彼と僕の猫事情

薔 薇埜(みずたで らの)

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彼と僕の猫事情

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「叶、僕らこれからどうしようか。どうしたら僕は幸せになれるのかな」

ユイのいない幸せを考えられないカナ。
どうしたらカナは幸せになれるんだろう。

「今は無理してでもどうやったら幸せになれるか考えなきゃいけないけど、無理矢理幸せだって思うのは違う気がする」

無理矢理作ったもので幸せになっても、それはカナが無理してるだけで、本当の幸せじゃない。
それはオレもユイも望んでない。
もうカナが一番幸せになることが出来ないのはわかってる。
だから、ちょっとでいいんだ。
少しだけでも幸せだなって思えるような人生を送って欲しいだけなんだ。

「まずは、日常を過ごせるようになろう。オレたちやること一杯なんだよ。カナ、この家あと2年で離れるって約束してるでしょ。それもどうにかしなきゃいけないし、まず何よりも、ユイのお墓参りに行かなきゃ。・・・・・・もう大丈夫、だよね」

カナはユイが死んでから、一度もお墓参りに行けていない。
お葬式はかろうじてこの家を守るために、無理矢理出たけど、一人でお墓の前に立つことはカナには出来なかった。

今の今まで、ユイが死んだことを、ユイにもう会えないことを受け入れられずにいたんだ。
一番現実を突きつけられる、お墓というものを見れるわけがなかった。

それ以前に、ユイの命日はカナが動けなくなる。
ユイが自分の前から居なくなった日。
今度はオレが居なくなるんじゃないかと、恐ることをやめられないでいる。

前日の夜にオレを抱き込んで布団に潜ると、それから24時間、ユイの命日が終わるまで一切布団から出ない。

この日、カナは何よりも電話と人の訪問を恐る。
あの日、カナにユイが死んだことを告げた電話。
あの日、ユイが死んだことを受け止め切れずにパニックを起こしたカナの元へやってきた救急隊員。
また、あの日を繰り返すことを何よりも恐れて動けなくなる。

電話が鳴る度びくびくと身体を震わせ、運悪く人が訪問したことを告げるチャイムが鳴った日には、いやだいやだと、耳を塞ぎ叫び続ける。
一日中、ユイのいない現実にうちのめされるように、泣き続ける。

オレはそんなカナの姿を腕の中から見ていることしか出来なくて辛かった。
だから次からはオレが抱き締めてあげるんだ。
大丈夫だよって、オレはちゃんとここにいるよって。
あとは、ゆっくり、でもちゃんと、ユイの死を受け入れていけばいい。

まずはその第一歩として、現実を見なければいけない。
しっかりお墓の前に立って、ユイはここに眠っているんだと、もう会うことは出来ないのだと、見に刻まなきゃいけない。

「そうだね。僕の都合で随分待たせてしまったから、そろそろ行ってあげないと、唯叶が拗ねちゃうな」

叶がいるから大丈夫、と少しは前向きに考えてくれてるようだ。

これで漸く前に進めるようになった。

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