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ジルの話
95.計り知れぬ力
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「…と、いう訳なのよ」
と、母ルミアーナが、将軍にして我が父ダルタス・ラフィリアード公爵に、これまでのいきさつを話していた。
今日は、僕やリミィ、ティムン兄様も転移でラフィリアードの屋敷に戻っている。
あ、父様が固まっている。
うん、そうだよね。
普通はそうだ。
僕たち(母様、僕、リミィ、ティムン兄様ね)は、気長に待った。
(お~い!生きてる~?)
待つこと10分ほどだろうか?
父は鬼将軍と呼ばれた不屈の精神で自発的に蘇り?言葉を発した。
「うぬぅ、まぁ、その…なんだ。人間だろうが竜だろうが、それ以外だろうが、お前は俺とルミアーナの子だ!それは、変わらん!」と父は眉間に皺を寄せながらもそう言いきった。
家族の中で、ある意味、一番普通の人(魔法も使えないし)である父の反応が一番、心配だった僕やティムン兄様は、ほっとした。
何故か、母様やリミィは「大丈夫でしょ~?」なんてお気楽に構えていたけれど。
「しかし、何で学園に入学させたら、一年もたたないうちに人外になってるかな?」と小さな溜め息をついた。
「っ!それはもう、本当にごめんなさい。僕が浅慮でした!」と僕は平謝りである。
「ふぅ…それで?体術や魔法が、どんなことになってるかまず確認しなきゃあならないんだな?取りあえず、体術は俺が確認しよう。普通に暮らしている分には問題なさそうだしな?魔法は…う~ん困ったときの精霊頼み?リュートに頼むか」と父様は言った。
リュートとは、月の石の精霊。
この世界の精霊の中で一番高位の精霊である。
ちなみに精霊界とこの世界をつないでいるのが月の石という美しい石である。
精霊たちは普段この月の石に宿り、この世界で存在を保つためには、この世界を創りし始祖の魔法使いの血族でありこの世で最も美しく強い魂の持ち主の強大なる魔力を糧にして存在しているという事だ。
その、この世で最も美しく強い魂の持ち主というのが、母ルミアーナ『月の石の主』である。
この世界で唯一、精霊を従える母は常に精霊たちに守られている最強の人だ。
『呼んだか?』と早速、リュートが、母が肌身離さず身に着けているブレスレットにはめ込まれた月の石から姿を現した。
基本的には母以外の人間の言う事に従うことは無いが、母の夫である父の事は、それなりに認めているのか友人のように接している。
そしてリミィや僕は、主の子供であり、そもそもが始祖の魔法使いの生まれ変わりな事もあり、母に準ずる形で敬意を払われている。
「リュート、ジーンの魔力を確かめてもらえるだろうか?」
「私からも頼むわ。リュート」
『ダルタスは、ともかく主は命令すればよいだけのこと。ジーン様…手を我に…』と、リュートは僕の手をとった。
『これは…ジンやリン(月の石の精霊)の封印をものともしないのは無理なき事…高位の我にも完璧に封じる事は…出来て半分?いや三分の一…というところであろうか…』
「そ…そんなに?」
『ジーン様、普段の生活はともかく、うっかり攻撃魔法などしかけてはならぬぞ?多分、今のジーン様は小石をひとつ砕くつもりで放った攻撃魔法で、山のひとつも壊しかねない』
「「「「えっ!?」」」と、僕も皆も声をあげる。
「や、山ひとつって…まさかそんな」
『自覚がないのが、一番問題だ。取りあえず、ジーン様は、一旦、制御ができるようになるまで人間界を離れた方が良い』
「えっ!そんなっ!」
『それと、ダルタスよ!体術は其方が確認しようという事らしいが、体術の途中でも、反射的に制御不能のジーン様の魔力が漏れ出たら死ぬぞ。今はやめておけ』
「「「「それ程っ?」」」」と僕たちは目を見開いた。
普通の人間とはいえ、父様はこの国の英雄で、他国からも鬼将軍と恐れられる武人だ。
でも、そうか…もし僕の制御できない魔力が漏れたらそれだけで?僕が、興奮状態になるだけで危ういのだと思い知る。
リュートは精霊だ。
物事に感情を挟まず、事実のみ冷静に伝えてくれる。
そのリュートが、『小石ひとつ破壊しようとして山ひとつ破壊してしまう』というのなら…本当にそうなってしまうだろう。
ぞっとした。
もしも、ティムン兄様に体術や魔術の授業を休むように言われていなければ、僕は僕の友人や姉のリミィの命まで奪っていたかもしれないという事実に恐怖し、ティムン兄様に心から感謝した。
そして、その日のうちに僕のこれからについて、話し合ったのだった。
と、母ルミアーナが、将軍にして我が父ダルタス・ラフィリアード公爵に、これまでのいきさつを話していた。
今日は、僕やリミィ、ティムン兄様も転移でラフィリアードの屋敷に戻っている。
あ、父様が固まっている。
うん、そうだよね。
普通はそうだ。
僕たち(母様、僕、リミィ、ティムン兄様ね)は、気長に待った。
(お~い!生きてる~?)
