夜空に触れたその日から、私は魔法少女だった

カエル帽子

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第1章

夜空に触れたその日から②

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目を覚ますと、千尋は自分がどこにいるのか分からなかった。足元は柔らかな草に覆われ、薄暗い闇が周囲を包み込んでいる。夜の静けさが深まる中、かすかに星が瞬いていた。しかし、それは現実の夜空よりも遥かに神秘的で、冷たい輝きだった。

「ここは…どこ…?」

ぼんやりとした意識の中で呟いたその声は、まるで霧の中に消えてしまうようだった。そのとき、不意に頭の中に低く響く声が聞こえた。

「君に与えられた力は、運命を変えるためのものだ」

声は冷ややかで機械的だったが、どこか重々しい響きを持っていた。姿は見えないが、その存在が彼女をじっと見つめている気配がする。声の主が誰なのかもわからないまま、千尋は言い知れぬ恐怖と不安を感じていた。

そのとき、視界の端に「何か」が現れた。それは人間の姿ではなく、ぼんやりとした淡い光を纏った、不定形な影のような存在だった。形を持たないそれは、まるで周囲の闇に溶け込みながらも、独特な威圧感を放っている。

「君が望むなら、力を授けよう」

声が再び響いた。ノクス──彼はそう名乗りもせずに、ただ淡々と「契約」を求めてくる。その存在は、現実から遠く離れた別の次元から彼女に語りかけているかのようで、人間らしさの欠片もなかった。

「君にとって、この力は運命に挑むためのものだ。ただし、その代償を払う覚悟があるのならば、だが」

ノクスの言葉には冷たい響きが宿っていたが、千尋はその声に不思議と惹かれるものを感じた。何もかもが異質で、どこか現実離れしたその存在に、自分を預けてみたいという思いが、心の奥底で芽生え始める。

「……わかった、私にその力を」

自分でも理解できない衝動に駆られ、千尋は無意識にその声に応えてしまう。すぐに、彼女の体が柔らかな光に包まれ、冷たい闇の中に浮かび上がった。まるで、自分の中に眠っていた何かが目覚めるかのような感覚が体を満たしていく。

「これで契約は成立だ。これから君は、運命に挑む存在となるだろう」

ノクスの声が最後に響いた瞬間、千尋の中で新たな力が解放された。
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