才能オールF冒険者の俺は遭難してバリア魔法が覚醒した~胸糞NTRされたヒロインが嫁になった上、むかつくあいつはざまあされる~

ぐうのすけ

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第48話 落ち着く場所

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 俺はあかりが住んでいた家の前に立つ。

「きゅうきゅう!」

 3匹のエレメントカワウソが受付のお姉さんの周りを走る。

「懐きましたね」
「そうですね。本当に連れて行ってもいいんですか?」
「いいですよ。きゅうや皆も納得しています。それについていきたいからついていくんですよ」

「心強いですよ。頼もしい護衛です」

「きゅう!」
「きゅう!」
「きゅう!」
 
 3匹のエレメントカワウソはきりっとした顔をしているように見えた。

 あかりがきゅうを抱っこして家から出て来た。
 その両親も家から出てくる。
 俺達はA市からB市にギルドを移す。

 家の前にバスが止まった。
 大河さんが窓を開けて顔を出す。

「仙道、みんなを乗せてくれ」

 仙道さんの元部下4人も乗っている。

「わあ、触らせて!」
「これがエレメントカワウソなんだね」

「分かった分かった。早く全員バスに入れ!!」
「ほら、乗り込んでくれ」

「「きゅう!」」

 全員がバスに乗り込んだ。

「B市に出発だ」

 俺の隣にあかりが座り、バスが走り出した。

「仙道さん、B市は初めてですか?」
「隣の市なので、異界が出てくる前は何回か来た事はあります。異界が出て来てからは1回だけですね」

 俺と元受付嬢のカザネとは敬語で話す。
 人がいる時だけはこうすると決めてあるのだ。

「前より凄く変わっていますよ」
「楽しみです」

「きゅう!」
 
 きゅうは窓に顔を当てて外を見て、椅子の背もたれに乗ってジャンプしたりといつも通り落ち着きがない。

「大河さん、B市の市長ってどんな感じなんですか?」
「そうだな、剛腕で敏腕で即行動、そんな人間だ」

 俺はどうでもいい話をしながら景色をぼんやりと眺めていた。



 ◇



「B市に着いたぞ」
「凄い!何も無かった!モンスターが出てこない!」

「普通はそこまでモンスターは出てこない。仙道はダンジョン生活に慣れすぎだ」

「みんなでギルドに向かいましょう」

 カザネの案内でギルドに向かう。

「俺は車を返してくる」

 大河さんは車に乗って去って行った。

 ギルドに入ると目力の強い男が俺達を見ていた。

「もしかしてここは、ペットは立ち入り禁止ですか?」
「いや、興味があって見ていた。ようこそ第8B市へ」

 B市は第1市から第8市まである。
 市に人が密集しすぎるとモンスターが集まって来る。

 それを防ぐため、市の人口が増えてくると消滅した他の市に人を移して第2の市を作り運営していく。
 よい政治を行う市が他の市を飲み込み、強い文化を持った市が拡大していくのだ。
 その為街同士で人口を奪い合う今の状況を『平和な戦争』と呼んでいる。

「私はB市の市長の菅徹《スガトオル》だ。大河から聞いている。西野風音君、早速受付嬢として採用したい。それと仙道優也君、東山あかり君、ギルドの手続きを始めてくれ」

 なるほど。

『剛腕で敏腕で即行動』

 大河さんの言っていた意味が分かった。
 良いと思ったら即カザネを採用した。
 恐らく事前に大河さんからカザネの話は聞いていたんだろう。

 ギルドに傷ついた冒険者4人が入って来た。

 市長が早歩きで近づいていく。

「む、ポーションを飲むか?」
「いや、自然治癒で治すぜ」

 あかりが近づいていった。

「私が治していいですか?」
「だが、今金が無いから、今回は遠慮するぜ」
「そうだな、今回はあれだ、装備を新調してな」
「お金はいりませ」
「「きゅう!!」」

 きゅうとエレメントカワウソが冒険者にアクアヒールを使った。
 あかりが固まる。

「あー、助かるんだが、金が無くてな。もう少し待って貰えれば払えるんだが」

「今回は無料で大丈夫です。こいつらは治したくて治したので」
「仙道君、毎回無料にされては困る。回復魔法で生活している者もいるのだ」
「そうですね、すみません。後で受付嬢と話し合っておいて欲しいです。3匹は受付嬢に懐いていますので」

