ラフィリアード家の恐るべき子供たち

秋吉美寿

文字の大きさ
9 / 113
はじまりの章

008.出発の前に!

しおりを挟む
 ラフィリアード家の双子の七歳の誕生日は、国を挙げての祝日となり朝から祝砲があがり、夜には花火も上がったが、この歳の誕生日は屋敷の中、家族だけで過ごすことにした。

 翌日には留学の為、タイターナ公国へと向かう予定だからである。
 ごくごく身内だけという事で、ラフィリアード家の曾お婆様と父母、母の実家のアークフィル公爵家のおじい様、おばあ様、そしてリミアの許嫁のティムンが招かれた。

「ジーン、リミア、学園への入学おめでとう!」
 オレンジ色の髪と蜂蜜色の瞳のその美しい青年は双子達に満面の笑みで抱きつく。

「「ありがとうございます!」」
 二人は、しゃがんでハグをするティムンに頬を紅潮させて返事をする。
 本当に仲良しなのである。

「兄様、兄様お願いがありますの」リミアがティムンに上目遣いのすがるような目でお願いと声をかける。
「かっ…かわ…いや、何だい?リミア」思わずそのかわゆさに、口元を抑えてティムンが聞き返す。

「兄様、リミアは頑張って早く大人になりますわ!だから、社交界に出ても恋人とか作らないでほしいのです!婚約解消とかしないでほしいのです」

「ぐはっ…もう何言って…」
 はわわ…と悶えつつ、うれ恥ずかしがるティムンに、リミアは真剣に訴える。
「真面目なお話ですの!」

「ははっ、わかったよ。大丈夫。僕はリミアの許嫁だからね?君が誰か他に好きな人が出来ない限りは、そんなに急がなくてもちゃんと待っている自信があるからね?」と穏やかに笑った。

 その場限りの口約束…。
 それでも今のリミアにとっては希望となった。

「「ほぉ(まぁ)」」と両親も微笑ましいものを見るようにリミアとティムンの様子を見ていた。

 小さな女の子にも優しいティムンの対応は素晴らしく、周りの皆はにこやかに頷き合いながら、その可愛らしいやり取りに微笑む。

「リミアは、本当にティムンが大好きなのねぇ?」とルミアーナが笑った。
「うんうん、ほんとにティムンが相手なら安心なんだけどな」と父ダルタスも軽く笑いながら受け応える。

 そんな両親の軽い言い様にリミアは少しばかりむっとしながらも
「お母様、私、ティムン兄様以外のところにお嫁にはいきませんからっ!」と言い切った。

 そんなリミアのきっぱりとした言い様に『孫命!』のアークフィル家のおじいさまは大喜びである。
「よくぞ、言った!リミア!卒業したらそのまま我が家へ嫁入りしてきなさい!」
「ほんとね」とおばあ様も笑った。

 この時は、皆、そうなればいいなぁ~くらいに微笑ましく思って皆が笑っていた。

 ティムンもこんな事をいうリミアの事を純粋に可愛いなぁ~としみじみ感激していた。

(まぁ、大きくなって、それこそ学園で好きな男の子とかできちゃうんだろうな~?ちょっと寂しいな~…)などと思いをはせるのだった。

 ジーンだけはわずか六歳の初恋のを真剣に心配していたが…。

 そして翌日、リミアとジーンは旅だった。
 供は人がたをとり従者に身をやつした精霊のリンとシンである。
しおりを挟む
感想 93

あなたにおすすめの小説

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

悪役令嬢の父は売られた喧嘩は徹底的に買うことにした

まるまる⭐️
ファンタジー
【第5回ファンタジーカップにおきまして痛快大逆転賞を頂戴いたしました。応援頂き、本当にありがとうございました】「アルテミス! 其方の様な性根の腐った女はこの私に相応しくない!! よって其方との婚約は、今、この場を持って破棄する!!」 王立学園の卒業生達を祝うための祝賀パーティー。娘の晴れ姿を1目見ようと久しぶりに王都に赴いたワシは、公衆の面前で王太子に婚約破棄される愛する娘の姿を見て愕然とした。 大事な娘を守ろうと飛び出したワシは、王太子と対峙するうちに、この婚約破棄の裏に隠れた黒幕の存在に気が付く。 おのれ。ワシの可愛いアルテミスちゃんの今までの血の滲む様な努力を台無しにしおって……。 ワシの怒りに火がついた。 ところが反撃しようとその黒幕を探るうち、その奥には陰謀と更なる黒幕の存在が……。 乗り掛かった船。ここでやめては男が廃る。売られた喧嘩は徹底的に買おうではないか!! ※※ ファンタジーカップ、折角のお祭りです。遅ればせながら参加してみます。

処理中です...