深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

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投資の基本は節約と自己投資だよな

転移したら最弱の投資家だった

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 転移すると俺の他に日本の高校の制服を着た3人の姿があり、その周りを王と兵士、そして異世界の住人と思われる人が周りを囲む。

 まとわりつくような空気も感じる。
 不快感は無く、守られているような感覚を覚える。
 これが魔力か?

 うさぎの耳やねこ耳の者も居る。
 うさ耳やねこ耳が動いている。
 明らかに作りものの動きではない。
 俺は異世界に来たことを実感した。


 太陽が上に昇り、少しまぶしいが空気いい。
 植物には花が咲き春を感じさせる。
 遠くを見ると中世ヨーロッパのような街並みが広がり、高台には城が見える。

 俺が転移したこの街はフロント王国の王都フロントだ。
 国の名前も王の家名も王都の名前もすべてフロント。


 王に挨拶をし、転移者4人がそれぞれ自己紹介と自身の持つジョブ、スキルの説明をする。

 その瞬間俺は他の転移者に怒鳴られた。
「お前と一緒にやって行けるわけねえだろ!お前はパーティーを出ていけ!」

 転移してすぐにパーティーから追放されようとしている。
 いや、パーティーを組んだのかどうかも怪しいので追放以前の問題かもしれない。
 俺は心を殺しながら他の転移者の話を聞いた。
 そう、会社で理不尽に怒られている時と同じ対応だ。
 言い返してはいけない。

 俺は勇者の【タケル】に追放を言い渡された。
 ちょ!転移して5分も経って無いよね?
 追い出すのが早すぎないか?
 まだ一緒に冒険すらしてないだろ?

 俺が怒鳴られる中周りを見渡す。
 太陽が真上に昇る町の広場で王様、そして周りの兵士、一般の見物人が渋い顔をしている。

 更に周りには市民と思われる者が俺達を囲む。
 異世界の広場に転移して5分くらいしか経っていないが俺はひたすら他の転移者に攻められ続けている。

 太陽がまぶしいぜ。
 俺は必至で現実逃避する。
 多分俺達転移者は厄介者で癖のある人間に見られているんだろう。

 俺が弱くて追放されるのはまだ分かる。
 問題はこいつらの言い方と態度の悪さだ。

 日本から俺の他に3人がこの異世界に転移した。
 勇者のタケル。
 賢者のリン。
 聖騎士のイツキ。

 確認はしていないが動きや制服を見て日本人の高校生であると思った。
 皆18才らしい。
 タケルとリンがとにかくうるさい!
 さっきからうるさい。

 さっきからこいつらむかつく。
 言い返してやる。
 ……俺は女神さまの言葉を思い出した。
 『言い返しちゃだめだよ!』

 俺は強くなるまで言い返してはいけない。
 そうしなければ最悪他の転移者に殺されるらしい。

「なあ、お前らもそう思うだろ?俺達は選ばれたジョブだが、ジュンだけは最弱の投資家だ!足手まといはいらない!」
 勇者タケルの言葉に2人が頷く。

 リンが俺をバカにするように早口で話す。
「私達転移者はこの世界の最低限の知識を得て転移しましたが投資家ジョブは戦闘の役に立ちません。あなたも投資家が最弱だと異世界の知識を得て分かっているはずです。それにジュンのスキルを聞かせてもらいましたが、戦闘の役に立つスキルは無いようです。あなたが私達のパーティーに入って何か貢献できる事はありますか?」

 その早口で馬鹿にした言い方がむかつく。
 リンは人の事を考えない人間なんだろう。

「思いつかない」
 言っている事は間違っていないが言い方がむかつく。
 それとリンから冷徹さのようなものを感じる。

「思いつかないとは?はっきり言ってください!役に立つことが思いつかないと言う事ですね?」

「そう、です」
 しつこい。

「それに投資家ジョブはこの世界で嫌われています。周りの人間を騙して契約させて高利貸しのようなことをして荒稼ぎしている者が多いのです。一緒のパーティーにあなたが居たら私達まで悪者になります。そのイメージの悪さが最弱と言われる理由です」

