ラフィリアード家の恐るべき子供たち

秋吉美寿

文字の大きさ
92 / 113
ジルの話

91.竜を従えし者 人ならざりし者--06 神聖竜ギエンティナル降臨

しおりを挟む
 学園の竜舎は、いわゆる馬小屋のようなものではない。
 それは、至高の存在への敬意をもち、賓客をもてなすかのように建てられた白きそれは白亜の宮殿と言っても過言ではない。
 常に浄化の魔法がかけられたその場所は、空気は澄み渡り床の大理石は光り輝いている。

 そして、そこには、元々学園に根を下ろしていた竜以外も集っていた。
 その白亜の宮殿(竜舎)を仕切る白竜ホワイティが皆を呼び寄せたのである。

 そして、その竜達にティムンは取り囲まれ詰め寄られていた。

『人間の若者よ。早く知っている事を申せ』

『はい、竜神ポッティ様の気が感じられなくなりさらに強大な気が感じられるとホワイティ様は申されましたね?』

『いかにも』

『ポッティ様は亡くなられたのではありません』

『なんと!』

『生まれ変わられたのです』

『『『なんと、それは真か』』』

『はい』

『いや、人間の若者よ!なぜ、それを竜族でもない其方が知っておるのじゃ?』

『『『そうだ、そうだ』』』

          『『『信じられん』』』

     『『『『『そもそも人間の言う事など信じられるのか?』』』

『『『信じられぬ』』』

         『『『騙されるな』』』

『『『では、長は、どこに』』』

               『『『どこにっっ!』』』
 
『人間に、分かるはずもない!』

『『『『そうだ!そうだ!』』』

 竜達の苛立ちがピークになりかけていた。

 白竜のホワイティが、前に立ち、庇ってくれてはいるものの今にもティムンに、かぶりつき四肢を引きちぎりそうな勢いである。

 そんなギリギリの瞬間ときである。
 圧倒的に絶対的な存在が、そこに現れ出でた。
 そしてすべての竜が振り返り目を見開いた。

「ジル!いや、ギエンティナル!間に合ったか」と、ティムンはほっと胸をなで下ろした。

 そして、ギエンティナルは、降り立った。

 つんざくような咆哮と、ともに!

『『『『『おお』』』』』
 竜達は一斉に、ティムンから距離をおき、ギエンティナルに敬意を示すかのように整列しその姿に見惚れた。

 そこには、みた事もないような神々しく美しいに虹色の鱗を持つ大きな大きな竜が降りたっていた。

「ジル!…ジルだよな?竜の姿は初めてみるが…」

『兄様…遅くなって申訳ありません。竜達が、何かご迷惑を?』

『良かった。迷惑ということは、ない。竜達は突然、長の気配を失って困惑していたんだ!言葉をかけてやってくれないか」
 迷惑でないなどと言う事はないだろうが、ティムンは優しくそう言い、ジルは、その優しさに胸が熱くなった。

 そして竜達に一喝する。

『控えよっ!』

 その咆哮に、竜達はびくっと肩をふるわせ一斉に頭を垂れた。

『その人間は、我が叔父である!我は、この世界を創りし始祖の魔法使いが一人の生まれ変わりである主と悠久の時を経てめぐり逢い同化した!』

『『『な!なんと!始祖の魔法使い…創世者様と!』』』

 創世者…そう、それは、この世界の神と言っても過言ではない。
 言葉の通り、この世界を創った者達である。
 伝説には七人の魔法使いがこの世界を創ったとされていて、ジルとリミィはその七人のうちの二人である。
(リミィに前世の記憶はないが)

『『『なんと素晴らしい!』』』

 竜達は新たなる長の誕生に心から喜んだ。
 そして敬意を持って従った。

『『『この漏れ出でる澄んだ魔力のなんと心地よいことか…』』』

 そして竜達は一斉にティムンに向き帰り、土下座せんが勢いで詫びをいれた。

『『『長のお身内とは、平に、平にご容赦を』』』

 ティムンが、「ひっ」っと一瞬さけび声をあげそうになったのは致し方ないと言えよう。
 百は越えようかと言う竜達が一斉に自分に頭を下げてきたのである。
 いくら月の石の主(精霊を従え現存する女神と言われるジル達の母であり義姉)の加護持ちだとしても元は普通に人の子なのだから。

そして、威厳を示すかのようにギエンテイナルは大きく咆哮するとそこに集う竜達に、重々しく言葉をかけた。

『我が名はギエンティナル!全ての竜を統べる者!竜達よ我に従い我と我の身内に忠誠を誓え!』

 竜達は大いなる力を持って生まれ変わりし長を迎え、感動に打ち震えながら心からの忠誠を心に誓った!
 そして一丸となり頷き返答の言葉を一斉に口にしティムンにこうべを垂れた。

『『『『『『『御意っ!』』』』』』

「う、うわぁ~」
 そもそもティムンは、教師として来たものの竜について学びに来たのだ。
 その憧れの竜達に平伏されてしまっているのだ。
 あまりの事態に喜んでいいのかどうなのか混乱するばかりであった。

 しかし、この事でティムンの竜の研究家としての将来は約束されたようなものだった。
 竜達は長や長の身内であるティムンには、その命を捧げてもいいほどに尽くすに違いないのである。
 それこそ、鱗だろうが、爪だろうが、牙だろうが、それこそ血液位なら喜んで差し出すだろう。

 その事を後ほど、落ち着いてからジルに言われて狂喜乱舞するティムンなのだった。
しおりを挟む
感想 93

あなたにおすすめの小説

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

処理中です...