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あなたのことは、きらいです。
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しおりを挟む美味しそうないい匂いがしてきた。
「お腹、すいたな……」
昨日は色々あって食欲が無く、あまりご飯を食べれなかった。
少しだけ、少しだけユンコーン男の料理を見に行こうかな。もしかしたら、味見とか出来るかもしれないし。
お腹が空き過ぎて、私はこの美味しそうな匂いの誘惑に勝てなかった。
少しだけ、少しだけ。少し覗くだけ。
そう心の中で呟き、私はユニコーン男の元へと向かった。
「……美味しい料理作って、ゆずみちゃんの胃袋を掴むぞ~」
――なんか呟いている。
来なければ良かった。 そう一瞬思った。
「ん?……ゆずみちゃん?どうしたの?大丈夫だよ。僕、ゆずみちゃんの為にちゃんと美味しいの作るからね」
「お、お願いします」
「うん。お兄さんに任せなさい!今まで食べたことがないくらい美味しいものを作るからね」
フライパンと箸を上手に揺らし、嬉しそうに料理をしている。
「ゆずみちゃん?そんなに見つめてどうしたの?」
「……凄く、凄く美味しそうだなぁと思って……そ、それで」
少し食べたい。なんて言えない……。
「ありがとう。美味しそうって言ってくれて、とっても嬉しいなぁ……そうだ、少し食べる?」
透き通る青のガラス細工のような瞳が私に優しく誘惑をする。
朝に見る彼の瞳は、碧色に見える気がする。
「……少しだけ、食べてもいいですか」
「もちろん」
綺麗なガラスの窓から光が差し、美しいツノが綺麗に輝いていた。
「どうぞ」
そう言って、ユニコーン男はふわふわの卵焼きを少し箸で切り、私の口の近くへと持っていき、「はい、あーん」と言った。
私はびっくりして少しだけ体を後ろにそらした。
「ゆずみちゃん。ほら、あーん」
ユニコーン男の綺麗な碧の瞳が早く、そう言っているみたいだった。
私は唾を飲み、口を開いた。
「いい子」
ユニコーン男は碧い瞳を柔らかく細め、
優しく私の口へと卵焼きを運ぶ。
「どうかな?美味しい?」
――これは!
「……美味しいです!」
思わず笑顔になる。
ふわふわでほわほわ。厚めの卵が口内を優しく包み、噛むと口いっぱいに優しくて、まろやかなダシと旨味が埋め尽くす。
こんなに美味しい卵焼きは初めて食べた。
――本当に、幸せだ。
頬が自然と緩む。
「あはは、凄く可愛い顔をしてるね ゆずみちゃん。嬉しいな、心を込めて作った甲斐があったよ」
「……本当に美味しかったです。」
あまりにもユニコーン男が綺麗に笑うので、恥ずかしくなり、自分の手のひらを右の人刺し指で数回ほど優しく掻いてから私は、照れた顔を隠すように下を向いた。
「朝ごはん、卵焼きにソーセージ、サラダと白米に、お味噌汁。なんて、定番らしい物なんだけど、僕はやっぱり朝ごはんと言ったらこのメニューな感じがするな。定番こそ最強、そんな気がするんだ」
「美味しいです」
確かに朝ごはんと検索したら出てきそうな感じの定番のメニューだ。
でも、どれを食べても本当に美味しくて、とても優しい味がした。
――このユニコーン男、森から出ることあるのかな。
野菜など庭で手に入りそうな食料は庭から採ったのだろうという事が分かる。
でも、肉や味噌などはどうやって手に入れたのだろう?まさか、手作り?
「なーに考えているの?ゆずみちゃん。ほらほら、沢山食べて!せっかくのご飯が冷めちゃう前にさ!」
「あっ、はい」
箸を止めて考え事をしていると、不満そうな顔と声で私にユニコーン男は箸を向けた。
……この男、人に箸を向けるなと習わなかったのだろうか。
なんてことを思いながら、私はまた自分の箸を動かした。
「よろしい」そう言って、ユニコーン男は満足そうにうなずき、唇を緩く動かし笑っていた。
少しだけ、少しだけだけど、味噌汁を飲むと心が落ち着くな。
「お味噌汁いいでしょう。僕ね、最近初めて飲んだんだけど、この何とも言えないコクが結構良くて、すっかり気に入っちゃった」
――馬なのに、味噌汁とか肉とか食べるんだ。
「ゆずみちゃん今ヘンなこと考えたでしょ……この姿ならね、食べれるよ。人間と同じ物。君と同じ物を、同じ姿で、一緒に食べれて、僕とっても嬉しいな」
一瞬だけ寂しそうな表情をした後、嬉しそうに、幸せそうに歯を軽く見せて笑うので、
私はどう反応したらいいのか分からなくなった。
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