 戦闘系以外のジョブは投資家以外にもいる。
 だが錬金術師ならポーションや装備を自前で作り、パーティーメンバーの装備も整えつつ冒険できる。
 ヒーラーなら回復しながら戦える。

 それに比べ投資家は皆に嫌われる上スキルの特徴は他の人と契約を結べる点だ。
 だが嫌われ者の投資家は中々契約を結べず、投資家の強みを生かせない。

 しかも得意な武器もない。
 その為投資家は最弱と言われている。

 追放したいのは分かった。
 早く話を終わらせよう。

「分かりました。パーティーを組むのは無しですね!みんなとはパーティーを組みません!」
 こいつらと話をしたくない。
 リンは理詰めで追い詰めてくるし、タケルは態度がでかい。

 イツキは言葉に発する事が無いが常に俺をバカにしたようにして見ている。
 たまに鼻で笑うのもイライラするポイントだ。

 早く終わりにしたいし俺だってお前らと一緒に居たくないわ!
 俺の能力が低い事は分かってる。
 早く話を終わらせたい。

 そこに王が割って入る。
「待つのだ。古来より異世界から来た英雄はパーティーを組んで戦うのが伝統となっている。まだ一戦もせずにジュン殿を追放するのはどうかと思う」

 エルク・フロント、それが王の名だ。
 20才ほどに見える王は金髪とブルーの目のイケメンで性格もイケメンらしい。
 
 改めて周りを見渡すと、周りの者が俺を哀れんだような目で見る。
 俺達転移者が異常者でこの世界の人間は常識者に見えた。

「おいおい!俺達は英雄だ。英雄の考えは尊重されるんだろ?無能は追放してサクッと魔王を倒す。それが俺達の判断だ!」
 タケルが俺を見下すような目で見ながら大きな声で言う。

 異世界から転移した英雄は世界を変える力があると言われている。
 その為英雄の発言は尊重され、時には王の権限以上の発言力を持つ。

「それに先ほど聞いたあなたの【経験値投資】のスキルの説明ですが、あれは寄生スキルです。あなたから何か代価を貰う代わりに契約者の経験値を吸い取るのはこれから無しにしてください。あなたに差し出せる代価は何も無いです」

 リンがしつこい。

「はい分かりましたみんなと契約することは無いので話は終わりですね」
 俺も早口で話を返す。
 早く話を終わらせたいのだ。
 お前に関わることも頭を下げに行く事もないから念を押しに来るのはやめてくれ!

「では契約してください。今後私達とあなたはいかなる契約も結ばないと。いかなる場合でも助けを求めてこないと契約してください」

 俺はお前らに寄生するって言ってないよな?
 俺がお前らに縋りついてくる前提で話を進めてないか?
 そんな釘の刺し方ってある?
 リンは頭がおかしいんじゃないか?

 思わず反論しようとしたが、ぐっとこらえた。
 こいつらは普通じゃない。
 話を終わらせて距離を取ろう。

「すまない。俺の投資スキルじゃそういう契約は結べない」
 俺の【経験値投資】のスキルで行動は制限できない。
 直感的にそれが分かった。

「投資家ジョブの中でもあなたは出来損ないですね。普通の投資家ジョブなら契約出来ます。では王様にお願いして投資家を呼んで契約してもらいましょう」
 こいつ嫌いだ。

 俺は自分のスキルの説明をしたよな?
 それくらい当然でしょ?みたいな態度で俺が悪者になるのおかしくね?

