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序章
002.~綺羅は目覚めを信じて眠りにつく~
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銀河に浮かぶ宇宙空母艦ノアズテラ…。
地球上の最新技術の結晶とも呼べる宇宙空母である。
その中には、自給自足の菜園や発電システムで何千年何億年でも生き続けられるべく設計された空母だった。
ただ、さすがに太陽にのみこまれれば助かることはまずないだろう。
ルビーのように赤黒く光る星、『地球』を宇宙から見つめ私は祈った。
世界の終わりではなく始まりを…。
私、桐生綺羅は、今日、この地球を壊した隕石に覆われたカプセルに入る。
「綺羅!決心は変わらないのか?」
「うん、私はこの世界の終わりではなく再生が見たいの」
「この計画が成功するとは限らない…目覚めた時にお前は世界にたった一人きりで死ななければならないかもしれなくてもか?」
「覚悟は出来てる。大丈夫!」そう言って私が微笑むと、長年、地球再生プログラムを研究してきたチームのリーダー、ロイス・ドーゾン博士は、眉を寄せて悲しそうに私を見た。
博士以外のクルーたちは皆、既にカプセルに入り眠りについた。
しかし、そのカプセルは普通の睡眠用のカプセルだ。
これから起きる爆発に耐えれようもない。
そのまま恐怖に怯えることなく苦しまずに死を迎える為に、いちはやく眠りについたのだ。
***
「博士、心配しないでも、かつてのような青く美しい水の惑星がきっと生まれるわ!その可能性を信じて生き残った私達は何年もの間、この宇宙空母ノアズテラで研究と計算をし続けてきたのではないの!」
「だが…あくまでも仮説の上での計算上の事なんだぞ?何十億年以上もこのカプセルが持つなんて可能性は微々たるものだ!それでも?」と博士は心配そうに言う。
「私の覚悟はかわらない!それでも可能性はゼロではないんだもの!私は地球をも貫いた隕石の力を信じてる」
地球の核を突き抜けたと思われる隕石は地球を突き抜けたあと停止し、ノアズテラが回収した。
ノアズテラの中で十年、その石は研究しつくされ、ある一定の光源と音源をあてると液体化する事を博士が発見した。
そしてその液体でコーティングした特殊な生命維持装置”卵”と呼ばれる銀色のカプセルに綺羅は入り眠りながら何十億年もの間宇宙を漂う気でいるのだ。
地球の核、マグマの中心を通ってすら溶ける事も傷つくこともなかったその石ならば確かにあらゆる衝撃に耐えれると考えられた。
しかし地球を死においやったこの石を他のクルー達は呪いの象徴のように嫌い、それを利用しようだなどと誰も思わなかった。
ドーゾン博士と綺羅以外は…。
綺羅はその名のように瞳をきらきらと輝かせながら言う。
「あの燃えるように光る星…かつての私達の地球は十年以上の時間をかけて核融合の果てに百倍にも膨れ上がりすでに太陽と変わらぬ巨大な炎の星になり果てた。そして、あと数時間で太陽とぶつかり、太陽と地球は核融合の果てにビッグバン、はじまりの大爆発が起きる!それは終わりかもしれない。でも、この爆発で、また命の星が生まれる筈よ!私は、それを見たい!例え人類がまだ生まれていなくてたった一人で命を終えたとしても最後の一瞬まで生きて未来を夢みたいのよ。私が降り立った大地に私の死んだ後の細胞の一つでも新たな生命の誕生の促進に役立つかもしれない」
そう、綺羅は自分の死骸すら、内にある細胞のすべても、もしかしたら種の役目を果たすかもと思っている。
自分という命を次に残したい。
どんな形でも命を繋ぎたいのだ。
「ああ…綺羅…君は強い人だ」ドーゾン博士は感極まって泣きそうな顔でそう言った。
皆が呪うように言う終焉の爆発さえ、『はじまりの爆発』と呼び、皆が『終わり』を覚悟し命を終えようとする中でたった一人いまだに未来を見据える。
それも、まだ生まれてもいない新たな生命の未来に想いをはせる綺羅に博士は驚きと尊敬の念を抱く。
「そう?私から見たら皆の方が凄いわよ?私は世界の終わりなんて見たくないし、眠ったまんま死ぬのも嫌だもの。起きる前提でないと眠れないわ!」
そう言って綺羅は笑い、意気揚々と”卵”に乗り込んだ。
「綺羅、”卵”には僕の万感の想いと知恵と知識を全て注ぎこんでいる。運よく人類に近しい世界に降り立った時にあらゆる事態に想定できうるように…まぁ、そのときこのカプセルと君が生き残っていたなら…だけどね?…必ず役に立つはずだ」
「うん、大丈夫な気がする!ドーゾン博士は私が知る最も尊敬する天才だもの!きっと私は目覚めるよ!始まりの世界に降り立つ!」
「僕もそれを信じるよ、おやすみ!」
そして、ロイス・ドーゾン博士は、寂しそうに微笑みカプセルを閉じた。
地球を離れて十年
綺羅は三十二歳で眠りについた。
***
そして百倍にも膨れ上がった地球と太陽はぶつかり、他の星々も巻き込んで宇宙の大爆発ビッグバンは起こった。
地球人類の粋を集められた空母は一瞬で消え、地球をいや、ひとつの銀河を壊滅においやった隕石につつまれた”卵”だけがそのすごい熱量の中、無傷のままに宇宙の膨張の光の渦の中に巻き込まれて行った。
