ANGEL -エンジェル-

癒-healing-

Ｐ58．初めてだね？

それから２週間。



みかんと真君は私の知る限り

一度も話していない。








みかんは最近色々と呼び出しが多くなっていた。

ミスコンの勧誘のために
実行委員会の人が来たり…
先生に呼ばれたり…

文化祭前だからか
みかんに告白してくる人も多かったが、
みかんは以前よりきっぱりと断ることが多かった。
教室までみかんを呼び出しに来た人には、
その場でお断りすることもあった。

チャレンジャーに対して遠慮が無くなったのは
癒しの力が制御できているからなにだろうか…？
それとも真君を気にしているからだろうか…？





一方の真君は、毎日図書館で
みかんが現れるのを待っているようだった。

週一回は私も図書室に様子を見に行っていたが、
辛そうな顔をしている彼を見るたびに
胸がひりひりと痛む…

みかんに時間をあげることも
大切なことだと理解したのに、
本当にこれでよかったのだろうか？
と、やっぱり思ってしまう…。
























「もうすぐ文化祭だっていうのに、本当にいいのかなぁ…」

「知るか」

だんだんと涼しくなってきたこの時期
中庭は結構過ごしやすいもので、
私は食パンをかじる二階堂優の隣でランチを食べていた。

「何で定期的に俺にそれを言うんだ」

「だってぇ…あの二人、絶対両思いなんだもん。」

「それも何回も聞いた。そうじゃなくて、俺は一切関係ないって話だ。」

相変わらず二階堂と九理は二人の関係については無関心だった。

「だって…きゅうりは別のクラスだから二人で話すことあんまりなくて…この話できる人がいないからさ」

「俺も別のクラスなんだが」

「あんたはぼっちだから話しかけやすいし」

「お前マジで殺すからな」

「それに…みかんは最近忙しそうだし、きゅうりはみかんが居る時しか教室来ないんだもん！」

「お前…他に友達いないのかよ」

「あんたには言われたくない」

なんだかんだあったせいか
最近は二階堂優といることも
自然になってしまった気がする。

最初のうちは背は高いし、
目つきは悪いし、口も悪いし、
とんでもなくとっつきにくいいけ好かないやつだし、
会いたくもなかったのに…

今こうやって一緒にご飯を食べたりしているのも不思議だ。
まぁ、私が一方的に話している気はするけど。

「「………。」」

「あいつ、結局ミスコンに出んのか？」

「…へ？」

「だから、あのちっこいのはミスコンに出んのかって」

驚いてすぐに返事が出てこなかった。
こいつから質問してくるなんて
なかなか珍しい…と言うか

「そういう質問、初めてだね？」

「そうか？」

「…出るんじゃないかな？去年も断っていたけど、なんだかんだで押し切られてたし。」

「去年、優勝した奴って…」

「そう！みかんだよ！あれは本当に凄かったんだから…！」

「後夜祭は自由参加だったからいかなかったけど…やっぱあいつか。」

なんだ…普通の会話もできるじゃん。
…そういえばもうすぐ、
二階堂優と知り合って一か月たとうとしている。
きっともう私たちのこと、他人とは思ってないんだよね？

最初のうちは、勉強する時間を邪魔されたくない
とか言って、みかんの力のことに協力してくれていたのに…
最近じゃもう、最初にあった距離感みたいなのも感じなくなったなぁ…

「あんた、今年は見にきなよ！」

「は？」

「あの子の本気、今回の文化祭でも見れるかもよ？」

「……考えとくよ」

相変わらずのぼさぼさの髪の毛に目の下のクマ。
でも、出会った時と決定的に違うのは、
声や表情から警戒心や不信感という感情が見えないところだ。

「文化祭、楽しみだねぇ」

はしゃぐ私に向かって、
少し二階堂優が笑ったように見えた。