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ところ変われば姫!時々、騎士見習い!
76.愛おしくて
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ラフィルは長い口づけの後、ぎゅっとミアを抱きしめた。
ミアは逞しいラフィルの腕の中でとても幸せだった。
幸せすぎて…ときめきすぎて、気が遠くなりそうなミアは立っていることも出来なくなってかくんと倒れそうになる。
「おっと」とラフィルが支えると、ミアは咄嗟にラフィルにしがみついた。
ミアの方から抱き着くような姿勢になりラフィルの胸がきゅっとなる。
「あああああ~っもうっ!」とラフィルが唸った。
「えっ?」とミアが驚く。
何?何か私ラフィル様を怒らせた???
びくっとしてミアが、体を離そうとするとラフィルがぐっとミアを引き寄せきつく抱きしめた。
「なんで、そんなに可愛いんだぁ~っ」
「えっ?えっ?えええ~っ??」とまた赤面する。
「もう、無理だ!我慢できないっ!」とラフィルが叫ぶ。
「え?」とミアがきょとんとなった。
「我慢?」
「そうだ!もう限界だミアが可愛すぎるのがいけないっ…くっ!」
ラフィルはミアを抱きかかえベッドの方に向かいなおす…。
ミアがラフィルの耳元で囁く。
「なぜ?我慢?…我慢なんて必要ない…私はラフィル様のものよ?」と首を傾げて言った。
”ぷつんっ”とラフィルの理性が完璧に切れる音がした。
後日談になるがラフィルの脳内では確かに、その音が聞こえたという。
その時である!
そう、まさに、その時!その瞬間!
ドアをノックする音と共に気のいい店主の声がした。
「お客様~!お食事の用意が整いましたです~。どうぞ下の食堂においで下さいませ~」
二人は同時に固まった後ミアがぷっと吹き出してクスクスと、笑いだした。
ラフィルは「はぁ~っ」と、大きな大きなため息をついた。
抱きあげていたミアを下して立たせると店主に答える。
「わかった。すぐ行く」とだけ伝えた。
***
そこでの食事は中々のものだった。
何と王都では、見られることのなかった”米”を使った料理の数々があったのだ。
ラフィルは、やけくその様にがつがつと食べた。
実際、ミアとのイチャイチャタイムに邪魔が入ってやけくそ気味だったのだが、ホッとした自分もいた。
あのままミアの名誉を傷つけずにすんで、良かった。
あの時、宿屋の亭主が、ドアをたたき夕食の案内を告げに来なければ、自分は後先も考えずミアに襲いかかっていただろう。
やはり、明日にでも最寄りの教会で、きちんと式をあげよう。
それが、愛するミアの為である。
とは、言えミアの両親や、側近たちを式に呼べないのは可哀想だとも思う。
しかし、それはあきらめてもらうしか…と思っていた。
ふっとミアに目をやると何故か涙目になりながら食事をとっている。
「おぉぉぅ、お米のご飯~っ!嬉しいょぅ~っ!ん~っ!美味しーい!」
ぱくぱく、ごっくん、深窓のご令嬢とは程遠い食欲と食べっぷりにラフィルもびっくりである。
お…俺より食ってる?
…すっかり色気より食い気に走っている。
なんて、無邪気なんだろう…と、そんな所まで可愛くて仕方ないのだから恋とは恐ろしい病である。
けれど、そんな幼くも見えるミアの可愛らしさに罪悪感を感じ胸がツキンと痛んだ。
うん、そうだ!こんなにも無垢な存在を結婚式も挙げずに手を出すだなど許されるべきではない!
