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ジルの話
90.竜を従えし者 人ならざりし者--05 神聖竜ギエンティナル降臨
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「先生、少し体調が悪いので救護室へ行ってもいいでしょうか?」
たまたま歴史の抜き打ちテスト中だったジルが手をあげて、そう言った。
この学院にはいわゆる保健室のようなものもある。
そこには医師の資格も持つ養護教諭もいる。
(とは、言っても、今現在は白竜に念で弾き飛ばされて失神しているクレイユ先生のところへ行って救護室に不在な訳だが)
「えっ?ジル君?」と担任のリーチェは驚いた。
先ほどまで魔術の授業で元気一杯だったのだから、体調が悪いと言われても、にわかには信じ難かった。
まさかと思うが抜き打ちテストが嫌で?と一瞬、疑った。
…が、その顔色を見てリーチェも周りの皆も納得し、心配した。
その顔色は真っ青で、うっすらと汗まで浮かんでいる。
「やだ!どうしちゃったの?ジル」
心配したリミィも声をあげる。
「う、うん。何だか急に気分が悪くなって…で、でも大したことは無いので救護室で少し休めば大丈夫だと思うんです」
「まぁ、じゃあ救護室まで…」
「だ、大丈夫です。先生、救護室に行くくらい一人で行けますので、先生は授業を続けてください」
「いいえ、そんなに青い顔色ですもの一人では行かせられません」
「リーチェ先生!では、私が弟を救護室に連れていきますわ!私は、もうテストのプリントはすべて書き終えましたし、テスト中に先生が席を外すのは…ズルする人がいないか見張っていなきゃまずいんでしょう?」とリミィが言うと、周りの何人かから、「ええ~?」とか「余計な心配を~」と残念そうな声が上がった。
「それは…って、えっ!?終わったの?もう?」とリーチェはリミィの答案用紙を驚いて確認した。
確かに解答欄は、すべて埋まっている。
ふと、ジルの答案用紙を見たが、これまた全て埋まっていた。
全く持って嫌味なぐらい優秀な双子である。
この双子が特別クラスに選ばれていないのが不思議で仕方がないリーチェだった。
「そ、そう?じゃあ、リミィさんはジル君にそのまま、付き添ってあげてくれる?先生もこのテストが終わったら直ぐに様子を見に行くから。いい?ジル君はちゃんとベッドに横になって大人しく寝ているのよ?」
「「はい」」ジルとリーチェは双子らしく同時に返事をしてリミィが支えるようにして学園の救護室に向かった。
「さぁさ、皆さんはテストの続きですよ。集中して!早く終わった人も見直しをね」とリーチェ先生は、パンパンと手をたたき、生徒たちに前をむかせる。
生徒達もジルを心配しながらも渋々、前を向き、渋々テストの続きにかかるのだった。
***
そして、救護室の手前まで来たところで、リミィが立ち止まり、真正面からジルの目をみた。
「それで?一体どうしたの?仮病なんか使って」とリミィが言った。
真正面から見据えて問われ、さすがにリミィは顔色くらいではごまかせないかとジルは観念した。
最初こそ、ジルの顔色をみて心配したものの、何か様子が違うとリミィも気づく。
具合が悪いと言う割にひどく足早で、やたら急いでいる様子のジルにリミィが不信感を持つのも当たり前の話だった。
リミィは両手を腰に当てて問い詰めた。
「ごめん、実は今、ティムン兄様からちょっと緊急の用事で呼ばれちゃって」
「えっ!兄様から?ジルだけ?」
「えっ?ああ、うん。ちょっと、この件は僕が原因の案件で…リミィを仲間外れにした訳では…」
一瞬、緊張が走ったジルだが、リミィはそこまでお子様ではない。
いや、実際は、まだ7歳のお子ちゃまではあるが、今やティムンの婚約者としての自信があるのだ。
「んもぅ!仲間外れなんて思わないわよ。けど、一体どうしたのよ」
「うん、それもね、ちょっと急いでるから…ごめん、リミィ。戻ったら話すから取りあえず、救護室に行って僕が寝てるように誤魔化しといてくれないかな?僕が直ぐに行かないと兄様に迷惑かけちゃうんだ」
「何ですって!兄様に迷惑?わかったわ!直ぐに行ってちょうだい!」
何かはわからないが、愛しい婚約者のティムンが、今すぐジルが行かないと困るというのなら、さっさと行けとばかりにリミィはジルの背中を押した。
「うん!ありがとうっ!」ジルは、リミィの了解も得て、瞬時に姿を消した。
そして、ティムンの待つ竜舎に瞬間移動したのだった。
そう、そして現れたその姿はジルではなく…。
神聖竜ギエンテイナルとして!
