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嫉妬と諦め
「コンラッド殿下っ。今、少しだけよろしいですか?」
あの剣術大会から1週間。学園の放課後、帰宅直前のコンラッド殿下に話しかけました。
この学園は15歳の貴族子女が通う王立学園です。私と殿下は学園の1年生です。スカイラー様とダビネは1歳下のため学園にはいません。2人の入学は2ヶ月後です。
殿下の脇にはスカイラー様とは別の側近、魔法師団長の次男モーリス様がいらっしゃいます。
「何かな」
私より頭一つ以上に背の高い殿下は、何の感情も読み取れない目でこちらを見下ろし、要件を促します。私から声をかけた時、1年前までだったら、マロリーと名前を呼び、淡い笑顔で答えてくれていたのに。殿下の背が伸び目線がさらに上がったとはいえ、こんなにも無の表情で見下ろされたことはありませんでした。
この1年の変化とはいえ未だに冷たくされることに慣れない私は、殿下に対してオロオロとしてしまうようになりました。
「あっあのっ、そろそろ毎年恒例だったマーガレットのお茶会だと思ったのです。いつもなら王妃様へ朗読する詩を決めている時期「あなたは招待されていないよ」だから……」
マーガレットのお茶会とは、毎年2月、王妃様の好きなマーガレットが満開の時に開くお茶会です。王妃様が選んだ親しいひとしか招待されないそのお茶会。コンラッド殿下と私は、毎年余興として、2人で詩を朗読しておりました。
7歳から毎年、1月になると殿下と詩を選び詩の読み合わせをするのを楽しみにしていいました。もう2月に入ったというのに詩の選定をしていなかったので、どうするのかと殿下に聞きにきたのです。
「っ!そ、そうなのですね」
招待されていない。私は招待されていない。招待されないなんて考えもしてなかった。
つまりこの状況は王妃様も認めているということ。最近の殿下の変化を受け、なぜ今年も変わらず招待されると思い込んでいたのでしょう。
「もういいかな」
殿下はそう言い、無言でこちらを伺っていたモーリス様を連れ行ってしまいました。
昨年のお茶会ではモーリス様がおすすめしてくれた詩を朗読したのでした。朗読の練習中、「もうすぐ始まる学園でうまく過ごせるか不安」と言った私へ、殿下は「私やモーリスがいるから大丈夫」と言ってくれたのです。学園の入学直前、ガネス家にダビネが現れたことで、その言葉は無かったこととなりました。
お茶会に呼ばれていないショックからぬけ出しやっと帰宅した私は、王家の馬車に気づきました。まさか、と思いながらはやる足を動かし、気づかれないようにひっそりと応接スペースそ覗くと、同じソファへ座り肩を寄せ合いながら詩を朗読しあう殿下とダビネがいました。
容姿端麗な2人のその姿はまるで絵画のよう。仕事の手を止めうっとりと眺める使用人が出るほどです。
愛の詩に照れながらたどたどしく朗読するダビネを、殿下は慈しむ様な目で見ております。
去年まではそこに私がいたのに!なぜ?なぜ?と激しい嫉妬心がぐらぐらと煮詰まり、おかしくなりそうです。
ダビネの朗読が終わり、次はコンラッド殿下の最近さらに低く響くようになった声が聞こえてきます。その声に被せる様に私の頭の中へ「本当にここが去年まで自分の場所だったと思ってるのか?」という声が聞こえてきました。
わかってます。私はあの場所にいたことなんてない。私とコンラッド殿下は同じソファに座ったことなんてない。肩を寄せ合うなんてしたことない。愛の詩なんて選んだことない。あんな楽しそうな顔で詩を読む姿なんて見たことない。
私がコンラッド殿下と過ごした7歳からの思い出と、ダビネが殿下と過ごしたこの1年、どちらが殿下の心を占めているのかなんて一目瞭然。
今更嫉妬してもしかたないのです。
あの剣術大会から1週間。学園の放課後、帰宅直前のコンラッド殿下に話しかけました。
この学園は15歳の貴族子女が通う王立学園です。私と殿下は学園の1年生です。スカイラー様とダビネは1歳下のため学園にはいません。2人の入学は2ヶ月後です。
殿下の脇にはスカイラー様とは別の側近、魔法師団長の次男モーリス様がいらっしゃいます。
「何かな」
私より頭一つ以上に背の高い殿下は、何の感情も読み取れない目でこちらを見下ろし、要件を促します。私から声をかけた時、1年前までだったら、マロリーと名前を呼び、淡い笑顔で答えてくれていたのに。殿下の背が伸び目線がさらに上がったとはいえ、こんなにも無の表情で見下ろされたことはありませんでした。
この1年の変化とはいえ未だに冷たくされることに慣れない私は、殿下に対してオロオロとしてしまうようになりました。
「あっあのっ、そろそろ毎年恒例だったマーガレットのお茶会だと思ったのです。いつもなら王妃様へ朗読する詩を決めている時期「あなたは招待されていないよ」だから……」
マーガレットのお茶会とは、毎年2月、王妃様の好きなマーガレットが満開の時に開くお茶会です。王妃様が選んだ親しいひとしか招待されないそのお茶会。コンラッド殿下と私は、毎年余興として、2人で詩を朗読しておりました。
7歳から毎年、1月になると殿下と詩を選び詩の読み合わせをするのを楽しみにしていいました。もう2月に入ったというのに詩の選定をしていなかったので、どうするのかと殿下に聞きにきたのです。
「っ!そ、そうなのですね」
招待されていない。私は招待されていない。招待されないなんて考えもしてなかった。
つまりこの状況は王妃様も認めているということ。最近の殿下の変化を受け、なぜ今年も変わらず招待されると思い込んでいたのでしょう。
「もういいかな」
殿下はそう言い、無言でこちらを伺っていたモーリス様を連れ行ってしまいました。
昨年のお茶会ではモーリス様がおすすめしてくれた詩を朗読したのでした。朗読の練習中、「もうすぐ始まる学園でうまく過ごせるか不安」と言った私へ、殿下は「私やモーリスがいるから大丈夫」と言ってくれたのです。学園の入学直前、ガネス家にダビネが現れたことで、その言葉は無かったこととなりました。
お茶会に呼ばれていないショックからぬけ出しやっと帰宅した私は、王家の馬車に気づきました。まさか、と思いながらはやる足を動かし、気づかれないようにひっそりと応接スペースそ覗くと、同じソファへ座り肩を寄せ合いながら詩を朗読しあう殿下とダビネがいました。
容姿端麗な2人のその姿はまるで絵画のよう。仕事の手を止めうっとりと眺める使用人が出るほどです。
愛の詩に照れながらたどたどしく朗読するダビネを、殿下は慈しむ様な目で見ております。
去年まではそこに私がいたのに!なぜ?なぜ?と激しい嫉妬心がぐらぐらと煮詰まり、おかしくなりそうです。
ダビネの朗読が終わり、次はコンラッド殿下の最近さらに低く響くようになった声が聞こえてきます。その声に被せる様に私の頭の中へ「本当にここが去年まで自分の場所だったと思ってるのか?」という声が聞こえてきました。
わかってます。私はあの場所にいたことなんてない。私とコンラッド殿下は同じソファに座ったことなんてない。肩を寄せ合うなんてしたことない。愛の詩なんて選んだことない。あんな楽しそうな顔で詩を読む姿なんて見たことない。
私がコンラッド殿下と過ごした7歳からの思い出と、ダビネが殿下と過ごしたこの1年、どちらが殿下の心を占めているのかなんて一目瞭然。
今更嫉妬してもしかたないのです。
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