店主が食事に呼びに来てくれて本当に良かったとラフィルは思うのだった。
二人は、そこでの食事をたいらげてお腹一杯になると部屋に戻った。
「ミア、私はミアの事を愛している。攫うように母上の所から連れ出してしまったが、国王と、神殿に反対されたとなれば私たちは、ラフィリルで誰の祝福も受ける事すら出来ないだろう」
ミア愛しさに理性を失いかけたラフィルだったが、食欲を満たした事で落ちついたのかミアの気持ちを確かめようと、これからの事を話し出した。
ミアの気持ち次第では公爵家に帰した方が幸せなのではないかと、思いはじめていた。
自分はよい。
自分はどんなところでも、草を食ってでも生きていける。
ラフィルは、現在、二十五歳だが十五歳の頃にはもう騎士として、戦にも出ていた。
野営もあれば、遠征もあったし、単独行動で旅人を装い他国の調査に行った事もある。
食べる物も、ままならない事もあれば死にかけた事もあるのである。
いざとなれば、どうとでもなる。
畑を耕し、狩りをして暮らすのも良いだろう。
だが、ミアは、公爵令嬢で何不自由なく暮らしてきたに違いない。
命を狙われたりという事を除けば、小箱ひとつ自分の手で運んだ事も無くて当たり前の恵まれたご令嬢なのである。
よほど命を狙われたりしていた事がショックだったのか、自ら体を鍛え体術まで身につけたのは、驚きとしか言いようがないし、すごい事だが、だからといって家族や公爵令嬢という地位すら捨てさせて良かったのかとも今さらながらに思った。
自分の想いを遂げる事しか考えられなかった自分を情けなく思い、振り返る。
ミアは何故、自分などを好きになったのだろう。
全くもって自分は勝手な男である。
自分が好きだからといって、後先も考えずさらいにいくような男である。
見た目だって見る者皆が怯えるほどの醜さだというのに。
(…と、本人は思っているがミアにとっては理想である)
「ラフィル様?ラフィル様は後悔してらっしゃるの?」と、不安そうな顔でミアが聞いてくる。
「後悔?いや、後悔などしてはいない。だが、公爵令嬢であるお前にとって俺とのこれからの生活が果たして幸せなのかどうか…心配している」
「?なぜ?ラフィル様と一緒なら私は幸せよ?」
「また。そんな可愛い事を…しかしミア、そなたに庶民のような暮らしができるだろうか?食べるものに困るほどにはならなくとも、追手から隠れ…社交界にも出られぬ慎ましやかな生活になるだろう」
「なぁ~んだ!そんなこと?」と満面の笑みになるミアにちょっと驚くラフィルである。
「そんな事って…」
「ラフィル様は、私を随分とみくびっていらっしゃるのね?そんなの、全然平気!雨露凌げれば十分ですわ!やってみてダメだったら、それから考えればいいのではなくて?」
「いや…ダメだったらって、それじゃあまずいだろう其方の名誉にだって傷が…」
「何それ?私はラフィル様と別れるような事になったら、どうせ結婚するつもりなんか無いもの!リゼラみたいな騎士でも目指しますわ!だから全っ然、問題なしですわ!」
(ミアにしたらもともと美羽の記憶は”ド庶民”である!ドンとこいってなものである!)
「ミア…」
なんだって、この娘はそんなにも俺の事を気に入ってくれたのか…
自分が何を言っているのかわかっているのか?
この俺以外の誰とも結婚するつもりなんかないと?
恐れられることはあっても、こんなにも慕われた事などなかった。
ああ、そう言えば場慣れれした酒場の女とか女騎士とかは自分をあまり怖がらなかったかもしれないな?
いや、しかし、酒場の女達は、明らかに金目当てだったし女騎士たちは単純に戦士としての自分を敬ってくれているだけである。
普通の貴族のご令嬢なら自分と目が合っただけで悪鬼にでもあったように青ざめて逃げ出すのだから…。
あれは、なかなか傷つく…。
「それにね!そんな心配は私に失礼です。ラフィル様!みていらっしゃいな!私はドレスや宝石なんて無くても幸せだって証明してさしあげますわ!お料理でも掃除でもどんと任せてくださいませ!」と可愛い握りこぶしを作った。
ああ、本当に…どうして、こんなにも…。
もう、これだけで死んじゃってもいいかもしれないほど幸せな気持ちになるラフィルだった。
ラフィルはミアを抱き寄せて横になった。
そしてミアの額に軽く口づけて
「今夜はもう休もう…そして明日、国境を越えたら近くの教会で結婚式をあげよう」
「はい」ミアは幸せそうに微笑んだ。
その日、二人ただ寄り添って眠りについた。
ただただ、純粋に…愛おしい…。
ラフィルは何があってもミアを慈しもう思った。
ミアが別れを望まぬ限り自分はミアを決して離さないと改めて心に誓うラフィルだった。
そしてその夜二人は手を繋ぎ、清らかに眠りについたのだった。
ミアは逞しいラフィルの腕の中でとても幸せだった。
幸せすぎて…ときめきすぎて、気が遠くなりそうなミアは立っていることも出来なくなってかくんと倒れそうになる。
「おっと」とラフィルが支えると、ミアは咄嗟にラフィルにしがみついた。
ミアの方から抱き着くような姿勢になりラフィルの胸がきゅっとなる。
「あああああ~っもうっ!」とラフィルが唸った。
「えっ?」とミアが驚く。
何?何か私ラフィル様を怒らせた???
