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始まりの猫
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「ボンジュール! エスト」
あたしの一日は、そんな浮かれた言葉から始まる。
片方の目だけをチラリと開けて、返事の代わりに、美しくしなやかに伸びた尻尾でパタリと床を一度叩く。
おばあさんは「よいしょ」と腰をかがめて、ご飯が入ったピンク色の容器をいつもの場所に置いた。
コトリと硬く軽い接触音が鳴る。大きな窓から少しだけ離れた、澄んだ木の香りのする本棚の下。鼻の長い象みたいな掃除機の隣。今日も時間通り。
「たくさん、おあがり」
あたしはのそりとだるそうに起き上がり、香ばしい匂いのする容器に鼻先を寄せる。食欲が刺激されて、まっすぐなヒゲが震える。カリッと小気味いい音を立てて一口食んでから、言った。
いつも同じ味なのね。たまには変えたら? この味に飽きたら、どこかへ出ていかれてしまうかもしれないわよ。
嫌みのつもりで言ったのに。
「そうかい。エスト、おいしいのかい。よかったねぇ」
おばあさんは勝手に解釈して、シワシワの顔をさらにクチャクチャにして、嬉しそうに微笑んだ。
あたしの一日は、そんな浮かれた言葉から始まる。
片方の目だけをチラリと開けて、返事の代わりに、美しくしなやかに伸びた尻尾でパタリと床を一度叩く。
おばあさんは「よいしょ」と腰をかがめて、ご飯が入ったピンク色の容器をいつもの場所に置いた。
コトリと硬く軽い接触音が鳴る。大きな窓から少しだけ離れた、澄んだ木の香りのする本棚の下。鼻の長い象みたいな掃除機の隣。今日も時間通り。
「たくさん、おあがり」
あたしはのそりとだるそうに起き上がり、香ばしい匂いのする容器に鼻先を寄せる。食欲が刺激されて、まっすぐなヒゲが震える。カリッと小気味いい音を立てて一口食んでから、言った。
いつも同じ味なのね。たまには変えたら? この味に飽きたら、どこかへ出ていかれてしまうかもしれないわよ。
嫌みのつもりで言ったのに。
「そうかい。エスト、おいしいのかい。よかったねぇ」
おばあさんは勝手に解釈して、シワシワの顔をさらにクチャクチャにして、嬉しそうに微笑んだ。
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