 王が言った。
「そこまでする必要があるのか?ジュン殿に対する対応があまりにもひどすぎる」
 王様は心もイケメンだ。
 天使に見える。

「そんな事はねーぜ!」
「当然の対応です!」
「このくらいは普通だ」
 いや、お前らの行動は普通じゃないからな。

 俺が弱いのも一緒に冒険したくないのも分かる。
 だが、言い方が酷すぎるしこっちはパーティーを組まないと言ってるのにしつこい。

 こいつらとにかく、面倒だ。
「この3人が納得しないので、どうか言う通りにして欲しいです」

「う、うむ、分かった。英雄全員の意思なら私からこれ以上言うことは出来ない。投資家ではないが魔道具を用意する」
 王が哀れんだような目で俺を見る。

 王の命令ですぐに紙のような魔道具が用意される。
 文官と思われる中年の男が紙の魔道具を持って前に出る。
「ジュン殿と他の英雄は、いかなる場合でもお互いに助けを求めず助けない。いかなる場合でも契約を結ばない。以上の内容でいいでしょうか?それと、契約を破ろうとした場合の代償はいかがいたしましょう?一般的には全身に苦痛を与える制約となります」

「構いません。破ろうとした際の代償は『全身の激痛を1時間受け続ける』にしてください」

 激痛を1時間か。
 今後絶対に助け合うことは無い。
 契約も結ばないと心に刻もう。

「わ、分かりました。本当によろしいのですね?」
 文官が王に目で訴える。

「構わん、やってくれ」
 イツキが偉そうに答える。

「では双方、私の言葉の後に同意の言葉を発してください。ジュン殿に対してリン殿・タケル殿・イツキ殿は、いかなる場合でもお互いに助けを求めない。いかなる場合でも契約を結ばない。契約を破ろうとした者は1時間の激痛を受けます。よろしいですね?」

「はい」
「了承します」
「うむ」
「いいぜ」

 皆が合意した瞬間、紙が空中に浮いて文字が光る。
 紙が消滅して光る文字が俺達の体に吸い込まれた。
「これで契約は成立しました。失礼します」

 契約を終えると文官は逃げるようにその場を後にした。
 文官も関わりたくないよな。
 分かるぞ。

「もう、言うことは無いな?早く話を進めたいのだ」
 王の呼びかけに皆が頷く。

「うむ、それでは初心者ダンジョンに向かってもらう前に装備を支給する。それとジュン殿、そなたには【戦闘力の腕輪】と【回復の腕輪】を授けよう。女神からそうするよう啓示があったのだ」

 戦闘力の腕輪はつけているだけで戦闘力がアップし、回復の腕輪は自動ヒーリング効果が付与されている。

 1つ1億ゴールドの価値がある。
 1億ゴールドは日本円の1億円と同じくらいの価値だ。
 転移した際に女神に貰った知識でそれが分かった。

「ぎゃはははは!それが無いとお前の戦闘力はたったの1だぜ!その腕輪が無きゃ魔物すら倒せねーもんなああ!お前はよおお!」
 勇者タケルが大声で爆笑する。

 他の3人は俺をバカにしたような目で見ながら着替える為立ち去った。
 加護を借り受け転移した他の3人は英雄だ。
 この世界の英雄とは、世界を救い世界を良い方向へ導く者だという。
 英雄の意思や行動は尊重される事になっている。


 王であっても英雄に対して強くは言えないのだ。
 英雄の役目は世界を守る事。

 無理に英雄の行動を縛っても良い結果は得られない。
 それがこの世界の常識だ。
 俺は加護を貰っていない為正式には英雄ではないのかもしれない。
 それでも女神さまが選んだ転移者なので俺の意志や行動も尊重される。

 王が俺の肩を叩いた。
「助けることが出来ず、すまなかった」
 周りの者は俺を哀れんだ目で見た。

「いえ、大丈夫です。ですが英雄のイメージは最悪なようですね」
「ジュン殿の印象は悪くなっていない」

 王がフォローする。
 だが俺はこの【カインドワールド】に転移して強く感じた。
 俺達4人は異端でこの世界の人間は良心的だ。

 俺はあの3人と同じカテゴリーに見られたくない。
 そう思いながら自分のステータスを確認した。
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