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第3章 学園に通おう

90話 会議

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 とりあえず基本方針が決まったところで細かい打ち合わせに入る。

 そのためにもクラウスさんにも来てもらった。

 カミラさんはエミールくんと一緒に隣の部屋で待っていてもらってる。

 エミールくんには、少し申し訳ないけどちょっと強めのお香で無理矢理眠ってもらった。

 イヴァンさん曰く、『戦場で心に傷を負ったものの場合ですが、ひたすら睡眠です』ということだったので、ちょうどいいと思う。

 イヴァンさんの経歴が相変わらず謎だけど、気にしないことにしよう。

 たしかに、今のエミールくんには難しいこと考えずにゆっくり眠る時間が必要なのかもしれない。

 しかしなんでメファートくんはあんなお香を持っていたんだろう?

 話の流れで理由を聞いたときは、やけに慌ててたけど……。

 メファートくんも眠れなかったりするんだろうか?

 今度ゆっくり話を聞いてみよう。

 まあ、とりあえず、そのことは置いといて今はエミールくんの話だ。

 せっかくクラウスさんっていう身近にいた人がいるんだし、話を聞いてみよう。

「えっと、まずはユニさん、この人が今日からうちで使用人として働いてもらうクラウスさん。
 クラウスさん、ご存知かもしれませんが、こちらがこの屋敷の主人のユニコロメド様です」

 エミールくんのことが衝撃的すぎて、ユニさんへのクラウスさんとカミラさんの紹介が後回しになっていたから今済ませとこう。

 仮に顔見知りだとしてもきちんとした場で紹介されるまでは知らないものとしなきゃいけないらしいから、貴族っていうのも面倒くさい。

 ミゲルくんたちやヴィンターさん、ツヴァイくんたち、バナくんはすでに紹介してあるのであとはアッキーたちエルフ組だけだな。

「サクラハラ家使用人のクラウス・ビューナーと申します」

 エミールくんを見た時の動揺が嘘かのように落ち着いた様子で恭しく礼をする。

「ユニコロメドです」

 ユニさんも鷹揚に頷く。

 さて、これで顔合わせは済んだことになるので、本題に……。

 と思ったら、ユニさんの言葉はそこで終わりじゃなかった。
 
「あなたの主人、ハルの恋人です」

「ユニさんっ!?」

 いきなりなに言ってるかなっ!?

「ハル、これはサクラハラ家の使用人である以上、知っておかなければいけないことです」

 いやまぁ、それはそうだけどさぁ。

 僕にも心の準備というものが……。

「それに、彼は知ってますよ、これくらいのことなら」

 ……あー、たしかにクラウスさん平然としてる。

 動揺を隠しているだけって可能性もあるけど、僕のことはユニさんの家じゃ公然の秘密らしいから普通に知ってたんだと思う。

 そういえば、奴隷商さんのお店でも僕の名前聞いただけでユニさんの関係者だって見抜いてたしな。

 まあ、それなら、と思ってたらユニさんがさらに爆弾を投げ込んだ。

「あと、うちの家令とあなたを除いた、この部屋にいるもの……ああ、あと、ドアのところにいたドラゴニュートの全員がハルの恋人です」

「ユニさんっ!!??」

 今この部屋にはユニさんたちを除いて、ミゲルくんたち4人にヴィンターさんがいる。

 そしてドア番をしているノインくん。

 その全てが僕の恋人と聞いてさすがのクラウスさんも眉を上げて驚いていた。

 ……というか、ノインくんにはまだ手出してないし数に入れないでほしい。

 諦めにも似た感情を抱いていた僕だったけど、ユニさんはさらに追撃してきた。

「さらに言うと、ここにいない恋人でドラゴニュートがあと4人にラビィ種の子、うちの弟、あとエルフが2人います。
 エルフ2人は突然部屋の中に来たりしますが、失礼の無いようにしてください」

 ユニさんの話を聞いて今度は目をむいて驚いているクラウスさん。

 ……もう好きにして。

 僕にはプライバシーというものはないようだ。

 いやまあ、それも知っといてもらわないといけないことだけどさぁ。

 アッキーとミッくんなんかは機嫌損ねたらなにし出すかわからないし。

 スレイくんだって…………ん?

「ユニさん、スレイくんは流石に入れちゃまずいんじゃないかな?」

「私的にはアリです」

 笑顔で言うユニさん。

 そっかー……アリなんだぁ……。

 僕の自制心が試されている。

「とにかく、この場にはハルの、ひいてはエミールの味方しかいません。
 遠慮はしなくていいですからね」

 優しい笑顔をクラウスさんに向けているユニさん。

 な、なるほど、それを言いたかったのか……。

「うん、僕は……いや、僕たちみんな、エミールくんの味方のつもりです。
 だから、一緒にエミールくんのためにはこれからどうすればいいか話していきましょう」

 僕もできるだけ優しい笑顔でクラウスさんに微笑みかけた。

「…………ありがとうございます」

 クラウスさんは、頭を深々と下げてしばらくそのまま肩を震わせていた。



 落ち着きを取り戻したクラウスさんにもテーブルについてもらって、会議再開。

「最初に念のための確認なんですけど、エミールくん元々あんな子だったりは?」

 本当に念のために聞いてみた僕の言葉に、クラウスさんは黙って首を横に振る。

 だよねぇ。

「あの、馬車の中でも聞きましたが元々はどんな子だったんでしょう?
 クラウスさんの率直な感想でいいです」

 クラウスさんは、少しの間考えをまとめるように沈黙してから口を開く。

「聡明でお優しいお方でしたが、1番に感じるのは明るく元気という印象でございましょう。
 元気が良すぎてやや乱暴といえる面もありましたが、親分気質とでも言いましょうか、小さい子供などの面倒を見るのが好きな大変お優しいお方でございました」

 やっぱり、クラウスさんの言う子と今のエミールくんはとても同一人物とは思え無いなぁ。

 少なくとも、今のエミールくんからは明るく元気って印象は一切ない。

 分かってはいたけど、あまりの変わりようにみんなで顔を見合わせてしまう。

「ありがとうございます。
 僕たちはエミールくんをお預かりする以上、なんて言いますか……元気になってほしいと思ってます。
 そのためにもぜひともクラウスさんもお力添えをお願いします」

「もちろんでございます。
 サクラハラ家使用人としても、元スカルドーニ家家令としても出来ることは何でもさせていただきます」

 そう言って、深く頭を下げるクラウスさん。

「それじゃ、まずスカルドーニ家でのエミールくんのことを色々とお聞きしたいのですが……」

 元気だった頃のエミールくんの話を聞いて、それをもとに今後の方針を決めて……。

 会議は夜更けまで続いた。
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