妹、異世界にて最強

海鷂魚

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十四話

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 シバリアさん。
 22歳。
 魔法少女といえば年を取りすぎだし、魔女というには若すぎる。
 いわゆる魔法使い。
 治癒担当として、ギルドバイオレットに編入した。
 灯は屈強な戦士を望んでいたようだったが(流石にシバリアさん本人には言っていないが)、僕としては治癒という役割はとてもありがたい役職だった。
 灯は十分強い。戦う戦士として数えられている。ならば傷を治す者が必要だった。
「シバリアさん。歓迎しますよ」
「しますよ!」
 灯はコミュニケーションに少し異常がある。それは黙り込んだり寡黙だったりするタイプの異常ではなく、喋りすぎる、うるさくやかましい騒音タイプの異常を兼ね備えている。なので僕が率先して喋らなくてはならない。灯の通訳も兼役しなければならない。
 大変だ。
 集会所は喧しくて顔合わせには少々うるさすぎるので、僕らの宿泊する宿に案内した。
「高い宿に泊まっているんですね」
 と驚くシバリアさんに、灯が自らを勇者だと見せびらかすと、シバリアさんはとんでもなく驚愕していた。
「勇者といえば、王の次に偉いとさえ言われる役職の人物ですよ! 紋章……確かに本物だ……! すごい!」
 それも異世界にわざわざやってきたからなのだとすると、とても役得というか。異世界きてよかったと唯一思える点ではあった。
「何者なんですか?」
 とも聞かれた時に、王様に自分たちが異世界の者だということは黙っておけという命令は下されていなかったので、それを喋っていいかどうかは——を考える前に、すでに灯が暴露していた。
「なるほど。異世界からお越しに。それは勇者になり得ますね」
 と、シバリアさん。
 案外すんなり納得したのだな——と、そこに驚きを持ちつつ、あまりに騒がれなくてよかったと思うのがあった。
 もし僕が東京にいたとして。
 異世界からやってきました! という変な格好の人間がいたら即通報している。
 通報するだけなら無料なのだ。
 治安のためにどんどん通報しまくろう!
 という運動がしたいがために通報している感も否めない(否める)。
 しかし治安のためには小まめな通報も必要である。
 疑わしきは罰せず——ではなく。
 疑わしきは火にかけろ。それが僕の人生における信条であったし、僕の予感というのは大概あたるので、火にかければ大抵の人間が犯人だったりした。それは小話として、ミステリー作品的な枠で僕の天才的推理能力を語っていきたい所存であるが。
 実際は、
「あれ? お前怪しくね? 犯人だろ!」
 と揺さぶっていたら犯人だっただけであるのも否めない(否めない)。
 だからシバリアさんに通報されなくてよかったと思うし、通報されても、多分この国の警察より勇者の方が偉いので、通報者であるシバリアさんを牢獄にぶち込んでやるという二つの思いが交差していた。
 心に交差点ができていた。
 そんな僕の心の内を知る余地もなく。
 シバリアさんは無事にバイオレットに編入、仲間入りを果たした。
 僕とは当然会話も噛み合っているし仲良くはできているのだが(シバリアさんの髪の毛が緑色という爆発的髪色を持ちながらそれに劣らない先天的美人だからというのはその理由にはならない)。
 灯とも、うまくやれていた。
 灯がうまくやっているのか、シバリアさんがうまくやっているのか。
 それは全くの謎である。
 天才的推理能力の持ち主である僕は当然シバリアさんがうまくやっているなと思うのだが、灯を見ていても普通の女子にしか見えないので、安易に結論を早めることはできなかった。
 灯の通訳という役も大して活躍しなかった。
 それは喜ばしいことである。
 このまま、灯の通訳は引退したいものだ。出来ればいいが。
「いやー。よかったよかった。シバリアさんが仲間になってくれたから、旅路の怪我はもう大丈夫だね」
「はい。お二人の怪我も全部直してあげますよ」
 なんて話してたら夕食の時間になっていた。この時点でいえば、うまく関係を築くという難問も無事通過していると言える。
「お昼も豪華だったけど夕飯も豪華~。よかった勇者様に出会えて」
「これも運命だよ! 巡り合わせだね!」
「は、はは」
 言えないか。
 シバリアさんには、多少の灯の重さは気にしないでほしいと切に願う僕だった。灯自身スリムではある(ガリガリとも言える)のだが、何せ愛が重い。
 付き合い出したら束縛が凄まじくて気持ち悪いタイプの人間だ。
 兄である僕も多少は苦労した。
 兄であるから多少で済むかもしれないが。
 未来、灯に彼氏ができるのだとしたら注意したいものだ。
 愛情過多で死ぬと。
「次はどんな人が来るんだろうなぁ~」
 夕飯を食べ終わって、シバリアさんと戯れていると、そんな風に灯が言った。
「もしかして、一箇所の集会所で人を集めるつもりですか?」
 シバリアさんはまさかあり得ないとでも言いたげに訊いた。
「え、ダメなの?」
「ダメということはありませんが、一箇所を拠点にして活動するギルドは数少ないですよ。少なくとも大人数のギルドを目指すなら多数の拠点で活動しなければなりません。人が集まらないから」
「んー。じゃあこの近くに集会所ってある?」
「えーと、少し田舎に行ったところに、盛んに営業している集会所を知っています」
「じゃあ次の目標が決まったね。その集会所で活動すること!」
 おー! と、シバリアさん。大人の雰囲気を身に纏いつつ可愛らしいそのリアクションに見とれてしまう。
「じゃ、明日ここを出て募集の紙回収して出かけるか」
「あ、私荷物まとめて来るので今日は自宅に帰りますね」
 僕が次の目的をまとめたところで、それが解散の合図になった。
「じゃあ、また明日ね!」
 シバリアさんの帰り際、宿の出入り口で手を振る灯に、シバリアさんも手を振り返しながら、夕闇に消えて行った。
 僕も振っていた手を止めて、灯に向く。
「シバリアさんと仲良くな」
「当然! もう大好きだもんねー」
 なんて話しつつ、僕たちも、明日のために荷物をまとめるのだった。
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