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「アメリー、また綺麗になったな」
そう言って、アメリーの手を取ろうとするのを、さっと避ける。
「他の女に服飾品を買い与えるなんて、夫人がどう思うか分からないの?」
怒りの滲んだ低いアメリーの声に動揺することもなく、アレックスは続ける。
「…どうとも思わないよ。そんなものだろう。もう子も3人産まれて、貴族としての務めは果たしてる。彼女も自由にすごしてる。」
アメリーは、自分の心の奥で憧れていた結婚というものの虚構を突きつけられたようで、目を見張らずには居られない。
「嫡男の仕事は果たした。…それなら俺はアメリーに声をかけてもいい筈だ」
「何を…」
アレックスの思ったよりも悲痛な声が、久々の再開だというのに当時を思わせた。
アレックスと付き合っていた頃も、アメリーはセドリックの恋人期間のように、周りから圧力をかけられていた。
アメリーも若かったゆえに、それを撥ねつける力を持たず、アレックスに当たるように過ごしてしまう。
そうしている内に、アレックスと今の夫人との婚約が締結され、それから恋人として会う事はなかった。
アレックスは王宮の侍従として働いていたため、何度か顔を合わせてしまったが、その度に申し訳なさそうにするアレックスを、アメリーは疎んでしまった。
…何年も前に、強制的に終わった恋はアレックスの中で消化できずにいたのだろうか?
(そうだとしても…)
「…ブルート子爵、お声掛けありがとうございます。…ですが、私は買っていただきたいと思っておりません。」
「…アメリーやめてくれ。他人行儀は沢山だ。あの時だって、贈りたいと願っていた。どうか叶えてほしい。それで、俺の…」
アメリーの冷たい声に、アレックスは感情露わに詰め寄ってくる。
その当時、アレックスが何が欲しかったのか、今になってようやく分かってもアメリーには応える気持ちがもうない。
詰め寄り、両肩を掴もうと伸ばされたアレックスの手を、撥ねつけるようにバシッと振り払う音がした。
「私の恋人に、無体を働かれては困ります。ブルート殿」
身構えていたアメリーの目の前に、焦がれてやまなかった背中が見えた。
「セド…?」
「ロバーツ…ッお前ッ、別れたんだろうが!?どけ!」
アレックスの苛立った声など歯牙にもかけずセドリックはため息をつく。
「既婚者が何を喚いてらっしゃるのか。…あと、別れてなどおりません。」
セドリックのはっきりとした声を受けて、『えっ!?』とアメリーとアレックス両名が驚きの声をあげる。
ピクッとセドリックの耳が動くと、アメリーに腕を伸ばして胸に隠した。
久々のセドリックの匂いにクラクラとしながら、アメリーは恐る恐る上を見上げる。
「…アメ?別れたって?俺は何も聞いてないし、了承してないけど…?」
セドリックの聞いた事のない恐ろしい声音に、アメリーは背中に冷や汗をかく。
「え?セド…だってあの最後の日…」
「最後の日…?最後に会った日ね?訂正して。」
「最後に会った日…」
謎のこだわりを見せるセドリックは抱きしめる腕の力を静かに上げた。
「別れたと言っているじゃないか!未練がましい奴め!」
アレックスがセドリックの後ろで盛大なブーメラン発言を繰り出しているが構っていられない。
なんたって頭上の元(?)恋人の冷気が尋常じゃない。
穏やかなセドリックに怒鳴られたことすらないアメリーは異常に怯えていた。
「セド…?」
「俺といる時以外は、その髪型しないでって…言ったよね?おしおきだなぁ…」
「せど…??」
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