地球上の最新技術の結晶とも呼べる宇宙空母である。
その中には、自給自足の菜園や発電システムで何千年何億年でも生き続けられるべく設計された空母だった。
ただ、さすがに太陽にのみこまれれば助かることはまずないだろう。
ルビーのように赤黒く光る星、『地球』を宇宙から見つめ私は祈った。
世界の終わりではなく始まりを…。
私、桐生綺羅は、今日、この地球を壊した隕石に覆われたカプセルに入る。
「綺羅!決心は変わらないのか?」
「うん、私はこの世界の終わりではなく再生が見たいの」
「この計画が成功するとは限らない…目覚めた時にお前は世界にたった一人きりで死ななければならないかもしれなくてもか?」
「覚悟は出来てる。大丈夫!」そう言って私が微笑むと、長年、地球再生プログラムを研究してきたチームのリーダー、ロイス・ドーゾン博士は、眉を寄せて悲しそうに私を見た。
博士以外のクルーたちは皆、既にカプセルに入り眠りについた。
しかし、そのカプセルは普通の睡眠用のカプセルだ。
これから起きる爆発に耐えれようもない。
そのまま恐怖に怯えることなく苦しまずに死を迎える為に、いちはやく眠りについたのだ。
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「博士、心配しないでも、かつてのような青く美しい水の惑星がきっと生まれるわ!その可能性を信じて生き残った私達は何年もの間、この宇宙空母ノアズテラで研究と計算をし続けてきたのではないの!」
「だが…あくまでも仮説の上での計算上の事なんだぞ?何十億年以上もこのカプセルが持つなんて可能性は微々たるものだ!それでも?」と博士は心配そうに言う。
「私の覚悟はかわらない!それでも可能性はゼロではないんだもの!私は地球をも貫いた隕石の力を信じてる」
地球の核を突き抜けたと思われる隕石は地球を突き抜けたあと停止し、ノアズテラが回収した。
ノアズテラの中で十年、その石は研究しつくされ、ある一定の光源と音源をあてると液体化する事を博士が発見した。
そしてその液体でコーティングした特殊な生命維持装置”卵”と呼ばれる銀色のカプセルに綺羅は入り眠りながら何十億年もの間宇宙を漂う気でいるのだ。
地球の核、マグマの中心を通ってすら溶ける事も傷つくこともなかったその石ならば確かにあらゆる衝撃に耐えれると考えられた。
しかし地球を死においやったこの石を他のクルー達は呪いの象徴のように嫌い、それを利用しようだなどと誰も思わなかった。
ドーゾン博士と綺羅以外は…。
綺羅はその名のように瞳をきらきらと輝かせながら言う。
「あの燃えるように光る星…かつての私達の地球は十年以上の時間をかけて核融合の果てに百倍にも膨れ上がりすでに太陽と変わらぬ巨大な炎の星になり果てた。そして、あと数時間で太陽とぶつかり、太陽と地球は核融合の果てにビッグバン、はじまりの大爆発が起きる!それは終わりかもしれない。でも、この爆発で、また命の星が生まれる筈よ!私は、それを見たい!例え人類がまだ生まれていなくてたった一人で命を終えたとしても最後の一瞬まで生きて未来を夢みたいのよ。私が降り立った大地に私の死んだ後の細胞の一つでも新たな生命の誕生の促進に役立つかもしれない」
そう、綺羅は自分の死骸すら、内にある細胞のすべても、もしかしたら種の役目を果たすかもと思っている。
自分という命を次に残したい。
どんな形でも命を繋ぎたいのだ。
「ああ…綺羅…君は強い人だ」ドーゾン博士は感極まって泣きそうな顔でそう言った。
皆が呪うように言う終焉の爆発さえ、『はじまりの爆発』と呼び、皆が『終わり』を覚悟し命を終えようとする中でたった一人いまだに未来を見据える。
それも、まだ生まれてもいない新たな生命の未来に想いをはせる綺羅に博士は驚きと尊敬の念を抱く。
「そう?私から見たら皆の方が凄いわよ?私は世界の終わりなんて見たくないし、眠ったまんま死ぬのも嫌だもの。起きる前提でないと眠れないわ!」
そう言って綺羅は笑い、意気揚々と”卵”に乗り込んだ。
「綺羅、”卵”には僕の万感の想いと知恵と知識を全て注ぎこんでいる。運よく人類に近しい世界に降り立った時にあらゆる事態に想定できうるように…まぁ、そのときこのカプセルと君が生き残っていたなら…だけどね?…必ず役に立つはずだ」
「うん、大丈夫な気がする!ドーゾン博士は私が知る最も尊敬する天才だもの!きっと私は目覚めるよ!始まりの世界に降り立つ!」
「僕もそれを信じるよ、おやすみ!」
そして、ロイス・ドーゾン博士は、寂しそうに微笑みカプセルを閉じた。
地球を離れて十年
綺羅は三十二歳で眠りについた。
***
そして百倍にも膨れ上がった地球と太陽はぶつかり、他の星々も巻き込んで宇宙の大爆発ビッグバンは起こった。
地球人類の粋を集められた空母は一瞬で消え、地球をいや、ひとつの銀河を壊滅においやった隕石につつまれた”卵”だけがそのすごい熱量の中、無傷のままに宇宙の膨張の光の渦の中に巻き込まれて行った。
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