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第17話

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 メイドとヒロインが食事を作り始め、俺は執事と一緒にテーブルを移動させた。
 ファインは領地のみんなに話を聞きに行ってゲームストーリーと同じクエストを進め始めた。

 食事の用意が終わりみんなで席に着く。
 いつもは執事とメイドも一緒に食べるが、今回はお客さんがいる為後ろに立って控えている。

「皆で食べよう。連れてきたみんなは細かい作法を気にしないから」

 その言葉で全員が座って食べる事になった。
 チンカウバインはケーキを手に取って食べていた。

 食事が進むと隣で食べるアイラが俺を見た。

「どうした?」
「2人のメイドの背中に虫を入れたり、スカートをめくったりしたんだよね?」
「本当に悪い事をしたと思う」

「うん、それはそうなんだけどそうじゃなくて、2人の事が好きだったのかなーって」

 俺は紅茶を吹き出した。

「やっぱり……そうなんだね」

 確かに、フィールは2人を気に入っていた。
 恋の感情だったんだと思う。

 母さんがニコニコと笑いながら言った。

「良いわねえ。2人は良い夫婦になるわ」

 その発言で俺とアイラの両親が盛り上がって話を始めた。

「その通りだよ!私の恋占いはよく当たるよ!村のみんなを占うよ!」

 手と口に生クリームをべたべたと付けたままチンカウバインが言った。

「それは良い、明日からお願いしよう」
「ただ、教会との関係もあるから、無料で恋占いをする事は内緒にして欲しい」
「わかった」
「私はそろそろ休むよ」

 チンカウバインはクリームを拭きとり、俺にキスをした。
 俺に憑依したか。
 気まぐれで何をするか分からないな。

 でも、チンカウバインが憑依している今、風魔法の知識を使って魔法訓練が出来る。

「フィール君、今日は一緒に話が出来るね」
「少し休んだら、筋トレとダッシュ、それとステップと魔法訓練をする」

「えええ!ここでもやるの!」
「弱いと、アイラを守りきれないだろ。夏休み前は危なかった。もう少し俺が弱かったら危なかったと思う」

 そう言って俺は部屋に戻った。



【アイラ視点】

 顔が熱くなる。

 弱いと、アイラを守りきれない

 強くなってアイラを守る

 強くなってずっと守る

『強くなって一生アイラを守る』



 私は、ボッズに体を差し出す事を決めかけていた。
 でも、ボッズの事が生理的に嫌だった。
 ボッズは私の体を舐め回すように見て、それだけで怖かった。

 狙われていたのは私だけではなかった。
 他にも3人が狙われていて、その3人は夏休み中学園で過ごす事にしたようだ。
 学園とその周りは安全で、学園長が目を光らせている。

 でも私は離れた場所に父さんと母さんがいた。
 ボッズは何をしてくるか分からない。
 学園の外で父さんと母さんに酷い事をするかもしれなかった。

 父さんが倒れた時に、私は諦めかけた。
 でも、フィール君が助けてくれた。

 試合が決まった時も諦めようと思った。
 その時もフィール君が思いとどまらせてくれた。

 フィール君が先鋒になって、5人を倒した時、私はフィール君に目を奪われた。
 胸がドキドキして、少し苦しくなった。
 フィール君には未来を変える力がある。
 妖精と契約できる不思議な力がある。

 更にフィール君は私の両親を馬車で故郷に送ると言ってくれた。
 父さんを治す段取りも全部フィール君が決めた。

 父さんと母さんを馬車に乗せて安心すると、またボッズが襲い掛かって来た。

 その時のフィール君は、あっという間に大魔法を使って敵を吹き飛ばして、ボッズをあっという間に倒してくれた。

 私は、フィール君に、恋をしている。

 さっきもフィール君がメイドさんに悪戯をしているのを知って心がざわざわした。
 フィール君が2人を好きなのか、今も好きなのか聞かずにはいられなかった。


 私はフィール君が好きで、

 役に立ちたい。

 一緒にいたい。

 夏休みが終わる前に、フィール君と。



 考えが終わり、周りを見渡すとみんながにこにこしながら私を見ていた。

 私の顔が、熱くなる。
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