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ジルの話

94.皆、ごめんよ

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「ジル、大丈夫か?」「大丈夫?」と、クラスメート達が心配気に声をかけてくれる。
 昨日、仮病を使った事で、皆、僕を気遣ってくれてくれている。

 …罪悪感を感じる。
 殺しても死なない程、元気である。
(言えないけど)

「うん…大丈夫だよ。でも次の体術の授業は見学させて貰うつもりだよ」

「「ええ~」」とクラスの中でも特に体術の得意なカナンとコルトムが、不満の声を上げる。
 最初の体術の授業の時から何故だか、すっかり僕に心酔し親友だと意気まいている二人だ。

「そ、そんなに具合が悪いのか?」

「そうだよ、今日こそお前から一本とろうと思ってたのに!」

「う、うん。ごめん」

「一体、どうしちゃったんだよ?まさか、大変な病気とかじゃないだろうな?」と二人は本気で心配してくる。
 遠巻きにその会話を聞く周りのクラスメート達も心配そうにしている。

 いやもう、本当にごめん。
 病気なんかじゃありません。
 人じゃなくなっちゃっただけで、力の加減が分からないんです~…とは、口が裂けても言えない。

 昨晩の事である。
 月の石の通信機能を使って僕は、寮の部屋からティムン兄様やリミィ…母様とも色々相談した。
 結果、母様曰く、今の僕は、はっきり言って『歩く危険物』だそうだ。

「取り扱い要注意人物なのに説明書もないから困った物ね~」と、母は小さなため息をつきながら、そう言った。

 まるで、購入したおもちゃに説明書が入ってなかったわ~みたいな感じで…。(ひどいっ)

 そこで何かに気付いたようにハッっとしたティムン兄様に言われたのだ。

「ジル…体術や魔術の授業はとにかく全部、休むこと!」

「えっ?何で?」と僕は言った。
 魔術と体術の授業は僕の一番、楽しみにしている授業だ。
 魔法は月の石に封印されているから、他の子たちと同程度くらいの魔法しかないから大丈夫と言われていたのに…と、思ったが、考えながら気づいた。

「あっ!そうか…」と、僕は青くなった。

「そうだ!ジル。きつい事を言うようだが、自覚しろ。お前は、もう純粋な人間ひとじゃないんだぞ?月の石の封印で魔力を封じても封じきれないほどの魔力を有している。これまでと同じつもりで、魔法の授業等で魔法を発動したらどれほどの威力でどれほどの惨事になるかわからない!まずは、どの程度の力でどの程度の制御ができるかも確かめてからでないと…」

「体術も…か…はあ。そう…だよね」と僕は大きなため息をついた。

 僕が落ち込んでいると、リミィが僕の方に手をおいた。
 そしてとぼけた調子でこう言った。
 さすが双子、優しい姉は僕を慰めてくれるのか…と僕は一瞬そんな風に思った。

「ジルったら、”純粋な人間”じゃない…なんて”不純な人”みたいね?」

「「ぷっ!」」と母様とティムン兄様が笑う。

「リミィ…ひどい…」
 どうやら姉は僕を慰めるも何も全然可哀想とか思ってないようだった。

 そうして、今後の僕の身の振り方は、取りあえず次の休みの日、父様にも相談しようという事で一旦、保留になったのだった。

 ああ、心配してくれるクラスメートの優しい事。
 僕の中で、先日、言われた言葉が頭の中でリフレインされる。

『ほんとにジルったら行きあたりばったりなんだから!』

 そうさ、僕ってば本当に行きあたりばったりなのさ…。くすん




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 次回は、双子の父登場予定です。
 ラフィリル王国の三将軍の一人ダルタス・ラフィリアード公爵!
 泣く子も黙る鬼将軍と諸外国からも恐れられる武人です。お楽しみに~
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