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はじまり
37.決戦当日--02
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その日、秘密裏に長年、追跡しつつも黒幕を捕える事のできなかった闇取引に、黒幕の首領であるグータリム・デュロノワル子爵が、自ら取引を行うという確かな筋(ラフィリアの魔導士ルークしかも映像解説付き!)からの情報に、この国の宰相や将軍は今宵が千載一遇の機会とばかりに罠をはり、取引場所に兵士を潜伏させた。
闇取引に関わる商人や一族に至るまで一斉に検挙するが為に国家直属選りすぐりの兵士の、およそ800の兵がその為だけに一般の市民に変装しまぎれ、各屋敷や、店舗、また船や荷車、輸送を行う末端業者に至るまで配備された。
デルアータ王国開国以来の大捕物である。
100年以上も昔から暗黒街に君臨してきたデュロノワル一族は、窃盗、密輸、人身売買に殺人…戦争に関わるような武器や呪術具の密売…いわゆるマフィアのような存在だ。
しかし長い歴史の中、闇に栄えたデュロノワルは、とうとう手を出してはならぬ物に手を出してしまったのである。
それは、伝説の国、魔法の国、この世界の始まりの国と呼ばれるラフィリル王国の禁忌、”黒魔石”に手を出したことである。
それは禁忌中の禁忌…。
破滅への序曲だった。
黒魔石は人の負の力を増強し、人の悪意の願いを叶える。
一時の快楽、一時の栄光…一時の満足感…そして最後に破滅を与える。
魔力を持たない相手に”魔”を授ける妖しく黒く危うい魔石である。
これを危惧した始まりの国ラフィリル王国の聖魔導士協会が、送り込んだ人物、それは血族の魔導士でありラフィリル王国の第二王子であるルークだった。
デュロノワルは、つついてはいけない籔をつついてしまったのである。
そう、黒魔石にさえ手を出さなければラフィル王国は動くことも魔導士がこの国に来ることもなかっただろう。
そしてルークは、黒魔石を速やかに回収し、ラフィリルの至宝、精霊の宿りし”月の石”を持ってそれを浄化するためにこの国デルアータに今回、親善大使として来月の園遊会に招かれたダルタス・ラフィリアード公爵一家とともにやってきた。
そしてラフィリルからは遠いこの国で血族の姫と出会ったのである。
「ルーク、おまえ、結局、デルアータの宰相や将軍に丸投げか?」
そう苦笑しながらラフィリル王国将軍のダルタス将軍が言うとルークは相変わらずほんわりとした笑顔で呑気そうに答える。
「ん~。だって結局、自国の事は自国で処理してもらわないとね~。今後ずっと頼られてもだし、魔法を持たない国が安易に魔力を求めた結果どんなしっぺ返しが来るか、自ら学んでもらう為にもね、なるべく自国で処理させる方向に持っていくよう聖魔導士協会からも言われてるんだよねぇ」
「なんだ、てっきり、お前が面倒くさがってるのかと…」
「何言ってんだか…。黒魔石を浄化して終わりだったら単身できてぽぽいって済ませちゃうよ。そっちの方が楽だもの。どっちにしても魔法慣れしていないこの国の重鎮たちにも黒魔石の脅威は理解してもらわないといけないし、安易に関わってよいものではないと身をもって知ってもらわないと」
「なるほど」
「まぁ、ザッツ将軍やカルム宰相の気合の入りようや作戦内容をみても、問題はなさそうだしね。まぁ、ザッツ将軍の方は黒魔石自体が云々よりもイリューリアを僕に関わらせたくない気持ちが一番みたいだけどね」
「ふふん、それだよ。ルーク、おまえイリューリア嬢には随分、優しいじゃないか?」
「それはまぁ、血族の姫だしね…ほってはおけないでしょ?」
「それだけか?」とダルタスはにやにやした。
「ほかに、何があるんだよ?うん、まぁ、でも彼女は可愛らしいね。魂もオーラも綺麗だ。ルミアーナがオパールの輝きだとしたら彼女は白真珠の輝きを放っている感じかな?ルミアーナとイリューリアはすごく似てるけど中身が全然違うね。でもまぁ、ルミアーナ以外では珍しく不快な感じのない女の子だよ」とルークは目を細めてほほ笑んだ。
「ふぅん…無自覚か?まぁ、いいけど…。取りあえず今晩、捕物はデルアータの奴らに任せて俺達はイリューリア嬢の護衛かな?っつってもルミアーナがついてりゃ、もれなく精霊の加護も万全なんだから俺達もいらないだろうけどな」
ダルタス将軍の妻、ルミアーナは、黒魔石とは真逆の聖なる”月の石”の主でラフィリルでは”現存する女神”とすら呼ばれる女性である。
この世界の精霊を下僕に持つルミアーナはまさしく世界最強といえるのである。
(この国では内緒だが…)
