深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

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投資はコツコツ続ける地味な作業だ

エルフ&マッチョ100無双

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 俺達は早朝と共に王都を出発する。

 マナがウッドゴーレムに抱っこされながら笑顔で見送る。
 
「尊い!」
「癒されるわ~!」
「いつまでも見てられるわね!」

 120名のエルフも同行する。
 俺・ウサット・ラビイ・エルルだけの方が正直気は楽だった。

「さて、皆さんはレベル30を超えていると聞きました。提案なのですが、走って最速で駆け抜けたいのです」

「望むところね!」
「私達は斥候の能力もあるわ!」
「身軽さなら負けないわよ!」

「ジュン様、よろしいですかな?」
「いいと思うぞ」

「それでは、位置について、レディー、ゴー!」

 え?競争か?
 全員がハイペースで走っていく。
 いや、だが早く終わって好都合だ。

 先頭をウサットが駆け抜ける。

 熊の魔物が出てくるが、ウサットの筋肉が隆起し、クワで熊を粉砕する。

 粉砕って!
 今爆発しなかったか?

 今度は熊の魔物の群れが現れる。
 15体か。

「軽く蹴散らしてやりますぞ!」

 だがその瞬間、後ろから弓が飛ぶ。
 雨のように熊を矢が打ち付け、貫く。
 魔物が魔石に変わる。

「やりますなあ!」
「私達も負けないわ!」

 俺とエルルは後ろからその光景を見守る。

「みんな頑張ってますわね」
「そうだな」

 エルルは俺に並走するようにぴったりとついてくる。
 魔女服で動きにくいかと思ったが、よく見ると下はミニスカートのように丈が短く、左右に大きくスリットが入っている。

 ブーツは冒険者用の物で動きやすそうだ。

 斥候魔女っ娘だったか。
 俺達は素早くロングスパン領を目指した。


 ◇


【ロングスパン領】

「これが小説にあった木の城ね」
「おい待て、その小説を見せろ」

 エルフは俺から目を逸らす。

「ふぉっふぉっふぉ」

 ウサットはワザとらしく笑ってごまかす。
 こいつら、結託している。
 エルフは素早く木の城に入っていく。

 しまった!
 入場制限をして入場料の代わりに小説を出してもらえば良かった!

 俺がドリアード族を説得する以前にエルフが『私達の所に来るよね?』と説得を始めている。

「ウサット、明日の早朝に出発な。俺は王都に用がある」
「かしこまりました」

 俺がロングスパン領に向かうと、エルルがついて来た。

「ただ王に状況を伝えて、ギルドに手紙を出すだけだぞ」
「大丈夫ですわ。ついていきますの」
「そ、そうか」

 エルルの距離が徐々に近くなっている気がする。
 気のせいだろう。

 俺は王に今までの経緯を伝え、ギルドに手紙を出してロングスパン領に戻った。

 俺とエルルがロングスパン領に戻ると、俺が戻った事を聞きつけたパン屋や魔道具屋、武具屋の者が押し寄せていた。
 全員俺が投資をした店の者達だ。

「エルフの国で食べ物が足りないって聞いただよ!パンを持って行くだ!みんなを助けるのが俺達に出来ることだべよ!!」
「鉄の矢をお納めください!これは寄付です!!」
「魔道具の寄付もお渡しします!!」

 目の前に大量のパンと魔道具と鉄の矢、そして布の生地が置かれる。
 皆優秀で頑張り屋さんだから俺が投資したわけだが、やはりそういう者は俺が何もしなくても伸びるんだろう。
 皆を助ける意識も強い。


「す、すごい量だな」
「株式投資に選んで貰ったせめてもの恩返しだべ!」
「我ら選んでいただき感謝します!」
「すぐに建築費の返済を終え!そしてジュン様に報います!!」



 ジュンは知らない。
 ジュンが投資する=最強のブランド価値というその事実に!
 そしてジュンに投資してもらう事は勲章をもらう事と同義の価値を持つようになっていた。
 投資により規模が拡大し、最強のブランドと勲章を貰った者が寄付をするのは自然な流れである。

 しかもジュンは成功したらみんなを助けそうなものを教育し、投資している。
 ジュンの思惑とは違い、ギブが本人に帰って来る状況が生まれつつあった。

 そしてそれを見た周りの者は立派な行動を取るパン屋の店員達を見習い、マネするようになる。

 そしてその状況をウサットとラビイは見逃さない。
 新たな小説の執筆が進む。



「ありがとう、皆のおかげで助けられている」
「そ、そんな、おらは何も、まだ何も返せてねえだよ。ぐう、うううううううう!」

 ジュンの発言で数名の者が泣き出す。
 ドタバタがありつつ皆が休む。




【次の日の早朝】

 ロングスパン領の門には両サイドに太鼓と松明が置かれる。
 サイドにはマッチョ100になれなかったマッチョが並ぶ。

 ドン!ドン!ドンドンドンドンドンドンドン!ドドン! 
 息の合った半裸のマッチョの太鼓のリズムで門が開けられる。

 サイドに並ぶ半裸のマッチョを松明が照らす。

 マッチョ101と呼ばれた男が前に出る。

「ウサットさん、俺は、マッチョ100になれなかったけど、俺、必死で畑を耕します!筋肉をいじめていじめていじめて!次はマッチョ100に入ります!」

 マッチョ101とマッチョのウサットがひしと抱き合う。

「あなたの筋肉ストーリーはまだ始まったばかりです」

 マッチョ101が号泣する。

「お前は才能がある!次は大丈夫だ」

 マッチョが励ます。
 マッチョが無言で肩を叩く。
 マッチョが崩れ落ちたマッチョ101を起こす。

 マッチョ101以下の者が全員泣いている。
 マッチョの男泣きだ。
 マッチョは見送りつつ叫ぶ。

「マッチョ100!しゅつううううじいいいんん!!」

 マッチョが荷車に乗ったドリアード族を運ぶ。
 マッチョの旅は始まった。

 マッチョが道の倒木を投げ飛ばして道を空ける。
 マッチョが川に着くと荷車を担いで移動する。
 マッチョが道の石をどける。
 マッチョ無双である。

 俺とラビイとエルルはマッチョとエルフとドリアード族を見送った。

「これ、絶対大丈夫なやつ。もうウサットに任せよう」

「次は錬金術士部隊の出番なのです!」

 ラビイは待ってましたとばかりに前に出た。

 

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