上京ほの恋男子

沙風 れおは

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本編

第4恋「ショッピング戦争!?」その5*

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あの合図の後、刹那。

「な、なんだべこの光景……」

まさに戦場。あんなにおしとやかそうだった主婦達が私の、私のと卵のパックを奪い合っている。

(おっそろしぃべ!?)

と、たった今、やっとユキは人混みの中、卵の目の前にたどり着いた。

「けんちゃん!パス!」

ユキが伸ばしてくる。

「あいさー!って!?」

ユキが伸ばした手の先から卵が奪い取られた。

気品そうなマダムが奪い取ったらしい。

(こ、こんなの買い物じゃねぇべや!?)

「はい!けんちゃん!次!」

「あ、あいさー!」

次のやつはちゃんと受け取れた。

「よしっ!」

「しっかり守っといて!奪われたらゲームオーバーや!はい次!」

次のもちゃんと受け取れた。

(!?)

カゴに入れれば大丈夫だと思っていたが、なんとこのモンスター達、カゴの中の卵もどさくさに紛れて取ろうとする。

(こ、怖いべさぁ!?)

高い身長を生かして頭の上にカゴを掲げて、モンスター達の攻撃を阻止した。

そしてまた一つ、卵のパスが通った。
只今、三パック。

みるみるうちに減っていく卵パック。
二十パック……十パック……五パック……三パック……
ラスト一パック!

幸運にも最後の一パックを取ったのは、ユキだった。

「けんちゃ、きゃあ!?」

最後の一パックを渡そうとしたとき、ユキはモンスター達のおしくらまんじゅうに潰され、最後の一パックを取られてしまった。

「あぁ!最後のやつがぁ!」

と、僕が嘆いていて約3秒。ユキがモンスターおしくらまんじゅうの中から抜け出てきた。

「三パックあれば十分だべ!取られないうちにレジに走れぇぇぇぇ!」

ユキはあの人混みの中にいたのでヘトヘトだった。
ユキの後ろからはまだ僕のカゴの中の卵を狙うモンスターの大軍。

全力で店内をダッシュ(良い子は真似しないちゃだめだっぺ)し、コーナーをほぼ九十度で曲がって……

レジに持っててピッピッ。

「卵はお一人様二パックとなっておりますが……」

「私もいます!」

後から来たユキは息を切らしていた。

「失礼致しました。三点で合計税込90円となります。」

「「やったぁ!」」

(ショッピング成功だべ!)

僕達はこの戦争を制した。


帰り道、僕が卵パック三つとユキが後から買った他の食材を持ちながら自宅のアパートへと向かった。

「ほんとに恐ろしかったべぇ……。トーキョーっておっかねぇべや~。」

「でも、今日のショッピングは大成功だべ!」

ユキは、とても満足そうだった。

「卵いっぱい買ったし、今日の夜ご飯はオムライス作ったる!」

「おぉ!って、朝も卵食べたべや?卵ってそんな食べたちゃ行けないんだべ。」

「その常識はもう古いべや。」

「え!?んだーず!?」

んだーす!? とは、そうなの!? という意味。
他には、んなの!? とか んだべか!?などもある

(知らなかったべや!)

ふふっとユキは笑った。

「そろそろ、昼ごはんやね。」

あんなに過酷な戦争に行ってきてきたから忘れていたが、まだお昼にもなっていなかった。

「角のカフェいかん?」

「カフェ!?」

僕は目をキラキラさせた。角のカフェとはアパートに着く前に曲がる角にあるカフェの事だ。

「あそこ、ランチメニューあるし、そこで食べていかん?」

「行く!行く!」

『トーキョー行ったらやってみたいことリスト』に書いてある『カフェに行く』が今叶うことになった。

「早くいくべ!」

「けんちゃん!そんなはしゃいだら卵割れちまうべや!」

「あ、ごめん。」

もうっ。とユキは笑った。

太陽は高い位置にあったが、日差しはそこまで強くなかった。


第4恋 おわり。
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