「そうですね。私の方で管理して回復診療の方も行いたいです。値段は適正価格でお任せします」

 治療したエレメントカワウソがただならぬ雰囲気を察して小さく丸まり、気配を消した。

「気にしなくていい。ただ、次回復する時は受付嬢に言われてからやってくれ」
「「きゅう」」

 俺達はすぐに住所変更の手続きを行った。
 受付嬢が別れ際に俺に近づいてきて耳元で言った。

「仙道さん、これから役に立ちますね。何か分かったら連絡するのでたまに会いに来てください」
「……はい、こちらこそよろしくお願いします」

 俺はカザネのしぐさと動きにドキッとした。
 カザネと別れる。

 大河さんの元部下4人は3匹のエレメントカワウソと遊んでいる。

「私はお母さんとお父さんの引っ越しを手伝って来るね」
「俺も付いて行こう」
「大丈夫」

 あかりはいつも以上に笑顔だが、本当は大丈夫では無いと思う。 
 ジンにひどい目に合された。
 だが、大丈夫だと言われると、これ以上踏み込めない。

「分かった。きゅう。ついていってくれ」

 きゅうがあかりに抱っこされる。
 きゅうは引っ越しの邪魔ではあるが、精神を安定させる意味では優秀だ。
 

「仙道、手続きは終わったか?」
「大河さん、ありがとうございます」
「いや、気にするな」
「何かお礼をしたいです」

「気にするな」
「困っている事はありますか?」

 俺は大河さんの役に立ちたいと思った。
 あかりの心を癒せない分を穴埋めしたいと思った。 
 とにかく、誰かを助けたかった。


「特には……最近海産物がスーパーに並びにくいくらいか」

「大河さん、ダンジョンの中に海があって、そこで取れますよ」
「何、だと!案内してくれ!」
「あ、俺の収納にいっぱい入ってます」

「大河さんは生活魔法の収納は」
「俺は使えないが、妻が使える。家まで来てくれ」

 俺は歩きながら話をする。

「前にスーパーに行った時は魚がありましたが、最近はそうでもないんですか?」
「並ぶときは並ぶが、並んでも買い占めるやつがいる。入荷が不安定らしい」

 一回不足すると溜め込む者が出てくるのだ。
 俺は大河さんの家に入った。

「立派な、家ですね」
「冒険者だからな。収入には余裕がある」

「あら、いらっしゃい」

 大河さんの奥さんは綺麗系だった。
 目元がキリっとしていて女性に人気がありそうに見える。 

「どうも、仙道と言います。海産物の受け渡しに来ました」

「助かるわ」
「一旦、テーブルの上に置いていいですか?」
「テーブル全部に置くの?入れ物ならあるのよ?」
「テーブル全部に置きます」
「待っていて。テーブルを掃除するわ」

 奥さんがテーブルを拭いた。
 たくさんプレゼントしたい。


「良いわよ」

 俺は海産物を出した。

「おおお!」
「多すぎないかしら」
「え?まだ1セット目ですけど?」

「仙道、何セット出すつもりだったんだ?」
「たくさん、奥さんがもういいと言うまでです」

「面白い子ね。いいわ。収納!どんどん行きましょう」
「お前、遠慮しろよ」
「大河さんには助けて貰いました。お礼をしないままだと気持ちが悪いです」

「だそうよ。遠慮せず貰うわ」

 俺はテーブルの上に何度も海産物を出した。



「18セット目」
「少し、疲れてきたわね」
「俺は飽きてきた。もういいんじゃないか?十分貰った」
「そうね。次でラストよ」
「はい、ラスト」

「収納、ふう、助かったわ。ありがとう」
「いえいえ、大河さんのおかげで助かっているので良かったです。それじゃ、帰りますね」

「食って行かないのか?」
「いえ、街を見てスーパーに買い物をして、あかりを異界に帰します」
「そうか、仙道、あかりと受付嬢の件はお前のせいじゃ無い。背負い込みすぎるな」
「そうよ、仙道君はまだ新社会人なのよ、困ったらすぐ夫を頼りなさい。こき使っていいわ」
「あ、ありがとうございます。ではまた」

