深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

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投資の基本は節約と自己投資だよな

転移

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 俺【大倉潤】は日本に住む40才のおっさんだった。
 俺が布団に入り天井を見つめると空間が開き、頭上から女神さまが姿を現した。
 ホラーである。
 
 ぬん!
「こんばんわ、私は女神」
「……え?」
「私は女神です」
「お化け!?」
「女神!私は女神ファジーです!」

 確かに人間離れしたような美人で、髪は黄金に輝き、神々しい感じもするけど、光ってて幽霊にも見えるわけで。
 あと距離が異様に近い。
 寝ている俺の少し上に浮いているが、女神の吐息を感じる。

 その大きい胸が当たっているのですが?
 人間離れした美貌に吸い込まれそうな感覚を覚える。

「突然ですが私の世界を救ってください」
「あの世ですか?」
「異世界です!異世界転移ですよ!」
「チートスキルを貰えるあれですか」

「……チートスキルの話は置いておいて、お茶でも飲みながらお話をしましょう」
 あれ?お茶を濁された?
 こんなに露骨にお茶を濁されたのは人生初だ。
 女神に不信感を抱いた。

「……」
「……」

「分かりました。話をするだけですよね?」
 と言った瞬間に空間が歪む。
 神殿のような場所の中央にテーブルと椅子があり俺はそこに座っていた。

 対面には女神さまが座りながらほほ笑む。

「剣と魔法の世界【カインドワールド】に英雄として転移し、世界を救って欲しいのです」
「世界を救う?何をすればいいのですか?」

「どんな方法を取ってもかまいません。飢餓を無くすもよし、文明を発展させるもよし、行ってみてこうした方がいいと思ったことをしてください。英雄の役目はどんな方法を使ってでも世界を救う事です。本当にどんなに特殊な事をしても何をやっても構いませんよ」

「魔王は居ますか?」
「居ます。その問題もありますが、飢餓や貧困、魔物の群れの脅威など色々な問題を抱えている世界です」

 俺は普通の人間だ。
 特に得意な事も無い。
 俺じゃない方がいいのでは?
 女神ファジーが俺の顔を見てほほ笑む。

 青く輝く瞳に吸い込まれそうな感覚を覚えた。
 完璧な美人。
 女神だからそんなものなのかもしれない。

「安心してください。元の世界にいるより向こうの世界に行く方があなたは幸せになれますよ。異世界に行けば最初は苦労もありますが、落ち着けば幸せな未来が待っています。……多分」

 最後の【多分】の言葉が妙に引っかかる。
 40年生きてきた俺の経験が!俺の直感がアラームを全力で発している。
 帰ろう。
 元の世界に帰るのだ。

「確認ですが断れば元の世界に戻ることも出来るのですね?」

「……いえ、もうここに来た時点であなたは異世界の人間です。それにあなたの体は18才に若返っています。神様権限であなたが異世界に行くのはもう決定しています」
 女神さまが出した鏡を見ると俺は若返っていた。
 体の調子もいい。

「それではお願いしますね」
「え?ちょっと!いきなりですか?俺、僕は普通の日本人のおっさんですよ。チェンジ、そう、チェンジしましょう」

「大丈夫です。あなたの性格は普通ではありません。英雄です。英雄っぽいです。それにあなたが異世界に行かないと異世界の人が苦しむことになります。異世界に行かないで帰るとか駄目です!神様権限です!もう余裕が無いんです!」

 女神はうるうると目に涙を溜める。
 俺が泣かせたみたいになってるのなんなんだ!?
 俺おかしい事言ってないよな!

