完結・転生したら前世の弟が義兄になり恋愛フラグをバキバキに折っています

たたら

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隣国の王子

95:父、大暴走

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 王宮にたどり着くと、
俺は早足で移動させられる。

が、俺はそんなに早く
歩くことができないので
最終的には義兄に
抱きかかえられるようにして
移動した。

……米俵のように
肩に担がれなくて良かった。

何をそんなに急いでいるのか、
と思ったが、その疑問は
すぐに解消した。

何故なら
「許さん、開戦だ!」
と怒鳴る父の声が聞こえて来たからだ。

何か、物凄く
ややこしいことになってそうだ。

俺は行くのが嫌だなぁ、と
必死で動かしていた足を
止めそうになるが
それに気が付いた義兄が
俺を抱っこした。

引きずられるように
抱きかかえられて
移動していたのに、
今度は抱っこか。

よっぽどの事態なんだな。
俺は逃亡を諦めて遠い目をしてしまう。

「あの暴走を止められるのは
アキルティアしかない。

あの大好き攻撃で
なんとか場を収めてくれ」

義兄の言葉に
俺は何とも言えない気分になる。

その為に俺は
連れて来られたのか。

俺と義兄。
ティスとその後ろから
キールが駆けこんだ部屋は
王の私的な謁見用の部屋だった。

豪華な部屋だ。
大きなソファーとテーブル。
暖炉もあるし、
天井にはシャンデリアがある。

だが、
そんな豪華な部屋には
似つかわしくない
物々しい空気が漂っている。

人払いをされているようで
部屋の中には
衛兵はいなかったが、
中には荒れ狂う父と、陛下と、
宰相であるミューラー侯爵、
そして騎士団長のオルガノ伯爵がいた。

つまり、ティスとルシリアンと
クリムの父親だ。

父は凶暴な目つきで
ひたすら何やら怒鳴っていたし、
陛下はそれを必死で宥めている。

残りの二人は、
さすがに狼狽はしていなかったが
どう収拾して良いのか
わからない様子だった。

俺は義兄の腕から下ろしてもらい、
父を見て言う。

「父様、怖い」

物理的に。
もし前世の会社の上司が
この父だったら
俺は秒で職場を変えていた。

ブラック会社だとか
なんだとか言っていても、
俺はあの仕事に愛着があったし
同僚たちも好きだった。

上司も俺がやることに
ケチも付けずに
やりたいようにさせてくれていた。

会社の勤務時間は
仕事が終わるまでなので
永遠だったし、
タイムカードなんて
入社当初しか見たことがない。

世間的に見れば、
労働環境ははっきり
言って最悪だった。

でも俺はあの会社は
まぁまぁ気に入っていた。

人間関係が良かったからだ。

だから俺は仕事を
続けることができたし、
職場が好きだった、って
胸を張って言える。

だからこそ、
今の父の姿は良くないと思った。

俺は自分なりのやり方で
仕事をさせて貰えたのは
物凄くありがたかった。

でも、上の者が
自分のやりたいように、
やりたいことを
やるのはダメだと思う。

それだはただの独裁者だからだ。

上の立場の者と、
下の者とでは考え方も
やり方も、すべて違う。

それがわかってないと
会社は上手く回らない。

まぁ、それが無理だから
父は国王になるのではなく、
母だけを守る人になったのだろうが。

「アキルティア!」

俺の「怖い」と言う声が
聞こえたのだろう。

父が振り返って俺を見た。

そして俺の前に走ってくる。

そしてめちゃくちゃ
怒っていた顔が、
いきなり笑顔になった。

「どうしたんだい?
父様に会いたくなったのかな」

こわっ。
この変わりように
陛下もさすがに顔を引きつらせている。

「父様に会いに来たけど、
父様、怖いです。
僕、帰ります」

「ま、待ってくれ、アキルティア」

父が俺を咄嗟に抱き上げる。

「だって、父様、
ものすごく怖かった。

……乱暴な父様は、
僕は嫌です」

「乱暴なんかしてないよ?
ほら。
父様はアキルティアの
大好きな優しい父様だよ?」

な?

と、父は陛下たちを振り返る。

誰も頷かないんですけど?

「開戦って聞こえてきました。
僕、暴力も戦争も嫌です」

「もちろんだとも!
誰だ?
そんなことを言ったのは!

大丈夫だ。
誰もそんなことを言わないように
父様がこらしめてあげよう」

はははは。
父よ。
めちゃくちゃ場が凍ってますが?

父って、実力もあるし
権力もあるけど
絶対に国王にしては
イケナイタイプだよな。

自分の大事な人以外は
どうでも良いと思える人だ。

それが悪いとは言わない。

時にそういうタイプの方が
大切な人のために
力を発揮することも
あるだろうし、
それこそ、有事の際は
そう言った人が
英雄になることもあると思う。

だが、今のこの国に限っては
王は父でなくて良かった。

きっとこの騒ぎは
俺とルイのことが
発端だろうしな。

「父様は、僕だけでなく
皆に優しい父様ですか?」

「もちろんだとも!」

大きく頷く父に
俺はいつもの呪文を言う。

「大好きです、
優しい父様」

ほーっと誰かが
長い息を吐いた。

きっと大変だったんだろうな。
あの調子じゃ、
本当にどこかの国に、
というか、ルイの国に
宣戦布告とか
しそうだったし。

この父の暴走は
きっと俺が生まれるまでは
母が止めてたんだろうな。

んで。
俺が生まれて
俺に役目が回って来たと。

別に構わないが
これは一生、父の面倒を
俺がみないとダメになりそうだ。

皆さ、俺を嫁に出す
話ばかりしてるけど、
俺があの家からいなくなったら
ダメなんじゃない?

と思ったけれど、
そんなこと言ったら
義兄と結婚して
一生公爵家から
出れなくなりそうだから
やめておこう。

俺は父に抱っこされたまま
ソファーに座った。

俺は抱っこされるのではなく
ちゃんと立って挨拶を
したかったのだが、
それは陛下の視線で
却下された。

挨拶よりも
この父をソファーに
繋ぎとめる方が大事らしい。

俺が父の膝に上に座り、
陛下も、ミューラー侯爵も
のオルガノ伯爵も座る。

義兄とキールは
俺と父の後ろに立った。

ティスは陛下の隣ではなく
俺の近くに座った。

ここは親子というよりも、
国王と王子という構図らしい。

「もうすぐ、
ブリジット王国の王子も
ここに来るだろう。

話を聞かせてくれるだろうか、
アキルティア」

疲れたような顔をした陛下が
俺を見た。

俺はもちろんです、と頷く。

父がさりげなく
俺を支える手の力を
強くしたが、

俺は気が付かない素振りをして
わざと甘える素振りで
父の腕に抱きついた。

もちろん、父の暴走を
止めるための措置だったが
父は「アキルティアは可愛いなぁ」と
嬉しそうな顔で呟く。

俺は後ろに立つ
義兄と視線を合わせて
そっと苦笑しあった。

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