Beyond the Soul ~魂の彼方へ~ ライトノベルリファイン

ぐれおねP

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序章:夜が明けない街で

第7章 終幕

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夜風が、冷たく頬を撫でた。
風の向こうには、街の明かりが遠く瞬いている。
でも、あの明かりはもう――帰る場所ではなかった。

あんずとありさは、歩いていた。
地面にはまだ、焼けた血の匂いが残っている。
その匂いに混じって、焦げた鉄の香りも漂っていた。

あんずが小さく呟く。

「……ねぇ、ありさ。さっきの“あの人”、何者だったんだろうね」

「わからない……でも、あの人がいなかったら、今ここにいない」

「……そうだね」

二人は言葉を失い、しばらく黙って夜道を歩いた。
それぞれの胸に、違う痛みと決意を抱えたまま。

やがて、街の外れ――小さな公園にたどり着く。
ブランコがひとつ、風に揺れていた。
その音が、妙に懐かしかった。

「……ここ、覚えてる?」

ありさが微笑む。

「小学校の帰りに、よく寄ってた場所。
 あんずが靴を脱ぎ捨てて、全力で走って――泥だらけになってた」

「や、やめてよぉ、それ言う?」

「ふふっ、懐かしいでしょ」

二人の笑い声が夜に溶ける。
それはほんの短い時間だったけれど、確かに“日常”の欠片だった。

ふと、ありさが空を見上げた。
黒い雲が少しだけ裂け、星がひとつ覗いていた。

「ねぇ、あんず。……私ね、まだ怖いよ」

「……うん。私も」

「でも、逃げない。
 あの先生がくれた力を、ちゃんと使いたい」

あんずは頷く。

「じゃあ、私も支える。
 あんたが倒れそうになったら、絶対に立たせてやる」

「……ありがとう、あんず」

「なに言ってんの、当然でしょ。
 ――だって、親友だもん」

ありさは、そっとポケットから何かを取り出した。
――それは、あの警官の形見。
壊れた腕時計。

「……止まってる」

「でもね、また動かす。
 “時間”を、取り戻すために」

あんずが微笑む。

「いい言葉だね。
 ――時間も、夜も、私たちが取り戻す」

二人は見つめ合い、拳を軽く合わせた。

「よし。
 じゃあ……もう泣かない。
 私たち、これから戦うんだ」

「うん、“邪滅聖魂”の名にかけて」

そのとき、遠くの空がかすかに白み始めた。

夜は、完全に明けていない。
でも、確かに――“朝”の匂いがした。

闇の中に一筋の光。
希望は、確かにそこにあった。
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