待つこと10分ほどだろうか?
父は鬼将軍と呼ばれた不屈の精神で自発的に蘇り?言葉を発した。
「うぬぅ、まぁ、その…なんだ。人間だろうが竜だろうが、それ以外だろうが、お前は俺とルミアーナの子だ!それは、変わらん!」と父は眉間に皺を寄せながらもそう言いきった。
家族の中で、ある意味、一番普通の人(魔法も使えないし)である父の反応が一番、心配だった僕やティムン兄様は、ほっとした。
何故か、母様やリミィは「大丈夫でしょ~?」なんてお気楽に構えていたけれど。
「しかし、何で学園に入学させたら、一年もたたないうちに人外になってるかな?」と小さな溜め息をついた。
「っ!それはもう、本当にごめんなさい。僕が浅慮でした!」と僕は平謝りである。
「ふぅ…それで?体術や魔法が、どんなことになってるかまず確認しなきゃあならないんだな?取りあえず、体術は俺が確認しよう。普通に暮らしている分には問題なさそうだしな?魔法は…う~ん困ったときの精霊頼み?リュートに頼むか」と父様は言った。
リュートとは、月の石の精霊。
この世界の精霊の中で一番高位の精霊である。
ちなみに精霊界とこの世界をつないでいるのが月の石という美しい石である。
精霊たちは普段この月の石に宿り、この世界で存在を保つためには、この世界を創りし始祖の魔法使いの血族でありこの世で最も美しく強い魂の持ち主の強大なる魔力を糧にして存在しているという事だ。
その、この世で最も美しく強い魂の持ち主というのが、母ルミアーナ『月の石の主』である。
この世界で唯一、精霊を従える母は常に精霊たちに守られている最強の人だ。
『呼んだか?』と早速、リュートが、母が肌身離さず身に着けているブレスレットにはめ込まれた月の石から姿を現した。
基本的には母以外の人間の言う事に従うことは無いが、母の夫である父の事は、それなりに認めているのか友人のように接している。
そしてリミィや僕は、主の子供であり、そもそもが始祖の魔法使いの生まれ変わりな事もあり、母に準ずる形で敬意を払われている。
「リュート、ジーンの魔力を確かめてもらえるだろうか?」
「私からも頼むわ。リュート」
『ダルタスは、ともかく主は命令すればよいだけのこと。ジーン様…手を我に…』と、リュートは僕の手をとった。
『これは…ジンやリン(月の石の精霊)の封印をものともしないのは無理なき事…高位の我にも完璧に封じる事は…出来て半分?いや三分の一…というところであろうか…』
「そ…そんなに?」
『ジーン様、普段の生活はともかく、うっかり攻撃魔法などしかけてはならぬぞ?多分、今のジーン様は小石をひとつ砕くつもりで放った攻撃魔法で、山のひとつも壊しかねない』
「「「「えっ!?」」」と、僕も皆も声をあげる。
「や、山ひとつって…まさかそんな」
『自覚がないのが、一番問題だ。取りあえず、ジーン様は、一旦、制御ができるようになるまで人間界を離れた方が良い』
「えっ!そんなっ!」
『それと、ダルタスよ!体術は其方が確認しようという事らしいが、体術の途中でも、反射的に制御不能のジーン様の魔力が漏れ出たら死ぬぞ。今はやめておけ』
「「「「それ程っ?」」」」と僕たちは目を見開いた。
普通の人間とはいえ、父様はこの国の英雄で、他国からも鬼将軍と恐れられる武人だ。
でも、そうか…もし僕の制御できない魔力が漏れたらそれだけで?僕が、興奮状態になるだけで危ういのだと思い知る。
リュートは精霊だ。
物事に感情を挟まず、事実のみ冷静に伝えてくれる。
そのリュートが、『小石ひとつ破壊しようとして山ひとつ破壊してしまう』というのなら…本当にそうなってしまうだろう。
ぞっとした。
もしも、ティムン兄様に体術や魔術の授業を休むように言われていなければ、僕は僕の友人や姉のリミィの命まで奪っていたかもしれないという事実に恐怖し、ティムン兄様に心から感謝した。
そして、その日のうちに僕のこれからについて、話し合ったのだった。
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