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第七章:『闇乃宮五ノ闘戯場/黒雷武神ナルカミノミヤ』
【第50話】
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「これが、ヤミノミヤノミコト、ルイの力……」
五武神ミズノミヤ様により創生召喚された水巨人・清水ノ淑女(しみずのしゅくじょ)の胸まで一気に飛翔しミズノミヤ様の護衛として共に立つ茜。
魔力・体力回復促進効果のある神水内でぐったりとして意識を失っているナルカミノミヤの左胸から引き抜かれ、水球に包まれて目の前を漂う瘴封刃サカサが放つ異質で禍々しく、生物本能的恐怖を逆立てる『闇』そのものな魔力を前に形容する言葉を探すものの小学生並みの感想しか出てこない。
「うむ、御鐵院よ己の風エレメント加護は大丈夫であるな? いまよりこれを我が神水から取り出し力の再封印を施す……気を抜くでないぞ」
ミズノミヤ様の本気の警告抜きでその危険性を察していた茜はエレメントプラス・ウインドを自身に重ね掛けしつつ神紋弓に風エレメント矢を生成。
モノがモノとは言えマヨイガ神紋使いとしていざと言う時には破壊も辞さない覚悟で身構えつつ黙って頷く。
「よき覚悟じゃ、御鐵院の娘よ……はあっ!!」
瘴封刃サカサを覆う鞘となる水球が消滅した瞬間、全身に鉄球を叩きこまれたかのような魔力重衝撃にどうにか踏みとどまる茜。
「ぬうっ!!『水神技:清水ノ魔祓(しみずのまばらい)』
茜と同じく吹き飛ばされかけたミズノミヤ様は両手を銅剣にかざし、魔力注入による浄化と再封印を開始する。
「ぐっ……ぎぎぎ!!」
それに抗うかのように最初の一撃に続いて幾重にも連発で襲い来る魔力重衝撃に歯を食いしばり、エレメント矢の狙いを維持する茜。
(こんな酷い顔を探さんに見られなくて良かった……)
そんな戦場にふさわしくない邪念を振り払いつつ破魔の氷で覆われ始める短剣を睨んでいたその時だった。。
「みてつ、いん……」
「ナルカミノミヤ!? もう意識が戻ったのか!! もうすぐで終わりじゃ、安静にしておれ」
そんな中、どうにか意識を取り戻したナルカミノミヤのか細い声に気づいた2人は仲間の無事を喜びたい気持ちを押さえつつ封印を続行する
「う、うえ…… うて」
水中で回復体位のまま必死に上を指さす瀕死のナルカミノミヤ。
「上?」
『ウチの目があ!! 目がああああ!!』
『ボクの目は ポリ○ンフラ○シュだあああ!!』
『鬼の目に閃光かよおおお!!』
巨大な黒銅鏡が設けられた闇乃宮最深部、ヤミノミヤノミコトこと死巫女ルイが座する神乃間。
黒銅鏡が映し出す箱庭世界内、巨大な水乙女像の胸上で特級呪物の力を祓うミズノミヤ様、その護衛である茜が上を向いて恐怖に顔を歪めた瞬間、定点カメラは一気に距離を取るようにズームアウト。
何もない白い空間に浮かぶ闘戯場たる仙境箱庭上に出現した巨大な黒魔力球はコンマ数秒もおかずに黒雷が際限なく降り注がせ始め、銅鏡内の仙境箱庭全体がその強烈な閃光で埋め尽くされる。
「探さん!! タケルにエミ!! ゼドさん!! 須田丸君!! 御鐵院さん!!」
この期に及んでもおふぎけキャラに徹する人魂英里子とゴブガミ神魂、式神フウの虫かごをお手玉シェイクで黙らせた美香は座敷牢の格子を掴んで皆の名を叫ぶ。
『ほほほ、これはこれは……まさかこのような派手な最期になるとはのう。
庫怨剣サカサそのものを取り込み、全自動永久攻撃機関と化した闇の雷エレメント魔力塊に倒されるとはわらわも予想しておらぬかったわい……己の一族郎党らの最期に見合えず残念で会ったな、サンよ」
黒閃光を前にほくそ笑むヤミノミヤノミコトは座敷牢内の神魂封篭に目を向ける。
『そうね、ルイ。 いまさらだけどこの件は私達だけで決着をつけるべきだわ。
私の力でもののふ達に授けた神紋とマヨイガ紋のみならず、深く関わった7人全員の記憶も消去して全てを無かった事として日常に帰らせ……私と五武神、その眷族は総員無条件降伏し、いかなる要求にも応じましょう』
『……ふむ、いかなる要求にも応じるとまでいうか、悪くはない話ではあるが』
『ヤミノミヤノミコト殿、私チノミヤノミコトも五武神長としてお頼みもうします。
オカルト研究会マヨイガ探索隊と雲隠家の双子らは私たちの所業による被害者でございますが故……お許し願えますでしょうか?』
『ううむ、そこまで言われてはのう……ほほほ、どうしたものか』
この戦で勝利の暁にはまずはサンの加護を受けた人のもののふ達を辱めて甥り者にしてやろうと考えていたが、苦痛を与えると言う意味ではそれも悪くはあるまい……死巫女ルイは思わず舌なめずりする。
『よかろ……』
「待ちなさいよ」
轟雷に晒される家族と戦友に涙するばかりだったはずが修羅の圧を纏った美香。
『エレメントプラス・アイス』
『美香!?』
詠唱と共に美香が掴んでいた座敷牢格子は氷に覆われた氷塊化。
