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わたしの好きな人は、雨男らしい。
大事な約束の日や、心待ちにしていたイベントなど、ここぞという時に必ず雨に降られてしまうという、アレだ。
本人いわく、呪われているのだという。
わたしがそれを知ったのは、告白した夜のこと。
彼は、バイト先のコンビニに、お客さんとしてたびたびやってきていた。
その頃のわたしは、名前も知らない彼への想いが募りに募り、炭酸ガスが満ち満ちたペットボトルさながらに、暴発する寸前だった。いよいよ堪えきれなくなって、勢いのままに、振りかぶって彼に気持ちを殴りつけてしまったのだ。
夜も遅い時間で、他にお客さんはおらず、先輩は裏でこっそり喫煙中。店内にはわたしたちしかいなかった。
レジに訪れたと同時の告白は、彼にとって、思いがけない方角から飛んできた、豪速球みたいなものだったのだろう。突然で避けきれず、顔面で受け止めたみたいにして、彼は一瞬のけ反る。すぐに困惑した。
当たり前だ。脳震盪を起こされないだけマシだったというものだ。
わたしはと言えば、暴投だとわかったあとは、身勝手にもすっきりしてしまった。たった今目の前で砕け散った、片想いの処理方法を模索するくらいに、冷静さを取り戻し始めていた。
彼は学生風で同年代だろうとは思うが、いきなりすぎる。ほとんど言葉を交わしたこともない相手からの「好き」に、「実は僕もずっと」なんて展開は、二次元の世界でしかあり得ないのだ。
この可愛らしい、なんともわたし好みの顔をした彼は、今後、このコンビニに現れることは二度とないだろうなと思うと、それだけが悲しかった。
怯えて逃げるように立ち去られることも覚悟していた。
でも、彼はそうしなかった。その口から飛び出た言葉は、わたしの予想をはるかに超えていた。
大事な約束の日や、心待ちにしていたイベントなど、ここぞという時に必ず雨に降られてしまうという、アレだ。
本人いわく、呪われているのだという。
わたしがそれを知ったのは、告白した夜のこと。
彼は、バイト先のコンビニに、お客さんとしてたびたびやってきていた。
その頃のわたしは、名前も知らない彼への想いが募りに募り、炭酸ガスが満ち満ちたペットボトルさながらに、暴発する寸前だった。いよいよ堪えきれなくなって、勢いのままに、振りかぶって彼に気持ちを殴りつけてしまったのだ。
夜も遅い時間で、他にお客さんはおらず、先輩は裏でこっそり喫煙中。店内にはわたしたちしかいなかった。
レジに訪れたと同時の告白は、彼にとって、思いがけない方角から飛んできた、豪速球みたいなものだったのだろう。突然で避けきれず、顔面で受け止めたみたいにして、彼は一瞬のけ反る。すぐに困惑した。
当たり前だ。脳震盪を起こされないだけマシだったというものだ。
わたしはと言えば、暴投だとわかったあとは、身勝手にもすっきりしてしまった。たった今目の前で砕け散った、片想いの処理方法を模索するくらいに、冷静さを取り戻し始めていた。
彼は学生風で同年代だろうとは思うが、いきなりすぎる。ほとんど言葉を交わしたこともない相手からの「好き」に、「実は僕もずっと」なんて展開は、二次元の世界でしかあり得ないのだ。
この可愛らしい、なんともわたし好みの顔をした彼は、今後、このコンビニに現れることは二度とないだろうなと思うと、それだけが悲しかった。
怯えて逃げるように立ち去られることも覚悟していた。
でも、彼はそうしなかった。その口から飛び出た言葉は、わたしの予想をはるかに超えていた。
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