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リミィの恋の話
68.舞踏会で…ティムンとルミアーナ
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ティムンとルミアーナは、大公殿下と語り合いながら広間の中央まで入って行った。
大公殿下にティムンを引き合わせようと張り切っていた学園長は、既に大公と歓談しながらしかも大公が案内する形でティムンが広間に入ってきたことに大いに驚いた。
そっとルミアーナが、ティムンに耳打ちする。
「ティムン、とにかく大公殿下には、さっさとお席に着いて頂きましょう?殿下と一緒だと目立ってしょうがないわ」
「そ、そうだね。とりあえず、ダンスでも踊る?」
「そ、そうね、そうしましょう」
二人は大公殿下に丁寧にお辞儀をしてダンスフロアに入って行った。
そうして、ようやく大公は広間を見渡す先にある大公の椅子へと腰をおろした。
そして音楽に合わせ二人が踊りだすと、周りからは、うっとりとしたため息が漏れた。
まるで絵物語を現実世界でみているかのような心持なのだ。
大公殿下と一緒であろうが無かろうが目立ちまくりの二人だった。
そしてそんな二人をリーチェも食い入るように見ていた。
「あ…あの女性がティムン先生のお相手?そ、そんなぁ~…」
ちょっと美人なくらいなら自分だって!
…と、そう思っていた。
あんな人外な美しさは反則だとリーチェは叫びたかった。
逆立ちしたって敵わないと穴を掘って埋まりたいような気になっていた。
もはや、半泣きである。
そんな妹に兄が妹に話しかける。
「あのオレンジ頭のが、お前が言っていた男か?」
兄イースも父からリーチェの恋を応援するように言われていたのか、そんな事を聞いてきた。
「え…ええ、そう、ティムン先生と言うのよ」
「あの女性は?」
「さ、さぁ、許嫁はまだ七歳の筈だから…」
「では、婚約者とかではないと言う事か…」と女性にこれまで全く興味を示した事のなかった兄が珍しくその女性の事を聞いてきた。
「お前、同僚だろう?聞いてみろ」
「え?えええ?で、でも」
「ほら、もう曲が終わる。飲み物でも勧めて話しかけてみろ」
ルミアーナのあまりの美しさに気圧されて意気消沈のリーチェを何故か兄がぐいぐいと押してきた。
すかさず通りかかった給仕のトレーから飲み物を取り兄から手渡されたリーチェはぐいぐいと、兄に押されながらダンスを踊り終えたティムン達の所へ歩み寄った。
そして、兄に後ろからつつかれて、リーチェは、上ずりながらもティムンに話しかけた。
「あ、あのっ、ティムン先生?」
「ああ、リーチェ先生」ティムンは内心『うわっ!』とか思いながらも平静を装い受け応える。
それが大人と言うものだ。
「あ、あの、踊られて喉がお渇きでしょう?宜しかったらどうぞ」と兄に押し付けられた柑橘系のドリンクを二人分差し出した。
「ああ、ありがとうございます!」そう言ってティムンは飲み物を受け取りひとつをルミアーナに手渡した。
「まぁ、ちょうど喉が渇いていたのよ。嬉しいわ!お心遣いありがとう」とその女性は飲み物を受け取りお礼を言ってくれた。
気取らない素敵な女性のようである。
性格まで良さそうなんてますます付け入る隙もない。
「リーチェ先生、紹介します。義姉のルミアーナです」
「まぁ、初めまして同僚のリーチェと申しま…って、えええっ?あっあねっ?お姉様っ?お姉様なんですの?」
リーチェは、大事な事なので、繰返し聞いてしまった!
