われたらそうかも、って
思ったけど。

僕はそこまで考えられなかった。

「でも大丈夫だ。
俺が守るからな」

って言われて、
僕はガイにしがみつく。

ちょっと怖いと思った。

でももう僕の手には
ブレスレットは無いし、
大丈夫だよね。

「でもやっぱり、
あのブレスレットが
神様の力だったら
おかしいよね」

「うん?」

「だって僕がガイと一緒に
お風呂に入りたいって
願いを叶えてくれるんだよ?
おかしくない?」

「まぁ、確かにな」

僕とガイは顔を見合わせて笑った。

「そんなこと、願わなくても
いつでも俺はエレと
一緒に風呂にぐらい
入ることができるしな」

なんて言われたら、
僕は恥ずかしくて
顔を熱くしちゃうけど。

だって一緒にお風呂に入るって
ことは、あの大人の階段を
また一段、上ることも
あるってことだもの。

でもガイと引っ付くのは好き。

大人の階段はドキドキするし、
初めてのことだから
怖い気もするけれど、
でも嫌じゃないから。

僕が顔を上げたら、
そっと唇が重なった。

「今日も一緒に
風呂に入るか?」

「うん」って僕は頷いたけど。
頬は赤くなっていたと思う。





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