ANGEL -エンジェル-

癒-healing-

Ｐ56．力が暴走していない証拠。

『ありがとうね』



「え？何が？」

顔を洗ってくると言って
みかんが水場に走って行った後、
私はきゅうりにお礼を言った。

私にはみかんが記憶が戻って
どんな気持ちでいるのか
なんで真君を避けるのか全く分らない。
好きなら一緒にいればいいのにって思ってしまう。

そんな私が泣いてるみかんに
何を言えばいいのか分からなかった…

きゅうりが居なかったらきっと何もできなかった。
あのまま、みかんに作り笑いをさせたまま、
ただ昼休みが終わっていたかもしれない。


『…みかんのこと、本当によく分かってるんだね』

「そうでもないわよ」

『え？』

「私…あの子があんな風に辛そうにしているの、初めて見るの。」

『…そうなの？』

「でも、あんな顔するのは、力が暴走していない証拠。だから私はあの子が辛そうな顔を見せるのは、いいことだと思うわ…複雑だけど。」


辛いと思う気持ちが消されていないーー

それが力が暴走していない証拠かぁ…

『…でも、みかんはなんで真君のこと避けるんだろう？そんなに辛いなら前みたいに…』

「無理なのよきっと」

『え？』

「かんなは、水谷君が好きだから一緒に居ない道を選んでるんだと思う…きっと私がかんなから離れて居た時みたいに、何か理由があるのよ。」

『なる…ほど…』

きゅうりはみかんの力が発動しないために距離を置いてた。
みかんも何か真君のために…？

「分かんないなら、無理に考えなくていいわよ」

『…私だってみかんのことちゃんと理解したいと思ってるんだよ…きゅうりみたいにカウンセラーみたいなことできなくても、理解してあげたい。』

「カウンセラーって…それ褒めてるの？」

「こいつは褒めるの苦手なんだよ」

『何、あんたまだ居たの？』

「殺すぞお前」

もうすぐお昼休みも終わる時間だというのに
二階堂優もなんだかんだ最後まで居てくれていた。

こいつも優しいときは優しいんだなぁ…

『でも、やっぱり…きゅうりがいてくれてよかったよ。私だけじゃなんて声をかけていいのかわからなかったし…真君の気持ちばかりで…みかんを苦しめてたかも…』

「「確かに」」

『そこ！はもんないで！』

「…まぁ、今はみかんにも時間が必要なのよね」

『うん…そうだね。反省しちゃったよ…。』

真君には気の毒だけど
みかんの気持ちの整理もさせてあげたいし
近づくのはもう少し待ってもらうしかないよね…