ラフィリアード家の恐るべき子供たち

リミィの恋の話

63.舞踏会前夜

　舞踏会を明日に控えた放課後。

　リミィはやきもきしていた！
　やきもきやきもきやきもき…それはもうやきもきしていた。

　どうやらリーチェ先生は舞踏会のパートナーを断られたらしい。
（どっから調べて来たんだか相変わらず優秀な二人である）

　そうフィリアとジルに報告されたリミィだが、それでは新しいパートナーは、一体誰なのか？

　流石に新たなパートナーは分からないが、何でもラフィリルから来ている女性らしいという事だった。

　勇気を出してティムン兄様に月の石の念話で聞いてみると

『リミィもよく知ってる人だよ！リミィが心配しなきゃならないような女性じゃない安心していいよ。今夜は学園長の許可も頂いたから王城近くのホテルのレストランで四人で一緒に食事をしよう！そのまま君達もホテルに泊まれるように手配したから』と言われた。

　ま、まさか…兄様もその女性とホテルに泊まるつもり？

　リミィの妄想は広がった。

　ティムン兄様はにっこり微笑みながら、その女性を紹介するのだ…お兄様に寄り添うのにお似合いの年頃の淑女を。

「リミィ、安心していいよ。彼女はとっても優しいんだ。君が本当の恋に目覚めて新しい彼氏ができるまで、僕のお嫁さんになるのはまってくれると言ってくれる心根の優しく広い最高の女性なんだよ…あ、僕たちは隣のスイートに泊まるから！」

「そ！そんな！お兄様っ！私は他の人なんて嫌っ！お兄様以外の人なんて好きにならないわっ！」

　自分の妄想に涙をだばだば流すリミィに呆れたジルが頭をぽんと軽く叩いた。

「あぅ？ジル？」

「またもう、リミィは、兄様の事となると思いこみすぎっ！兄様がリミィが心配しなきゃならないような女性じゃないと言ったんなら本当に、全く気にしなくていい相手だよ！とにかく今晩一緒に食事するんだし、すぐ誰かもわかるよ！」

「だ…だってだって…！」

「だってじゃないの！さぁ、サッサと支度して！僕たち今は転移とかは封印されてて使えないんだから！待ち合わせ時間に遅刻しちゃうだろぅ？」
　そう言ってせかすジルに唇を尖らせながらもリミィは、自分の持っているドレスの中でも一番のお気に入りのドレスに着替えた。

　ティムン兄様の髪色に合わせたオレンジ色のドレスに身を包みウェストを飾るリボンには白いと淡い黄色の花があしらわれた可愛いドレスである。
　今のブラウンの髪色によく似会う。

　そうして二人は寮長に外泊の許可をもらい馬車に乗り込みティムン兄様との待ち合わせの場所まで行った。
　そこからはティムンに転移してもらいホテルに行くのである。

　待ち合わせ場所で馬車から降りるとティムンは慌てて駆け寄り、人気のない建物の陰に二人を引き寄せる。

「ああ、リミィにジル！遅かったじゃないか！もう待ってるよ！早く早く！」

　そうせかしてティムンは辺りに人がいない事を確かめるとパチンと指を鳴らした。
　辺りにはキラキラと白銀の光を残し三人はホテルの一室へと転移した。

　そこにはもうテーブルがセッティングされており素晴らしい料理が並んでいた。
　そして、そこには、この世の者とは思えぬほどに美しい女性が微笑みながら待ち受けていた。

　癒し系美女のリーチェ先生も、到底かないはしないだろう。
　申し訳ないが足元にも及ばないとはこの事をいうのだろうと思われる。

　彼女と張り合うとしたら気の毒になるくらいである。

　それほどの絶世の美女がそこにはいたのだった。