ラフィリアード家の恐るべき子供たち

秋吉美寿

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ジルの話

93.竜騎士ティムンの噂 Byジル

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 僕は、あの後(竜達を諫めた後)こと次第しだいをリミィに話したが、さすがは僕の姉と言うか母様の娘と言うか、僕が人外の者になった挙句、竜神となってしまったと言うのにリミィが発した言葉は軽い上にドライだった。

「ふ~ん?どうでもいいけど、あんまり兄様に迷惑かけちゃダメだよ?ほんと、ジルってば行きあたりばったりなんだから!ちゃんと兄様にも謝るのよ」と片手を腰にあて僕のおでこを人差し指でつつきながら、そう言った。

『リミィだけには、言われたくない…』と思ったが心の中で留めた自分は偉かったと思う。

 けれどリミィにも今回は、迷惑をかけていたし兄様に多大なる迷惑をかけてしまった事も事実!
 僕は素直に頷き兄様にも心から謝ったさ。
 それに救護室で月の石の精霊のリンを僕の姿にかえさせて、寝かせておくというきめ細かいフォローも正直言って助かったしね。
 あの後、すぐにリーチェ先生が救護室に来て僕(僕に姿を変えた精霊のリン)を寮に送って行ったというのだから…僕の姿がなければ大騒ぎになっていた事だろう。
 勿論、本当の事など言えるはずもないしね!(竜の長になって竜達に挨拶してました~なんてね!)

 ***

 そして休み明けの学園はちょっとした騒ぎになっていた。

「ねぇねぇ聞いた?」

「ティムン先生でしょう聞いたわ!すごいわよね~」

「怒れる竜を落ち着かせて竜舎まで連れ帰ったって!」

「クライム先生なんて竜に吹き飛ばされて伸びてたらしいよ?」

「俺!竜に鞍もつけずに乗りこなしてたのをみたよ」

「「「「私も見たわ!」」」」「「「「俺も」」」」

「その白竜につき従うように他の竜もついていってさ!まるで竜達をつき従えてるように見えたよ!」

「「「「カッコいい」」」」

「ティムン先生ってば物語に出てくる竜騎士みたいっ」

「「「やっぱり、素敵よね~」」」等々…。

 女生徒達が朝からピーチクパーチク騒いでいる。
 正直、ティムン兄様にゾッコンなリミィが怒り出すんじゃないかとヒヤヒヤしたが、他の女子たちと一緒になって兄様を褒めちぎっていた。
 兄様に"本当の婚約者"として認められたことで随分と余裕が出来たのだろう。(正直助かった)

『ティムン先生は竜騎士!』そんな噂が学園中に広まっていた。

 どうやら、先日、竜達が苛立ちのあまり特別クラスの主任教諭であるクレイユ先生そ弾き飛ばしてしまった後、ティムン兄様の素晴らしい対応がその場にいた生徒や救護に駆け付けた他の教師達に目撃され、賛美の声が広まったらしい。

 さらには、クレイユ先生の怪我は意外とひどく、一部内臓破裂と背骨にひびが入るというものだったが、それもティムン兄様が治癒魔法で治しちゃったのだから、そりゃあティムン兄様が尊敬の眼差しで見られちゃうのも仕方ないんじゃないだろうか?
 治癒魔法が出来る魔法使いは希少だからね。

 けれど、僕はクレイユ先生には同情できない。
 まぁ、竜達が苛立っていたのは、直ぐに竜達に事情を明らかにしなかった自分に責任があるんだけどね。

 でも、生徒達でさえ解るほど竜たちが苛立っているのも気がつかず一年生のフィリアを騎乗させようとしてたなんて自業自得じゃないか?いい気味だ!
 (何といってもフィリアは、僕たち双子にとって生まれて初めての友達なのだ!それをあの馬鹿教師は!)
 そんな奴、僕ならほっとくのに!

 兄様が止めなければ、フィリアがそんな目にあっていたかもしれないんだから。
 そんな教師ならいない方がマシだ。

 …っと、これは兄様には言えないけどね。

 人外の魔力ちからを持つ僕が冗談でもそんな言葉を発したら、ティムン兄様は心配するに決まってるからね。
 その辺はわきまえてるよ。
 うん、僕は聖人君子でないとね。(発言だけは!)
 まぁ、でも、ほんのちょっと心の中で思うくらいは…と思う僕である。
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