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隣国の王子
96:嫁には行きません
しおりを挟む俺は父の膝に座ったまま、
陛下たちにルイの話を
しようとしたが、
その前に扉を叩く音がした。
一番ドアのそばにいた
キールが動き、ドアを開けると
ルイが部屋に入ってくる。
ルイは堂々とした様子で
陛下たちに挨拶をする。
陛下は堅苦しいことは
この部屋では無しだと言い、
一つだけ空いていた
一人用のソファーを
ルイに勧めた。
ルイはソファーに座り
すぐに俺を見て
やってんだ?って
顔をした。
だが。
俺がここに
座っていないと
戦争になるんだぞ?
俺の役目は重大なんだ。
俺は声には出さずに
ルイに視線で訴える。
もちろん、そんなの
伝わるわけは無いとは思うが。
陛下はルイに改めて
この場にいるメンバーの
紹介をした。
ルイは俺の父を見て、
なるほど、と言う顔をする。
父の溺愛ぶりは
隣国にも伝わっているの
かもしれない。
「さて。
ルティクラウン殿。
陛下がルイを見る。
「そなたが留学先の学園で
アキルティア・アッシュフォードと
抱き合うところを見たと言う
証言がある。
二人がそれほどに
親密な仲だとは
考えられんのだが。
真偽をお聞かせいただきたい」
厳しい口調だった。
もちろん、この部屋にも
厳しい空気が漂っている。
俺は気軽な気持ちで
親友との再会を喜んだが
そんな軽い気持ちではダメなようだ。
けどさ。
大げさだと思うんだ。
何でこんな国の重鎮たちが
集まって俺の友達関係に
口を出してくるんだ?
俺がルイと仲良くなったって、
それだけの話のハズなのに。
公爵家の子どもが
友達を作っただけで
この国の王が出てくるって
おかしいと思うんだが。
もしかして、
ルイの国との関係は
ルイと友だちになることさえ
国王が気に掛けるほど、
ヤヤコシイことに
なっているのだろうか。
友好関係とは表向きだけで
実は違うとか?
俺は父の膝の上で
様々なケースを考える。
ルイはそんな俺を見ることも無く、
先ほど俺と決めた
幼い頃に出会ったという
設定を陛下に話し始めた。
ルイが魔法で作った
使い魔という話に、
さすがに陛下も、
オルガノ伯爵、ミューラー侯爵、
そして父までもが
顔をこわばらせた。
「その話は事実か?」
陛下は俺を見る。
俺は頷いた。
「僕は学園に入るまで
公爵家の屋敷から出たことは
ありません。
ですので、ピルルは
僕の初めての友達だったのです」
ピルル?
と陛下が言い、
ルイも首を傾げる。
「えっと、小鳥に名前を付けました。
話をする不思議な鳥で、
僕はとても楽しかったのです。
ただ、最初は僕は
普通の小鳥だと思ってました。
ピルルと鳴いてましたし。
でも急に僕と会話ができるようになって。
そこで小鳥が使い魔で、
その先にルイという使い魔を
作った相手がいると知ったのです。
でもお互いに簡単な名前を
名乗っただけでしたし、
僕もこの国の公爵家の者とは
言いませんでした。
ですので、
学園で再会したときは、
まさかルティクラウン殿下が
ルイだとは思いもしませんでした。
おそらく、
ルティクラウン殿下も
僕が幼い頃に話をした
アキだとは気が付かなかったのだと思います」
俺がそう言うと
陛下は、ふむ、と口を閉ざした。
「陛下。
その話が本当であれば、
ルティクラウン殿下は
使い魔を出せるということですな」
オルガノ伯爵が言う。
「出してみましょうか?」
ルイはそう言って
俺たちの前で右手の手のひらを
上に向けた。
その手の平に
銀色の炎みたいなものが浮かぶ。
卵みたいだって俺は思った。
炎がゆらゆらと揺れて、
その揺れた動きが、
卵が少しづつ割れていくように見えたから。
すると、炎がいきなり
ピキって割れたように見えて。
そこから、小鳥が、ピルル、と
鳴いて生まれた。
「ピルル!」
俺が父の膝の上から呼ぶと、
ピルルは俺の頭上を
くるくる回り、
手を伸ばした俺の指先に止まった。
『これが俺の使い魔です。
使い魔が現実的に
姿を保つ時間は
俺が作った時の魔力の
量や強さによって変わります』
ピルルがルイの声で言う。
だが、ルイは口を開いていない。
『これは念話といって、
私が頭の中で話していることを
使い魔に言わせている状態です』
凄い。
さすがの父も驚いて絶句している。
『私は幼い頃、
なかなか自分の魔力を
制御できず、
暴走させることもしばしば
ありました。
小さな体には
魔力量が多すぎたのです。
それを解消するべく
使い魔を生みだすことに
したのですが、
なにぶん、幼い頃に
作った使い魔でしたので
魔力の量も加減など知らず
ありったけの魔力を
注ぎ込みました。
そのせいで、
使い魔は隣国まで飛び、
何日も消えることなく
存在することが
できたのだと思います』
まるで事実のように
ルイは語る。
その堂々とした姿に、
俺まで信じてしまいそうだ。
ルイ、凄いな。
前世では、
顔と口が上手いから
営業成績が良いのだと
同僚からやっかみ半分で
噂もされていたが
その噂はきっと事実だろう。
こんなにさらりと嘘を付くなど、
詐欺師かと思う。
俺にはできない芸当だ。
俺はピルルの頭を
指先で撫でながら
ルイの話を聞く。
「私は成長し、
私の使い魔が出会った者を
ずっと探しておりました。
たった数日間ですが
互いに楽しく話をすることができ
その思い出を私は
大事に過ごしてきたのです。
その者がこの国の者だとは
わかっておりましたし、
無理に留学させていただいたのは
その為でもあります。
そしてその者が
まさかこの国の公爵家の方だとは
思いもよらず……。
学園では再会の嬉しさを
押さえきれず、
無作法な真似をしてしまいました。
そのことに関しては
心より謝罪させていただきます」
ルイが頭を下げる。
俺はあまりにも潔く
謝罪するルイに慌てた。
「陛下、父様。
僕もルイと出会えて
嬉しかったのです。
こんな大事になるとは思わなくて」
俺がそう言うと、
父は座ったまま
俺の身体を抱き上げ、
顔が合わさるように
もう一度膝に座らされる。
「アキルティア、
もしかして、隣国に
嫁に行きたいのか?」
はぁ?
なに言ってんだ、父よ。
こつん、と額が合わさる。
「父を捨てて、
隣国に行くのか?
そんなにあの王子に会えて
嬉しかったのか?」
怖い、怖い。
何真剣に言ってんだ?
俺、まだ13歳だぞ。
しかも嫁になんて行かないし、
相手がルイなんて
笑い話にもならない。
「父様。
なにを言ってるんですか。
僕がお嫁になんて
行くわけないでしょう」
きっぱりと言うと
父は俺から顔を離した。
「本当に?」
「はい、本当に。
だいたい、隣国などに
僕が行ってしまったら、
父様は寂しくて泣いてしまうでしょう?」
「そ、そうとも!
きっと寂しくて泣いてしまうな」
「だから僕は行きません。
父様が大好きですから」
そう言うと、
父は、そうだろう、そうだろう!
と大きな声で笑った。
「アキルティアは
父様が大好きだからな」
その言葉に俺は、
ほっと一息つく。
さて。
これで父は落ち着いただろう。
俺が陛下をちらりと見ると、
陛下は、良くやってくれたと
言わんばかりに、
俺を見て頷いた。
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