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第6章 一蓮托生
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しおりを挟む「おはよう、弥桜。大丈夫か」
翌日、発情自体はすっかり治まっていて体はすっきりしていた。
静先輩と出会ってからの発情期は今までとは比べ物にならないくらい重いんだけど、一晩抱かれた後の翌日にはびっくりするほど余韻もなくすっきりしている。
今まで一週間引きこもっていたのが、静先輩の過保護を含めても三日程度で影響がなくなるようになっていた。
「ん。思ったより大丈夫そう」
今朝もすっかり身体は楽になっていた。
なんだか、気分も今までより少しいいかもしれない。
本当に効果あったのかも、と思いながらも、やっぱりちょっとだけ気になってシャワーを浴びにお風呂に向かった。
そこで羽織ってただけのシャツ一枚を脱ぎ去って浴室に入った時、鏡に映った自分の体が目に入って、身体中静先輩の付けた痕だらけで。
起きた時は大丈夫かもって思ったのに。
目に入った瞬間、今まで以上にひどい嫌悪感に、もう見ていられなかった。
たくさん、たくさん、静先輩に触られた。
体だけじゃない、頭も顔も、中も全部全部触られて、自分からもあんなに手を伸ばして、触った。
「・・・ぁ・・・・・・ぁぁっ、・・・ゔゔ・・・・・・」
急いでシャワーで全身流しながら、とにかくあちこち必死に洗う。
必死に擦って擦ってあちこち赤くなって皮が剥けたけど、それでもちっとも綺麗になった気がしなくて、また体に傷をつけた。
結局痛いだけで何にもなんない。
どうしようもなく嫌で嫌で、頭を抱えてその場に蹲った。
「弥桜、大丈夫か。開けるぞ」
きっとまだそんなに時間は経ってないだろうけど、今の僕がお風呂にちょっとでも長く入ってたら心配になるのだろう。
様子を見に来てくれた静先輩に、返事のひとつも出来なかった。
「・・・・・・やっぱりダメだったか。まぁそう簡単にはいかないな」
体中傷だらけで血まみれの僕を見て、服が汚れるのも躊躇わず抱きしめてくれた。
それから僕がこれ以上気にしなくていいように、出来るだけ明るい口調で声をかけてくれる。
「ゆっくり時間掛けて大丈夫だから。あんま気にしすぎんな」
気持ちが落ち込んで1ミリも自分の体なんか見たくない僕の代わりに、静先輩が傷の手当てをしてくれる。
「この作戦はダメだったな。でも、感覚だけになっていつもより感じてる弥桜には、すげぇ煽られた」
元気付けようとしてくれてるのかは知らないけど、余計なこと言ってくる静先輩に、本当にちょっとだけ心が温かくなった。
でも、全く効果がなかったわけじゃなかった。
考え方や気持ちの面では、静先輩と一緒にいたいって、好きだって素直に思えるようになってたし、口にも出せていた。
それも相まって、洋服さえ着ていれば、普段の普通のふれあいなら、なんとか出来る様にまで戻れた。
静先輩にぎゅって抱きしめられても、体が強張らなくなって素直に嬉しいって思えていた。
だからクリスマスも年末年始もずっとずっと静先輩たちと一緒にいた。
それでも、完治したわけじゃない。
まだまだ素肌に触れられることにはかなり抵抗があるし、こんな状態だから発情期じゃない時期の過剰な触れ合いは出来るだけ避けていた。
それに年が明けてから偶に見知らぬ傷が増えてることがある。
それがどういうことなのか考えたくなくて、いつかは良くなるだろうからと今は見て見ぬ振りをしていた。
そうやって徐々に治っているかのように見えていた。
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