妹、異世界にて最強

海鷂魚

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七話

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「いらっしゃいませ。ギルドの設立はこちらでできますわ」
 受付の女性はそう言って案内を始めた。
「ギルドとはいわゆる団体です。設立をなさるということは、そのギルドの長を、設立者が務めるということになります。もちろん委託も可能です。新入りにボスをやらせてみるというのも一種の手でしょう。しかしその新入りをどうギルドに入団させるかですね。この室内の端に掲示板があります。そこに募集の紙を貼るのです。するとまだギルドに入っていない冒険者がその募集を気に入って応募してくださるかもしれません。そして重要なのは、応募者が応募したかどう判断するかということですが、募集の紙の上の部分、丸い空白の場所があると思います。そこに指紋をつけてください。応募者は下の丸い空白に指紋をつけます。するとテレパシーで応募者が応募しているということがわかりますので、そのままテレパシーで会話し、どこで落ち合うかを決めていただければ、快適にギルド掲示板をご使用いただけます。テレパシーで会話できるのは三十分までです。そこは、お気をつけください。丸い空白以外は、自分のギルドをアピールするための場所なので、好きに色々書いてください。空白でギルド募集をかけてもそれに応募する方はいないでしょうし。そして掲示板に紙を貼る場所がなかった場合は、他の集会所を使うという手もあります。貼る場所がなかった場合はお申し付けください。近所の集会所の地図をお渡ししますので、どうぞお気楽に」
「ありがとう。設立します」
 灯がそういうと、募集のための用紙を渡してくれた。そして募集者用の空白に指紋を押す。手続きはこれだけでいい。
 そして空いている席を獲得して、受付の女性にもらったペンで紙をどう彩ろうか考えていた。
「まず、重要なのはギルド名だよね。名は体を表すというしね。どうしようか」
 灯がウンウンと悩んでいるので、僕がいくらか候補をあげる。
「赤青団とか、紫団とか。名前だから僕たちの一字をとってつけるとかいいかもね」
「えーださいー」
 殴るぞ。
 とは思ったが手は出さない。この世界ではおそらく灯の方が強いのだ。前の世界でなら確実に殴っている。
「バイオレットは!? 今思いついたけど超かっこいいし!」
「紫とは言わないよな」
「同じような色だよ」
 ということで、ギルド名はバイオレットになった。日本語では菫色という。青みがかった紫だ。
 その色でいいのか。名前が僕主体になってないか? とはおもったが、もうペンでバイオレットと書いてしまっているので、余計なことは言わないでおいた。
 そして名前を書き終わると同時に説明文らしきものも書いていく。
 『アットホームで風通しの良いギルドです! 強い人大歓迎!』。
 バイオレットというよりはブラックな説明文だったが、口を出さない。前の世界では黒かったものも、ここでは菫色なのだ。何の問題もない。
「これでいいね。はっつけに行こう」
 灯に言われて掲示板へ向かう。掲示板にはそれぞれ汚い字だったり綺麗な字だったり汚い字だったりの募集が貼ってあった。つまりは汚い字の募集が目立つ。酔っ払った大男が書いたのだろう。仕方ないことだ。
 それに比べて灯の書いた説明文は可愛すぎる。女の子が書きましたと字で表している。丸くて小さい字で、屈強な男だったりが集まるとは思いづらいな。
「みんなどうやって貼ってんだろ。見た所テープも何も使ってないみたいだけど」
 灯が言うので、募集の内容ではなく見た目を注視した。確かに、紙を掲示板に貼るのに画鋲やテープは一切使っていない。何もないただの紙がぺたりと掲示板に貼ってあった。
 なんだこれ? と、少し右往左往していると、
「後ろ詰まってんだよ、早く貼れッ」
 と言う、後ろに並んでいた男の怒号にびっくりして、灯がそのままの募集の紙を、掲示板の空いているところに押し付けた。すると磁石のように、紙が掲示板にくっついたのだ。
「す、すいませーん」
 と、言いながらその場を退散。
「びっくりしたね」
「紙、あのままくっつくんだな。それも驚きだ」
 なんて話して、先ほどの席に着席。
「で、これからどうする」
 灯に問う。灯は悩む様子も大してなく、
「ここで待ってるのもなー。観光したい!」
 と、言うのだった。こいつに聞かなければよかった……。
 僕はもう疲労困憊だった。何時間歩かされたとおもっているのだ。部活は運動部だった灯には楽勝かもしれないが、運動部に所属してなかった完全文化部の僕にとって、二時間半近くの徒歩はかなりきつい。そしてこれからも観光に歩かなくては行けないとなると、もうそれでは僕自身魔物と対峙するときには疲れ切って戦力になれない。ので、その旨を灯に伝える。
「僕は疲れた。紋章で適当な本を買って宿を借りてくれ。そこで休んでるから」
 お前一人で行け。と、僕。
 灯は少し寂しそうにしたが、
「わかった。夜までには帰るね!」
 と、お互いの条件を飲んだ。
 僕は灯に本を数冊買ってもらい(中身は確認したが全部日本語だった)、集会所の近くにあった高級感漂う宿を借り、そこで別れた。
 灯に何かなければいいが。
 とは考えたが、やはり元気な灯に付き合ってはられない。僕はふかふかのソファにくつろぎながら、本を読んでいた。
 題名は、『異世界漂流記』。
 適当な本を選びすぎたな。と、僕はその本を投げ捨てた。
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