「え?はい、そうですが?」ティムンはリーチェの驚きの意味が分からずきょとんとした。
「姉のルミアーナですわ」ルミアーナはにっこりとほほ笑んだ。
(ほうほう、この娘がリミアのライバル?ふんふん…でもまぁ、このティムンの対応から見てリミアの心配する必要はなさそうな?)とルミアーナが、思ったのは内緒である。
「姉様、こちら同じ職場の先輩でリーチェ先生、同じ学園の一年の受け持ちなんだよ」
「まぁ、そうなのね?弟の事宜しくお願いいたしますわ」
そう言葉を交わしていると兄がリーチェの背中をつんつんとついてきた。
兄は自分の事も紹介しろと無言で催促している。
「はっ!えっ?あっ!あのっ、ティムン先生、ルミアーナ様、こちらにおりますのは私の兄で飛竜騎士団に努めておりますイースと申しますの!」
「「えっ!飛竜騎士団っ?」」ルミアーナとティムンが喰いついた。
「イース・レボルグアと申します。以後お見知りおきを!」
そうイースが言うや否や、なんと絶世の美女のルミアーナの方から話かけてきた。
「まぁあ、イース様はあの飛竜騎士団ですの?弟も私も飛竜にはすごくロマンを感じておりますのよ」と何とイースにがぶりよりしてきた。
女性に飛竜の事を聞かれた事などイースは初めてだったので驚いた。
「姉様ずるい!僕も話を聞きたい!イース殿、宜しければ、あちらのテーブルで飛竜や騎士団のお話など聞かせて頂けませんか?姉はこう見えてもラフィリルの近衛騎士団に在籍していた事があるほどの強者で!僕も騎士学科卒ですし!」
「お、おおっ、では…ほら、リーチェも」
「は…はいっ」
仕事一筋の硬派のイースは、素直に尊敬の眼差しをむけてくる美しい姉弟にやぶさかではなく、うっすらと頬をそめながら、ティムンの勧められるままに休憩用のテーブルについた。
思わぬ方向で兄と意気投合した二人にリーチェは唯々驚いた。
何故、ティムン先生は自分と出は無く兄と語り合っているのか!しかも何故か彼のお姉様までも!
三人は頬を紅潮させながら声高に飛竜のロマンについて語り合っていた。
…気が付くとリーチェだけが話題に入れず蚊帳の外だった…。
大公殿下にティムンを引き合わせようと張り切っていた学園長は、既に大公と歓談しながらしかも大公が案内する形でティムンが広間に入ってきたことに大いに驚いた。
そっとルミアーナが、ティムンに耳打ちする。
「ティムン、とにかく大公殿下には、さっさとお席に着いて頂きましょう?殿下と一緒だと目立ってしょうがないわ」
「そ、そうだね。とりあえず、ダンスでも踊る?」
「そ、そうね、そうしましょう」
二人は大公殿下に丁寧にお辞儀をしてダンスフロアに入って行った。
そうして、ようやく大公は広間を見渡す先にある大公の椅子へと腰をおろした。
そして音楽に合わせ二人が踊りだすと、周りからは、うっとりとしたため息が漏れた。
まるで絵物語を現実世界でみているかのような心持なのだ。
大公殿下と一緒であろうが無かろうが目立ちまくりの二人だった。
そしてそんな二人をリーチェも食い入るように見ていた。
「あ…あの女性がティムン先生のお相手?そ、そんなぁ~…」
ちょっと美人なくらいなら自分だって!