格子棒をそのまま握り漬してへし折った美香は座敷牢を抜け出し、闇乃宮の主として上座に座るルイにつかつかと向かって行く。
【第51話につづく】
五武神ミズノミヤ様により創生召喚された水巨人・清水ノ淑女(しみずのしゅくじょ)の胸まで一気に飛翔しミズノミヤ様の護衛として共に立つ茜。
魔力・体力回復促進効果のある神水内でぐったりとして意識を失っているナルカミノミヤの左胸から引き抜かれ、水球に包まれて目の前を漂う瘴封刃サカサが放つ異質で禍々しく、生物本能的恐怖を逆立てる『闇』そのものな魔力を前に形容する言葉を探すものの小学生並みの感想しか出てこない。
「うむ、御鐵院よ己の風エレメント加護は大丈夫であるな? いまよりこれを我が神水から取り出し力の再封印を施す……気を抜くでないぞ」
ミズノミヤ様の本気の警告抜きでその危険性を察していた茜はエレメントプラス・ウインドを自身に重ね掛けしつつ神紋弓に風エレメント矢を生成。
モノがモノとは言えマヨイガ神紋使いとしていざと言う時には破壊も辞さない覚悟で身構えつつ黙って頷く。
「よき覚悟じゃ、御鐵院の娘よ……はあっ!!」
瘴封刃サカサを覆う鞘となる水球が消滅した瞬間、全身に鉄球を叩きこまれたかのような魔力重衝撃にどうにか踏みとどまる茜。
「ぬうっ!!『水神技:清水ノ魔祓(しみずのまばらい)』
茜と同じく吹き飛ばされかけたミズノミヤ様は両手を銅剣にかざし、魔力注入による浄化と再封印を開始する。
「ぐっ……ぎぎぎ!!」
それに抗うかのように最初の一撃に続いて幾重にも連発で襲い来る魔力重衝撃に歯を食いしばり、エレメント矢の狙いを維持する茜。
(こんな酷い顔を探さんに見られなくて良かった……)
そんな戦場にふさわしくない邪念を振り払いつつ破魔の氷で覆われ始める短剣を睨んでいたその時だった。。
「みてつ、いん……」
「ナルカミノミヤ!? もう意識が戻ったのか!! もうすぐで終わりじゃ、安静にしておれ」
そんな中、どうにか意識を取り戻したナルカミノミヤのか細い声に気づいた2人は仲間の無事を喜びたい気持ちを押さえつつ封印を続行する
「う、うえ…… うて」
水中で回復体位のまま必死に上を指さす瀕死のナルカミノミヤ。
「上?」
『ウチの目があ!! 目がああああ!!』
『ボクの目は ポリ○ンフラ○シュだあああ!!』
『鬼の目に閃光かよおおお!!』
巨大な黒銅鏡が設けられた闇乃宮最深部、ヤミノミヤノミコトこと死巫女ルイが座する神乃間。
黒銅鏡が映し出す箱庭世界内、巨大な水乙女像の胸上で特級呪物の力を祓うミズノミヤ様、その護衛である茜が上を向いて恐怖に顔を歪めた瞬間、定点カメラは一気に距離を取るようにズームアウト。
何もない白い空間に浮かぶ闘戯場たる仙境箱庭上に出現した巨大な黒魔力球はコンマ数秒もおかずに黒雷が際限なく降り注がせ始め、銅鏡内の仙境箱庭全体がその強烈な閃光で埋め尽くされる。
「探さん!! タケルにエミ!! ゼドさん!! 須田丸君!! 御鐵院さん!!」
この期に及んでもおふぎけキャラに徹する人魂英里子とゴブガミ神魂、式神フウの虫かごをお手玉シェイクで黙らせた美香は座敷牢の格子を掴んで皆の名を叫ぶ。
『ほほほ、これはこれは……まさかこのような派手な最期になるとはのう。
庫怨剣サカサそのものを取り込み、全自動永久攻撃機関と化した闇の雷エレメント魔力塊に倒されるとはわらわも予想しておらぬかったわい……己の一族郎党らの最期に見合えず残念で会ったな、サンよ」
黒閃光を前にほくそ笑むヤミノミヤノミコトは座敷牢内の神魂封篭に目を向ける。
『そうね、ルイ。 いまさらだけどこの件は私達だけで決着をつけるべきだわ。
私の力でもののふ達に授けた神紋とマヨイガ紋のみならず、深く関わった7人全員の記憶も消去して全てを無かった事として日常に帰らせ……私と五武神、その眷族は総員無条件降伏し、いかなる要求にも応じましょう』
『……ふむ、いかなる要求にも応じるとまでいうか、悪くはない話ではあるが』
『ヤミノミヤノミコト殿、私チノミヤノミコトも五武神長としてお頼みもうします。
オカルト研究会マヨイガ探索隊と雲隠家の双子らは私たちの所業による被害者でございますが故……お許し願えますでしょうか?』
『ううむ、そこまで言われてはのう……ほほほ、どうしたものか』
この戦で勝利の暁にはまずはサンの加護を受けた人のもののふ達を辱めて甥り者にしてやろうと考えていたが、苦痛を与えると言う意味ではそれも悪くはあるまい……死巫女ルイは思わず舌なめずりする。
『よかろ……』
「待ちなさいよ」
轟雷に晒される家族と戦友に涙するばかりだったはずが修羅の圧を纏った美香。
『エレメントプラス・アイス』
『美香!?』
詠唱と共に美香が掴んでいた座敷牢格子は氷に覆われた氷塊化。
格子棒をそのまま握り漬してへし折った美香は座敷牢を抜け出し、闇乃宮の主として上座に座るルイにつかつかと向かって行く。
【第51話につづく】
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