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あなたのことは、きらいです。
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しおりを挟む先ほどの馬男の舌の感触を覚えているのか、心臓がバクバクと大きな音を出していた。
「目を舐めるなんて……」
あの男ヤバイ。
あの後、私は少しの間フリーズをしてから、目、洗わないと。 突然そう思ってふらふらと洗面所へ歩いた。
「朝より疲れた顔してる」
朝見た自分の顔より、疲れで少しだけ老けて見えた。
あの男に対する気持ちは今のところ恐怖心より、あの男を怒らせると眼球を舐められる。
そんな気持ちで心の中がいっぱいだった。
目、もう二度と舐められたくないし怒らせないようにしよう。
そう決意をして、洗面所から出た。
「ゆずみちゃん、お茶でも飲みながら話そう。僕、君に聞きたい事があるんだ」
「あっ、はい」
先ほどの怖いツノは、いつもの綺麗なツノに戻っていた。
――良かった、機嫌直ったみたいで。
絶対に、怒らせないようにしないと。
「ここ、座って待ってて。僕、お茶入れてくるから。大人しく待っているんだよ」
「はい」
怒らせないように、言葉を選んで話し合わないと。
また、目を舐められる。
ユニコーン男の、上手で心地よい鼻歌が聞こえる。
私は、ユニコーン男に目を舐められた時と同じ場所の椅子に座って、言われた通り大人しく待っていた。
しばらくして、「はい、どうぞ」そう言いながらユニコーン男がお揃いの可愛いマグカップを持って私に、一つ手渡した。
「ありがとうございます」
「熱いから気を付けてね。……まぁ僕は、また君が舌を火傷しちゃっても全然嬉しいんだけどね」
「あっ、その」
「そのままアツアツのままグイッと飲んじゃっていいよ。またキス、できるしさ」
「えっと……」
「あはは、ウソウソ。冗談だよ、冗談」
楽しそうに声を出して笑っていたが、私にはそれが冗談に聞こえなかった。
「それでさ、本題なんだけど」
真面目な顔で彼が言う。
太陽の明るさに影響を受け強く光り輝き、彼の綺麗な瞳の宝石が碧に輝く。
螺旋状の白く綺麗なツノがオーロラ色に輝いたような気がして、美しかった。
ふぅ~、落ち着いて私。そう心で自分に話しかけ、「はい」と答えた。
「君さ、なんでこの森に来たの?」
この森に来た理由……。
「美優と、友達と約束をして、それで……」
美優のことを思い出すと涙が出そうだった。
でも、泣いてはだめ。一度泣いてしまったらきっと止まらなくなる。
そして、ここから逃げるという意志が弱くなる。
一度でもこの場所で涙を流してしまえば、頑張って蓋をしていたものがきっと、溢れ出ててしまう。
「それで?」
「そ、それで。ユニコーンが出るから行こうって話になりました」
「その話はどこで聞いたの?」
「学校です。クラスメイトのみんながアレが、ユニコーンが出るって、ユニコーンが居るって噂をしていました」
「その噂、いつ頃から広まったとか覚えてる?」
「今年の、秋に入った頃だと思います。たぶん」
「なるほどね。ありがとう」
……よかった。怒らせることなく無事に終わったみたい。
結局この人何が知りたかったんだろう。
「助かったよゆずみちゃん。やっぱり、噂になっているんだね……こっちも色々迷惑していてね。せっかく穏やかに暮らしてたのに、って感じでさ」
「す、すみません」
何だか少し悪い気持ちになってしまった。
そっか、私たち人間が勝手に噂して、広めてしまったから、きっと迷惑かけたよね。
悪いこと、してたんだ私。
「ゆずみちゃんは、気にしなくていいよ。こうやって僕の元へ来てくれたんだし」
来たくて来たわけじゃないんだけど。
「だから気にしないでね、本当に大丈夫だから」
哀しそうに、綺麗な碧い瞳が揺れた。
今にでも壊れそう。
哀しそうで、孤独のツノ。
彼のツノを見て今はそう思った。
本日に辛く哀しそうで、寂しそうで、辛そうな顔をしたので、気にしないでそう言われたが、どうしてもユニコーン男のことを無意識に気にしてしまっていた。
知らないうちに悪いことをしていた。
その感情が私の心を、少しずつ少しずつ蝕んでいくようだった。
私は罪悪感が芽生えてしまい無意識に、少しでも彼の力になれたら。
なんてことを思い始めていた。
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