…と、そう思っていた。
あんな人外な美しさは反則だとリーチェは叫びたかった。
逆立ちしたって敵わないと穴を掘って埋まりたいような気になっていた。
もはや、半泣きである。
そんな妹に兄が妹に話しかける。
「あのオレンジ頭のが、お前が言っていた男か?」
兄イースも父からリーチェの恋を応援するように言われていたのか、そんな事を聞いてきた。
「え…ええ、そう、ティムン先生と言うのよ」
「あの女性は?」
「さ、さぁ、許嫁はまだ七歳の筈だから…」
「では、婚約者とかではないと言う事か…」と女性にこれまで全く興味を示した事のなかった兄が珍しくその女性の事を聞いてきた。
「お前、同僚だろう?聞いてみろ」
「え?えええ?で、でも」
「ほら、もう曲が終わる。飲み物でも勧めて話しかけてみろ」
ルミアーナのあまりの美しさに気圧されて意気消沈のリーチェを何故か兄がぐいぐいと押してきた。
すかさず通りかかった給仕のトレーから飲み物を取り兄から手渡されたリーチェはぐいぐいと、兄に押されながらダンスを踊り終えたティムン達の所へ歩み寄った。
そして、兄に後ろからつつかれて、リーチェは、上ずりながらもティムンに話しかけた。
「あ、あのっ、ティムン先生?」
「ああ、リーチェ先生」ティムンは内心『うわっ!』とか思いながらも平静を装い受け応える。
それが大人と言うものだ。
「あ、あの、踊られて喉がお渇きでしょう?宜しかったらどうぞ」と兄に押し付けられた柑橘系のドリンクを二人分差し出した。
「ああ、ありがとうございます!」そう言ってティムンは飲み物を受け取りひとつをルミアーナに手渡した。
「まぁ、ちょうど喉が渇いていたのよ。嬉しいわ!お心遣いありがとう」とその女性は飲み物を受け取りお礼を言ってくれた。
気取らない素敵な女性のようである。
性格まで良さそうなんてますます付け入る隙もない。
「リーチェ先生、紹介します。義姉のルミアーナです」
「まぁ、初めまして同僚のリーチェと申しま…って、えええっ?あっあねっ?お姉様っ?お姉様なんですの?」
リーチェは、大事な事なので、繰返し聞いてしまった!
「え?はい、そうですが?」ティムンはリーチェの驚きの意味が分からずきょとんとした。
「姉のルミアーナですわ」ルミアーナはにっこりとほほ笑んだ。
(ほうほう、この娘がリミアのライバル?ふんふん…でもまぁ、このティムンの対応から見てリミアの心配する必要はなさそうな?)とルミアーナが、思ったのは内緒である。
「姉様、こちら同じ職場の先輩でリーチェ先生、同じ学園の一年の受け持ちなんだよ」
「まぁ、そうなのね?弟の事宜しくお願いいたしますわ」
そう言葉を交わしていると兄がリーチェの背中をつんつんとついてきた。
兄は自分の事も紹介しろと無言で催促している。
「はっ!えっ?あっ!あのっ、ティムン先生、ルミアーナ様、こちらにおりますのは私の兄で飛竜騎士団に努めておりますイースと申しますの!」
「「えっ!飛竜騎士団っ?」」ルミアーナとティムンが喰いついた。
「イース・レボルグアと申します。以後お見知りおきを!」
そうイースが言うや否や、なんと絶世の美女のルミアーナの方から話かけてきた。
「まぁあ、イース様はあの飛竜騎士団ですの?弟も私も飛竜にはすごくロマンを感じておりますのよ」と何とイースにがぶりよりしてきた。
女性に飛竜の事を聞かれた事などイースは初めてだったので驚いた。
「姉様ずるい!僕も話を聞きたい!イース殿、宜しければ、あちらのテーブルで飛竜や騎士団のお話など聞かせて頂けませんか?姉はこう見えてもラフィリルの近衛騎士団に在籍していた事があるほどの強者で!僕も騎士学科卒ですし!」
「お、おおっ、では…ほら、リーチェも」
「は…はいっ」
仕事一筋の硬派のイースは、素直に尊敬の眼差しをむけてくる美しい姉弟にやぶさかではなく、うっすらと頬をそめながら、ティムンの勧められるままに休憩用のテーブルについた。
思わぬ方向で兄と意気投合した二人にリーチェは唯々驚いた。
何故、ティムン先生は自分と出は無く兄と語り合っているのか!しかも何故か彼のお姉様までも!
三人は頬を紅潮させながら声高に飛竜のロマンについて語り合っていた。
…気が付くとリーチェだけが話題に入れず蚊帳の外だった…。
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