#カメラのある生活

みなも

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Second photo 大人への階段

古人の想い

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 夕暮れ時の商店街は、どこか懐かしさを感じる。精肉屋さんで揚げられるコロッケの匂い、八百屋さんで繰り広げる世間話。私の小さな時の記憶には無いけれど不思議と心が落ち着いた。
 アーチをくぐり辺りを見渡そうとすると視界の両端が白くモヤがかかったようになった。視力の低下が著しいのか、メガネを外し目を擦る。注意深く景色を見ようとすればするほど物が認識できなかった。胸ポケットに常備している目薬を差しぱちりと目を開くと視界は元に戻っていた。

 レトロブームというが、昔の人たちはこのブームをどう思うのだろうか。歩きながらぼんやり考えていた。おばあちゃんが一人で切り盛りしていたであろうたばこ屋も古びた電話ボックスも、電柱に貼ってある古ぼけてホコリをかぶったお酒のポスターも、今では現代っ子がこぞって写真を撮り、SNSに投稿する。
 ちょうどお酒のポスターの前で写真を撮っている女子二人を見かけた。お酒を片手に憂い顔を浮かべた和装姿の女性のポスターに似せて、瓶ソーダを片手にポーズをとっていた。
 正直いいか悪いかは置いておいて、全国数多にある商店街がシャッター街として消滅しつつある現在、このような若い子たちの行動は将来ヘの活気をもたらすのでないだろうかと経済学者ぶった中学一年の冬。

 それから、歩くと話を聞いた通り、お店の種類は違えどお守りや魔除け鈴等のグッズを片脇に置いている所が多かった。ふと、足を止めたのは掛川書店と書かれた昔ながらの本屋さん。吸い込まれるように中に入っていくと、本屋の主人は席を外していたようで客は私一人だった。
 並んでいるのは古本ばかりだった。誰かに読み込まれたような古びた小説たちが、次の主人を待ちわびるように何冊も棚に並んでいる。適当に並んでいる本に手をかけると、

「いらっしゃい。」

 しゃがれ声のおじいさんが私に声をかける。咄嗟に出した手を引っ込めて軽く会釈をした。おじいさんはにこやかに「若い子が、珍しいねぇ。」と私をまじまじと見た。

「ここの本は、名だたる文豪が残した傑作から、無名の者が書いた本まで色んな本があるんだよ。」

私は、「無名?」と思わず聞き返してしまった。あわてて弁解をしようとするとおじさんはにこりと笑って、

「うちは、商店街ができた時からあってねぇ、当初の店主はだいぶ物好きで。金にならない無名作家の小説を買い取るって啖呵切って、出版化虚しく散った作家たちが一冊の本を手にここへ売りに来たそうだ。無名作家の駆け込み寺だったんだよ。言い方を変えれば、無名作家の墓場だね。誰にも読まれなかったが、愛を込めた作品たちを供養しにうちに置きに来たんだそうだ。今でも数冊残っていると思うよ。」

 当時の数多の作家さんたちは報われただろうか。多くの手に渡ることはなくても現代に数冊は必ず伝わっている。私はとある一冊の本を手に取った。「朝日」というタイトル。筆者の名前は記されていなかった。中身を少し見て、おじいさんに金額を尋ねる。しかしおじいさんは首を振って「持っていってやんな。」と私に無償で譲ってくれた。

 掛川書店をあとにし、歩を進めると気付けば商店街の終わりにたどり着いていた。ほのかに色づいていた夕焼けの色は深みを増し夜になる準備を始めていた。私は急いで商店街の入り口に戻りアーチの写真を取りに行くのだった__。



 
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