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Darling Darling
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巣穴から、まずは頭だけ出すの。
夏から出しっぱなしの薄い肌掛けと、秋の初めの頃に乾燥機にかけたきりの毛布。最近はそれだけでは寒さに耐えられなくて、厚手の掛け布団を押し入れから引っ張り出してきた。それらが重なって出来た、巣穴。
でも、まだ目はつむったまま。
小花模様の薄っぺらなカーテンから射し込んでくる光に、閉じたまぶたの裏が真っ赤に燃えて、ようやく遅い朝を知る。
鼻から吸い込む空気が、つんと冷たくて痛い。パジャマの袖口から半分くらい露出してしまっている、やわな素肌にも痛い。
冬は辛い。でも、頑張って起きないと。
今日は仕事が休みだから、一日中あなたと一緒に過ごせる。
ねぇ、ダーリン。
あなたの髪は、美味しそうなカラメル色。所々、ちょっとだけ黒が混じっているのが、変わっていていいなと思う。その黒い部分が、安っぽい蛍光灯の下ではツヤツヤに輝いて、とてもまぶしい。
触れれば、指先に吸い付いてくるんじゃないかってくらい、しっとりと滑らか。何度もカラーリングを繰り返したせいで、ボロボロに白茶けたわたしの髪とぜんぜん違う。
羨ましい。気持ちいい。
テレビを観ながら何となくとか、なかなか寝付けない夜とか、気がつくと手を伸ばして触っちゃっているんだ。
あなたは、それをいつも嫌がる。照れ臭いのか、わずらわしいのか、知らないけど。
いつだって丸っこい瞳の目尻をつんと上げて、眉間にくしゃっとシワを寄せて、無言でじっとわたしを睨んでくる。口はへのへのもへじ。
本当、素っ気ないんだから。
でも、そこが好き。その仏頂面も、たまらなく好きよ。
あなたのそんな表情を見ただけで、この心臓がきゅうっと縮こまって、無駄に排出された血液が、張り巡らされた管の壁を叩きながら、全身を回る。
衝突で生まれた熱は、わたしを汗ばませる。鼓膜のごく近くで、ドクン、ドクン、と灼熱の命が脈打つ。
今、ここに生きている。わたしも、あなたも。
そう思える瞬間だから、何度だって手を伸ばしてしまう。煙たがられても。
ねぇ、ダーリン。
夏から出しっぱなしの薄い肌掛けと、秋の初めの頃に乾燥機にかけたきりの毛布。最近はそれだけでは寒さに耐えられなくて、厚手の掛け布団を押し入れから引っ張り出してきた。それらが重なって出来た、巣穴。
でも、まだ目はつむったまま。
小花模様の薄っぺらなカーテンから射し込んでくる光に、閉じたまぶたの裏が真っ赤に燃えて、ようやく遅い朝を知る。
鼻から吸い込む空気が、つんと冷たくて痛い。パジャマの袖口から半分くらい露出してしまっている、やわな素肌にも痛い。
冬は辛い。でも、頑張って起きないと。
今日は仕事が休みだから、一日中あなたと一緒に過ごせる。
ねぇ、ダーリン。
あなたの髪は、美味しそうなカラメル色。所々、ちょっとだけ黒が混じっているのが、変わっていていいなと思う。その黒い部分が、安っぽい蛍光灯の下ではツヤツヤに輝いて、とてもまぶしい。
触れれば、指先に吸い付いてくるんじゃないかってくらい、しっとりと滑らか。何度もカラーリングを繰り返したせいで、ボロボロに白茶けたわたしの髪とぜんぜん違う。
羨ましい。気持ちいい。
テレビを観ながら何となくとか、なかなか寝付けない夜とか、気がつくと手を伸ばして触っちゃっているんだ。
あなたは、それをいつも嫌がる。照れ臭いのか、わずらわしいのか、知らないけど。
いつだって丸っこい瞳の目尻をつんと上げて、眉間にくしゃっとシワを寄せて、無言でじっとわたしを睨んでくる。口はへのへのもへじ。
本当、素っ気ないんだから。
でも、そこが好き。その仏頂面も、たまらなく好きよ。
あなたのそんな表情を見ただけで、この心臓がきゅうっと縮こまって、無駄に排出された血液が、張り巡らされた管の壁を叩きながら、全身を回る。
衝突で生まれた熱は、わたしを汗ばませる。鼓膜のごく近くで、ドクン、ドクン、と灼熱の命が脈打つ。
今、ここに生きている。わたしも、あなたも。
そう思える瞬間だから、何度だって手を伸ばしてしまう。煙たがられても。
ねぇ、ダーリン。
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