びくっとしてミアが、体を離そうとするとラフィルがぐっとミアを引き寄せきつく抱きしめた。
「なんで、そんなに可愛いんだぁ~っ」
「えっ?えっ?えええ~っ??」とまた赤面する。
「もう、無理だ!我慢できないっ!」とラフィルが叫ぶ。
「え?」とミアがきょとんとなった。
「我慢?」
「そうだ!もう限界だミアが可愛すぎるのがいけないっ…くっ!」
ラフィルはミアを抱きかかえベッドの方に向かいなおす…。
ミアがラフィルの耳元で囁く。
「なぜ?我慢?…我慢なんて必要ない…私はラフィル様のものよ?」と首を傾げて言った。
”ぷつんっ”とラフィルの理性が完璧に切れる音がした。
後日談になるがラフィルの脳内では確かに、その音が聞こえたという。
その時である!
そう、まさに、その時!その瞬間!
ドアをノックする音と共に気のいい店主の声がした。
「お客様~!お食事の用意が整いましたです~。どうぞ下の食堂においで下さいませ~」
二人は同時に固まった後ミアがぷっと吹き出してクスクスと、笑いだした。
ラフィルは「はぁ~っ」と、大きな大きなため息をついた。
抱きあげていたミアを下して立たせると店主に答える。
「わかった。すぐ行く」とだけ伝えた。
***
そこでの食事は中々のものだった。
何と王都では、見られることのなかった”米”を使った料理の数々があったのだ。
ラフィルは、やけくその様にがつがつと食べた。
実際、ミアとのイチャイチャタイムに邪魔が入ってやけくそ気味だったのだが、ホッとした自分もいた。
あのままミアの名誉を傷つけずにすんで、良かった。
あの時、宿屋の亭主が、ドアをたたき夕食の案内を告げに来なければ、自分は後先も考えずミアに襲いかかっていただろう。
やはり、明日にでも最寄りの教会で、きちんと式をあげよう。
それが、愛するミアの為である。
とは、言えミアの両親や、側近たちを式に呼べないのは可哀想だとも思う。
しかし、それはあきらめてもらうしか…と思っていた。
ふっとミアに目をやると何故か涙目になりながら食事をとっている。
「おぉぉぅ、お米のご飯~っ!嬉しいょぅ~っ!ん~っ!美味しーい!」
ぱくぱく、ごっくん、深窓のご令嬢とは程遠い食欲と食べっぷりにラフィルもびっくりである。
お…俺より食ってる?
…すっかり色気より食い気に走っている。
なんて、無邪気なんだろう…と、そんな所まで可愛くて仕方ないのだから恋とは恐ろしい病である。
けれど、そんな幼くも見えるミアの可愛らしさに罪悪感を感じ胸がツキンと痛んだ。
うん、そうだ!こんなにも無垢な存在を結婚式も挙げずに手を出すだなど許されるべきではない!