「はははっ、違いない!僕らはゆっくり、今夜の大捕物を魔法で観戦でもしますかね?」
「おお、それ、いいな」
そうして、その夜、ラフィリアード一家と魔導士ルークは、イリューリアと供にエルキュラート公爵家の館に帰るのだった。
闇取引に関わる商人や一族に至るまで一斉に検挙するが為に国家直属選りすぐりの兵士の、およそ800の兵がその為だけに一般の市民に変装しまぎれ、各屋敷や、店舗、また船や荷車、輸送を行う末端業者に至るまで配備された。
デルアータ王国開国以来の大捕物である。
100年以上も昔から暗黒街に君臨してきたデュロノワル一族は、窃盗、密輸、人身売買に殺人…戦争に関わるような武器や呪術具の密売…いわゆるマフィアのような存在だ。
しかし長い歴史の中、闇に栄えたデュロノワルは、とうとう手を出してはならぬ物に手を出してしまったのである。
それは、伝説の国、魔法の国、この世界の始まりの国と呼ばれるラフィリル王国の禁忌、”黒魔石”に手を出したことである。
それは禁忌中の禁忌…。
破滅への序曲だった。
黒魔石は人の負の力を増強し、人の悪意の願いを叶える。
一時の快楽、一時の栄光…一時の満足感…そして最後に破滅を与える。
魔力を持たない相手に”魔”を授ける妖しく黒く危うい魔石である。
これを危惧した始まりの国ラフィリル王国の聖魔導士協会が、送り込んだ人物、それは血族の魔導士でありラフィリル王国の第二王子であるルークだった。
デュロノワルは、つついてはいけない籔をつついてしまったのである。
そう、黒魔石にさえ手を出さなければラフィル王国は動くことも魔導士がこの国に来ることもなかっただろう。
そしてルークは、黒魔石を速やかに回収し、ラフィリルの至宝、精霊の宿りし”月の石”を持ってそれを浄化するためにこの国デルアータに今回、親善大使として来月の園遊会に招かれたダルタス・ラフィリアード公爵一家とともにやってきた。
そしてラフィリルからは遠いこの国で血族の姫と出会ったのである。
「ルーク、おまえ、結局、デルアータの宰相や将軍に丸投げか?」
そう苦笑しながらラフィリル王国将軍のダルタス将軍が言うとルークは相変わらずほんわりとした笑顔で呑気そうに答える。
「ん~。だって結局、自国の事は自国で処理してもらわないとね~。今後ずっと頼られてもだし、魔法を持たない国が安易に魔力を求めた結果どんなしっぺ返しが来るか、自ら学んでもらう為にもね、なるべく自国で処理させる方向に持っていくよう聖魔導士協会からも言われてるんだよねぇ」
「なんだ、てっきり、お前が面倒くさがってるのかと…」
「何言ってんだか…。黒魔石を浄化して終わりだったら単身できてぽぽいって済ませちゃうよ。そっちの方が楽だもの。どっちにしても魔法慣れしていないこの国の重鎮たちにも黒魔石の脅威は理解してもらわないといけないし、安易に関わってよいものではないと身をもって知ってもらわないと」
「なるほど」
「まぁ、ザッツ将軍やカルム宰相の気合の入りようや作戦内容をみても、問題はなさそうだしね。まぁ、ザッツ将軍の方は黒魔石自体が云々よりもイリューリアを僕に関わらせたくない気持ちが一番みたいだけどね」
「ふふん、それだよ。ルーク、おまえイリューリア嬢には随分、優しいじゃないか?」
「それはまぁ、血族の姫だしね…ほってはおけないでしょ?」
「それだけか?」とダルタスはにやにやした。
「ほかに、何があるんだよ?うん、まぁ、でも彼女は可愛らしいね。魂もオーラも綺麗だ。ルミアーナがオパールの輝きだとしたら彼女は白真珠の輝きを放っている感じかな?ルミアーナとイリューリアはすごく似てるけど中身が全然違うね。でもまぁ、ルミアーナ以外では珍しく不快な感じのない女の子だよ」とルークは目を細めてほほ笑んだ。
「ふぅん…無自覚か?まぁ、いいけど…。取りあえず今晩、捕物はデルアータの奴らに任せて俺達はイリューリア嬢の護衛かな?っつってもルミアーナがついてりゃ、もれなく精霊の加護も万全なんだから俺達もいらないだろうけどな」
ダルタス将軍の妻、ルミアーナは、黒魔石とは真逆の聖なる”月の石”の主でラフィリルでは”現存する女神”とすら呼ばれる女性である。
この世界の精霊を下僕に持つルミアーナはまさしく世界最強といえるのである。
(この国では内緒だが…)
「はははっ、違いない!僕らはゆっくり、今夜の大捕物を魔法で観戦でもしますかね?」
「おお、それ、いいな」
そうして、その夜、ラフィリアード一家と魔導士ルークは、イリューリアと供にエルキュラート公爵家の館に帰るのだった。
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