 心が暖かくなった。
 俺は街を見てスーパーで買い物をしながら思った。
 カザネとまた会うのが楽しみだ。
 大河さんは頼りになる。
 大河さんの元部下も分からない事があれば聞くように言ってくれた。

 B市は良い街だな。
 人が良いからそう思うのか。



 俺は心を整えてあかり、きゅうと合流した。

「家にいなくていいのか?」
「私もヨバイの村に住むよ」

「分かった、帰ろう」

 かえろうと自分で言ってハッとした。
 ヨバイの村が、帰る場所になって、当たり前になっていた。

「うん」

 あかりをおんぶする。
 きゅうが俺とあかりの間に潜り込んだ。

「きゅう、苦しくない?」
「大丈夫だ、きゅうはこの位置が好きなんだ」
「きゅう」

「走るぞ」

 俺はB市の魔法陣から異界に入った。
 異界に入り、人気が無くなると速度を上げてダンジョンに入った。

「B市からもヨバイの村まで近いのかな?」
「そうだな、A市から来るのとそんなに変わらない」

 俺は走った。



【ヨバイの村】

 ヨウカとユキナが出迎える。

「お帰りなさい」
「お帰りなさい、お風呂に入って食事にしましょう」

「「きゅうきゅうきゅうきゅう」」

 エレメントカワウソが集まって来た。
 村を歩くと村のみんなが笑顔で声をかけてくる。
 ダンジョンの中なのに安心する。

 みんなに会うまでは、あかりとその両親しか話す人間がいなかった。
 高校の人間全員が悪い人間ではなかった。
 でも、鬼道に批判され、いやな事を押し付けられてピリピリしながら高校に通っていた。
 努力しても結果が出なくてどうしたらいいか分からないまま過ごしていた。
 モンスターを倒す力が無くて居心地の悪さを感じていた。

 この村は落ち着く。
 この村、違う、素朴で素直なこの村のみんなが暖かい。

 俺はあかりを見た。

 子供の頃の、あの時を思い出す。



『ユウヤ、けっこんしき、しよ!』

 あかりは白い毛布をウエディングドレスに見立てて俺と結婚式のまねごとをして遊んだ。
 あの時はただの遊びだった。
 どうすればあかりの心は落ち着くだろう?

 あかりを見ると一瞬、ウエディングドレスを着た綺麗なあかりが頭に浮かんだ。

 そうか、俺は、あかりと、



 END




 あとがき
 ここで終わりです。
 最後までお読みいただきありがとうございます。

 ダークファンタジー・胸糞展開は流行らないですし、明るくストレス無くが最近のトレンドです。
 それでもやってみてだめっす、読まれない作品でした。
 ヒロインが処女なまま主人公と結ばれるのがお約束で決まり事ですがそういうのをぶち壊した上で執筆してみました。
 今までにない様な事をすると9割失敗して1割大きく伸びるような感じかなあと思います。

 各話のエピソード名を考えるといつの間にか時間が過ぎてしまいます。
 時間を掛け、その分執筆時間を削ってまで考えた割に読者の方から違和感を覚えらる結果となることがありました。
 ネタバレになってしまうエピソードを書いている事もありました。
(前にネタバレでお叱りを受けた事があります)
 どうやら僕は各話のエピソードを考える事が苦手なようです。

 次はリアルな感じではなく、ファンタジーっぽく夢があり分かりやすい作品を出していこうと思います。
 改めて、最後までお読みいただきありがとうございます。

 ではまた!
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感想 4

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みんなの感想(4件)

風神雷神
2023.06.02 風神雷神

お疲れ様でした!自分は、こんなジャンルでも良かったと思いました。

2023.06.03 ぐうのすけ

ありがとうございました

解除
すみれん
2023.06.02 すみれん

最後ところで最近の流行りとか、いろいろ反省?されてましたけど、私は、楽しく読みました。
全体的に、書きこなれた、安心感のある文章でした。
終わってしまって残念ですが、このくらいの、長さの作品もいいですね。
また、次の作品も読みたいと思いました。


2023.06.03 ぐうのすけ

次もよろしくお願いします

解除
やすし
2023.05.31 やすし

主人公の成長する展開が少し早い気がする。でも、能力の内容はかなり面白いと思いました。

2023.06.03 ぐうのすけ

展開の早さはどうするかいつも迷っています
面白いと言っていただけると助かります

解除

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