店主が食事に呼びに来てくれて本当に良かったとラフィルは思うのだった。
二人は、そこでの食事をたいらげてお腹一杯になると部屋に戻った。
「ミア、私はミアの事を愛している。攫うように母上の所から連れ出してしまったが、国王と、神殿に反対されたとなれば私たちは、ラフィリルで誰の祝福も受ける事すら出来ないだろう」
ミア愛しさに理性を失いかけたラフィルだったが、食欲を満たした事で落ちついたのかミアの気持ちを確かめようと、これからの事を話し出した。
ミアの気持ち次第では公爵家に帰した方が幸せなのではないかと、思いはじめていた。
自分はよい。
自分はどんなところでも、草を食ってでも生きていける。
ラフィルは、現在、二十五歳だが十五歳の頃にはもう騎士として、戦にも出ていた。
野営もあれば、遠征もあったし、単独行動で旅人を装い他国の調査に行った事もある。
食べる物も、ままならない事もあれば死にかけた事もあるのである。
いざとなれば、どうとでもなる。
畑を耕し、狩りをして暮らすのも良いだろう。
だが、ミアは、公爵令嬢で何不自由なく暮らしてきたに違いない。
命を狙われたりという事を除けば、小箱ひとつ自分の手で運んだ事も無くて当たり前の恵まれたご令嬢なのである。
よほど命を狙われたりしていた事がショックだったのか、自ら体を鍛え体術まで身につけたのは、驚きとしか言いようがないし、すごい事だが、だからといって家族や公爵令嬢という地位すら捨てさせて良かったのかとも今さらながらに思った。
自分の想いを遂げる事しか考えられなかった自分を情けなく思い、振り返る。
ミアは何故、自分などを好きになったのだろう。
全くもって自分は勝手な男である。
自分が好きだからといって、後先も考えずさらいにいくような男である。
見た目だって見る者皆が怯えるほどの醜さだというのに。
(…と、本人は思っているがミアにとっては理想である)
「ラフィル様?ラフィル様は後悔してらっしゃるの?」と、不安そうな顔でミアが聞いてくる。
「後悔?いや、後悔などしてはいない。だが、公爵令嬢であるお前にとって俺とのこれからの生活が果たして幸せなのかどうか…心配している」
「?なぜ?ラフィル様と一緒なら私は幸せよ?」
「また。そんな可愛い事を…しかしミア、そなたに庶民のような暮らしができるだろうか?食べるものに困るほどにはならなくとも、追手から隠れ…社交界にも出られぬ慎ましやかな生活になるだろう」
「なぁ~んだ!そんなこと?」と満面の笑みになるミアにちょっと驚くラフィルである。
「そんな事って…」
「ラフィル様は、私を随分とみくびっていらっしゃるのね?そんなの、全然平気!雨露凌げれば十分ですわ!やってみてダメだったら、それから考えればいいのではなくて?」
「いや…ダメだったらって、それじゃあまずいだろう其方の名誉にだって傷が…」
「何それ?私はラフィル様と別れるような事になったら、どうせ結婚するつもりなんか無いもの!リゼラみたいな騎士でも目指しますわ!だから全っ然、問題なしですわ!」
(ミアにしたらもともと美羽の記憶は”ド庶民”である!ドンとこいってなものである!)
「ミア…」
なんだって、この娘はそんなにも俺の事を気に入ってくれたのか…
自分が何を言っているのかわかっているのか?
この俺以外の誰とも結婚するつもりなんかないと?
恐れられることはあっても、こんなにも慕われた事などなかった。
ああ、そう言えば場慣れれした酒場の女とか女騎士とかは自分をあまり怖がらなかったかもしれないな?
いや、しかし、酒場の女達は、明らかに金目当てだったし女騎士たちは単純に戦士としての自分を敬ってくれているだけである。
普通の貴族のご令嬢なら自分と目が合っただけで悪鬼にでもあったように青ざめて逃げ出すのだから…。
あれは、なかなか傷つく…。
「それにね!そんな心配は私に失礼です。ラフィル様!みていらっしゃいな!私はドレスや宝石なんて無くても幸せだって証明してさしあげますわ!お料理でも掃除でもどんと任せてくださいませ!」と可愛い握りこぶしを作った。
ああ、本当に…どうして、こんなにも…。
もう、これだけで死んじゃってもいいかもしれないほど幸せな気持ちになるラフィルだった。
ラフィルはミアを抱き寄せて横になった。
そしてミアの額に軽く口づけて
「今夜はもう休もう…そして明日、国境を越えたら近くの教会で結婚式をあげよう」
「はい」ミアは幸せそうに微笑んだ。
その日、二人ただ寄り添って眠りについた。
ただただ、純粋に…愛おしい…。
ラフィルは何があってもミアを慈しもう思った。
ミアが別れを望まぬ限り自分はミアを決して離さないと改めて心に誓うラフィルだった。
そしてその夜二人は手を繋ぎ、清らかに眠りについたのだった。
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