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終章 経営惨憺

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「本当に1人で大丈夫?」
「うん。家に帰るだけだし、僕もちょっとはしっかりしなきゃって」

自分の中に生まれた確かな意思を感じながら、ゆっくりお腹に手を伸ばす。
ちゃんとした結果が出て、いよいよ現実味が出てきた。
もう周りに甘えてばかりじゃいられない。

「あんまり無理しすぎないでね」
その言葉と優しい笑顔を背に、病院をあとにした。

やっとちゃんとした結果が出て、僕と静の家族が出来る。
その事実がじわじわと全身に広がってきてすごく嬉しい反面、自分が人の子の親になるという事実に不安を感じないわけがなかった。

静と結婚しようって話になった時、一番の問題は僕の家族だった。
Ωの僕にとても過保護な彼らは、最初は全く静のことを受け入れてはくれなかった。

雅兄には結永さんが話していたり実際に会ったこともあったけれど、その時からずっといい顔はされていなかった。
もちろん両親にも自分たちのよく知らない男にそう簡単に大事な息子はやれない、と追い返されてしまった。

それでも反対されたからと言って僕が静から離れられるわけもなく、自分の現状や静との関係、何より静自身がどれだけいい人で僕を大事にしてくれるかを力説することで何とかお許しを頂けた。

どうやら静の実家のことも大きかったようだ。

次に問題となったのが、まさに静の実家の事だった。
僕がまだまだ特定の場所以外出歩けないせいで、本当に申し訳ないことに直接ご挨拶には行けていないのだが、お義父さんとは電話で話をさせてもらった。

静のご両親はうちとは真逆に、快く僕のことを受け入れてくれた。

2人ともαだと聞いていたから、うちよりも大反対されるものだとガチガチに緊張していたから、その反応にあの時はみっともなくも号泣してしまったんだ。
あのご両親にして静あり、って身に染みて分かった気がする。

だから結婚自体は問題なく進んだんだけど、静と僕がαとΩだということが大きな問題だった。

どうやらお義父さんは大きな会社で社長秘書をしているらしい。
かなり大きな人脈があり、その一人息子には当然のようにお見合い話なども沢山来ていたそうだ。
静には静の人生を、ということでその類の話は早々に断っていたから静の耳には入っていなかったらしいが、そんな静が遂に結婚するとなれば相手のことについて知りたがる者も少なくないだろう。

未だ性の格差やΩの差別も酷く、結婚などは専ら同種同士が当たり前の世の中だった。
そんな中でαがΩを娶った、となるとそれはそれは注目の的になることは明らかだった。

そうしたら次はどこの誰だ、汚い手を使ったんじゃないのか、と根も葉もない憶測が飛び交いはじめる。
下手に隠しておくことも出来なかった。

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