たまたま歴史の抜き打ちテスト中だったジルが手をあげて、そう言った。
この学院にはいわゆる保健室のようなものもある。
そこには医師の資格も持つ養護教諭もいる。
(とは、言っても、今現在は白竜に念で弾き飛ばされて失神しているクレイユ先生のところへ行って救護室に不在な訳だが)
「えっ?ジル君?」と担任のリーチェは驚いた。
先ほどまで魔術の授業で元気一杯だったのだから、体調が悪いと言われても、にわかには信じ難かった。
まさかと思うが抜き打ちテストが嫌で?と一瞬、疑った。
…が、その顔色を見てリーチェも周りの皆も納得し、心配した。
その顔色は真っ青で、うっすらと汗まで浮かんでいる。
「やだ!どうしちゃったの?ジル」
心配したリミィも声をあげる。
「う、うん。何だか急に気分が悪くなって…で、でも大したことは無いので救護室で少し休めば大丈夫だと思うんです」
「まぁ、じゃあ救護室まで…」
「だ、大丈夫です。先生、救護室に行くくらい一人で行けますので、先生は授業を続けてください」
「いいえ、そんなに青い顔色ですもの一人では行かせられません」
「リーチェ先生!では、私が弟を救護室に連れていきますわ!私は、もうテストのプリントはすべて書き終えましたし、テスト中に先生が席を外すのは…ズルする人がいないか見張っていなきゃまずいんでしょう?」とリミィが言うと、周りの何人かから、「ええ~?」とか「余計な心配を~」と残念そうな声が上がった。
「それは…って、えっ!?終わったの?もう?」とリーチェはリミィの答案用紙を驚いて確認した。
確かに解答欄は、すべて埋まっている。
ふと、ジルの答案用紙を見たが、これまた全て埋まっていた。
全く持って嫌味なぐらい優秀な双子である。
この双子が特別クラスに選ばれていないのが不思議で仕方がないリーチェだった。
「そ、そう?じゃあ、リミィさんはジル君にそのまま、付き添ってあげてくれる?先生もこのテストが終わったら直ぐに様子を見に行くから。いい?ジル君はちゃんとベッドに横になって大人しく寝ているのよ?」
「「はい」」ジルとリーチェは双子らしく同時に返事をしてリミィが支えるようにして学園の救護室に向かった。
「さぁさ、皆さんはテストの続きですよ。集中して!早く終わった人も見直しをね」とリーチェ先生は、パンパンと手をたたき、生徒たちに前をむかせる。
生徒達もジルを心配しながらも渋々、前を向き、渋々テストの続きにかかるのだった。
***
そして、救護室の手前まで来たところで、リミィが立ち止まり、真正面からジルの目をみた。
「それで?一体どうしたの?仮病なんか使って」とリミィが言った。
真正面から見据えて問われ、さすがにリミィは顔色くらいではごまかせないかとジルは観念した。
最初こそ、ジルの顔色をみて心配したものの、何か様子が違うとリミィも気づく。
具合が悪いと言う割にひどく足早で、やたら急いでいる様子のジルにリミィが不信感を持つのも当たり前の話だった。
リミィは両手を腰に当てて問い詰めた。
「ごめん、実は今、ティムン兄様からちょっと緊急の用事で呼ばれちゃって」
「えっ!兄様から?ジルだけ?」
「えっ?ああ、うん。ちょっと、この件は僕が原因の案件で…リミィを仲間外れにした訳では…」
一瞬、緊張が走ったジルだが、リミィはそこまでお子様ではない。
いや、実際は、まだ7歳のお子ちゃまではあるが、今やティムンの婚約者としての自信があるのだ。
「んもぅ!仲間外れなんて思わないわよ。けど、一体どうしたのよ」
「うん、それもね、ちょっと急いでるから…ごめん、リミィ。戻ったら話すから取りあえず、救護室に行って僕が寝てるように誤魔化しといてくれないかな?僕が直ぐに行かないと兄様に迷惑かけちゃうんだ」
「何ですって!兄様に迷惑?わかったわ!直ぐに行ってちょうだい!」
何かはわからないが、愛しい婚約者のティムンが、今すぐジルが行かないと困るというのなら、さっさと行けとばかりにリミィはジルの背中を押した。
「うん!ありがとうっ!」ジルは、リミィの了解も得て、瞬時に姿を消した。
そして、ティムンの待つ竜舎に瞬間移動したのだった。
そう、そして現れたその姿はジルではなく…。
神聖竜ギエンテイナルとして!
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