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終章 経営惨憺
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しおりを挟む「そういうことか、なるほどね。そのことについては俺も静から話は聞いてるよ。俺的にはちゃんと理由を話して、それこそ番になっても大丈夫だと思ってるから、そう言ったこともあるんだけど。どうしても静がもう少し様子を見るって言うから、それ以上は余計な口出しをしないようにしてたんだ」
これは静と僕のことだから、2人では何度も何度も話してきた。
その間、静が結永さんに話していたように僕も雅兄に話したりもした。
それでもやっぱり2人のことだから、話を聞いてもらいはしたけど相談をしたことは一度もなかった。
「まぁ俺もあんま人のこと言えないし。弥桜くんが本気で静のこと考えてるのも、だからこそ相当切羽詰まってるのも理解出来るから。今回のこと、俺は全面的に弥桜くんを手助けするよ」
左薬指の指輪に触れながら話す結永さんは、ちょっとバツが悪そうな、だけどとても幸せそうな表情をしていた。
詳しいことはよく知らないけど、結永さんも雅兄と一緒になる時に色々あったみたいなのは何となく知ってるから、そういうこともあって大きく反対されるようなことはないのだろう。
反対されたところで今更後戻りなんか出来ないし突き通すしかないんだけど、それでも最後に背中を押してもらえたのはとても嬉しかった。
「て言っても、俺が出来ることなんてたかが知れてるけどね」
だから明日は静と2人でもう一度受診しに来て、とエコー写真と一緒に診察結果や診断書を封筒に入れて渡してくれる。
「番のことは置いといたとしても、2人の子供のことを静が否定することは絶対ないから。安心して、今日からは何倍も過保護な静を相手にすることになるよ」
そんな結永さんの言葉に、頬が緩むのを止められない。
散々過保護過ぎて逆に可哀想だって言われたこともあったし、少しそうなのかなと考えたこともあった。
けどどんなに過保護だ束縛だ可哀想だ、と言われても僕にはそれのどこがおかしいのか分からなかったし、今だって嬉しくて仕方ない。
「体調だけはほんとに気を付けるんだよ。静が気にしてたことも冗談じゃないんだから」
玄関に見送りに来てもらう最後までしっかり注意を受けた。
「本当に昔から色々とありがとうございます。静のため以上に僕のことまで」
「静に頼まれたってのもあるけど、今じゃ大事な義弟だから」
そう言って優しく頭を撫でてくれる。
けどやっぱり今は静に触れてないから、その感覚も分からない。
初めて自分が無痛症になった時は、あんなに静以外の感覚なんていらないって思った。
けど今はこんなに大事にしてくれる家族がいて、自分も雅兄を結永さんを受け入れられるようになったと思う。
そんな人たちの事が感じられない今の自分が、ちょっとだけ悔しい、と感じていた。
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