 性格が普通じゃないって悪口にも聞こえるんだが?
 それに俺怒られてる?
 悪いことしてないよね?
 せめてチート、そうチートスキルだ。
 強くなって無双する力が欲しい。

「あの、何かスキルは貰えないんですか?加護でもなんでもいいですけど」

 女神の顔が曇った。
 そして俺から目を逸らす。
「今、私の力が弱まっています。深刻な女神力不足なの」
 
 女神の神々しさが失われていく。
 口調が変わっていく。
 いや、俺の中では前から疑念があった。
 これが女神の素の話し方なのかもしれない。
 なんだろう?整った顔やスタイル、それに笑顔に騙されていたが、言っている事はゆるふわJKのようにも見える。

 俺は不安を覚えた。
「他の3人の転移者には加護を与えたんだよ。その事で女神力が底をついたの。ジュンに力を授ける事は出来ないの」
 女神が明後日の方向を向きながら話す。

「加護やチートスキルが無くても大丈夫なんですよね!?問題無いって事ですよね!?」
 俺は恐怖を覚えた。
 あっちは剣と魔法の世界なんだだよな!?
 俺はただのおっさんで何の力もないぞ!

 しかも深刻な女神力不足ってなんだよ!?
 水不足か何かのように言ってるけど結構致命的じゃないのか?
 水不足はその年限りだけど、女神力不足ってまずいだろ?

 俺の全身から汗が噴き出す。
 女神さまは俺から目を逸らした。
 なんで目を逸らした!?
 嫌な予感しかしない!

 女神さまの顔が曇る。
 恐怖しかない!

「女神様、僕は英雄じゃありません。他に3人は加護持ちでしょう?僕を元の世界に返してください」

「だ、大丈夫。あなたから世界を救う雰囲気を感じるから」
 雰囲気ってなんだ!?
 さっきから曖昧な発言が多い。

「僕は英雄になれるような性格ではありません。他の者を探しましょう」
 絶対に断る!
 こいつは危険だ。

「英雄はあなたが思っているような立派な人間じゃなくてもいいんだよ~!」
 女神の声が大きくなる。
 涙を潤ませ泣きながら言う。

 物語でも英雄は癖が強い人間が多い。
 でも俺はそこまで突出した物は無い。

「お断りさ」
「4人居ないと駄目なんだよ~!」
 女神さまは涙目になりながら俺の話を遮り、俺に手をかざした。
「え?ちょ」

 女神は姿勢を正し、神々しさを取り戻す。
 俺はゆっくりと空間に飲み込まれていく。

「神様権限であなたの転移は決まっています。最初は苦労があると思いますが、頑張ってください。転移すれば異世界の言語と最低限の常識は身につきます。それと最後に、幸運値を増やすようにしてください。幸運値は良い事をすれば増えて悪い事をすれば減ります。幸運値がマイナスになると悪い事がよく起こり死にやすくなります。幸運値は上げるのは難しく、下げるのは簡単なのです。では頑張ってください」
 
 女神さまは早口で言いきって話を切り上げる。
 その早口が怖いんですけど?
 間髪入れず俺の下の空間が歪み俺は吸い込まれる。

 あの余裕の無さはなんだ?
 追い詰められているようにも感じる。
 まるでローン地獄に陥った主婦、いや、主婦ですらない。
 女神はJK、借金で首が回らなくなったJKだ。

 頭に女神さまの声が響く。
『言い忘れていましたが、強くなるまで、他の転移者には何をされても言い返さないでください。やり返すのも駄目です。最悪殺されてしまいますよ。絶対言い返さないでくださいね』

 最後の言葉が不吉すぎる。
 言い返したら殺されるってなんだよ!?
 俺大丈夫なのか?
 異世界に危険を感じる。

 英雄について疑問が生まれる。
 英雄は立派な人間じゃなくてもいいらしい。
 他の英雄に言い返したら殺される。

 英雄は、立派じゃなくて、言い返したら殺しに来る人間でもいいのか?
 世界を救えれば人格はどうでもいいのか?
 世界を救うってどうすればいいんだ?
 色々飲み込み切れず消化不良だ。


 目を開けると広場にいた。
 俺はこうしてこの世界に転移した。
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