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「お前がヤクザがバックに居るって言う刀赤か?」
昼休み、誰も居ない屋外で昼食を食べていると名も知らぬ2年生の先輩と思わしきネクタイをした人物に話しかけられた。
俺は当然のごとく無視をした。
2年生の先輩は怒っているのかプルプルと震えながら再度問いかけた。
「聞いているのか?お前がヤクザの刀赤か!」
再度俺は無視をする。
まだ弁当を食べている最中だ。
「話しかけているというのになんだその態度は。
その背中の鬼でお前がヤクザってのはわかってるんだ。
とっと美少女二人を解放しろ!」
酷い言われようだ。
ここまで噂に踊らされ、自分が正しいと思いあがるための正義感。
一切の情報確認をしていない言い草。
「お前なんて反社が平和な学校で弁当なんて食ってるんじゃねえよ!」
自分の間違った正義感のまま俺の弁当を蹴ろうとしてきた。
「おい。食いもん粗末にすんじゃねえどボンボンの童っぱ風情が他人様のもん食えなくしていいもんがなかぁ!」
俺の声では無かった。
俺ではない誰かが俺から発せられた。
「な、なんだ!?」
俺は口を開いていない。
でも俺の方から声が聴こえることに対して先輩はたじろいでいた。
「おんめえのばあさんも泣くぞ!」
傷から声が聴こえる。
確かに背中に来る振動を感じた。
「お、お前は何なんだよ化け物!」
傷が動き始めていた。
「ひ、ひい化け物だぁぁぁ!!!」
先輩もそのことに気が付いたのか脱兎のごとく逃げ出した。
「坊、初めましてだな。目ぇ閉じろ。」
言われるがままに目を閉じた。
するとかつて夢で見たモノと違う遥かに大きな巨躯を持つ鬼が居た。
力の象徴とたる角、虎殺しの証、金剛力士のような筋肉。
強さの象徴がこれでもかと散りばめられた一種の彫刻のような強者が目の前にいた。
でもひとつ不可解なことがあった。
「鎖?」
鬼は鎖に繋がられていた。
四肢、頭部の角、全てが鎖に繋がられている。
そして腹部に西の文様が描かれた錠がかけられていた。
鍵穴は無いが手形あった。
これは俺の手を入れる手形だと思った。
「ああ、俺らは白虎の輩に封印されていんかんなぁ。
なあ坊、いっちょ封印解いてみてけぇか?」
この封印は解いてしまえば取り返しのつかないことになる気がした。
「断る。」
「なんでだ?坊はいつでも白虎に回せるようになったんだべぇ儂らなんかいらねえべぇさぁ。」
「何年一緒に居たと思ってる俺の一生なんてあんたの半分以下だろうに、それとももう人の一生に付き合えないほど落ちぶれちまったのか?」
「言うべなぁ。
まあいいべぇ。
負けそうになったら何時でも封印を解けばいいべさぁ。
ま、前回、手ぇ貸したのは儂じゃねえけどもな。」
「ならここでは話しかけるな。」
「断るべさぁ儂ぁ餓鬼、誰よりも食い物を粗末にするのを嫌うのさぁ。」
鑑定
餓鬼(牛鬼族)
個体名 ジャミングされました。
飢え死んだ生命が成る鬼の一つ。
闘争本能が高く一度暴れると手が付けられない。
何よりも食うことに対して一切の躊躇が無いので彼が通った道には草一つ残らないと言われている。
「人のこと鑑《み⦆るのが好きなんだべな。坊から見て儂はどう写ったかぇ?」
「知らねえ、俺はあんたが自分の大切にしていたものを食べたのかも知らねえ。親を喰ったのかも知らねえ。」
「ほうほう、坊にしては良い答え知ってんべなぁ。」
「知らねえから良いんだよ。俺もお前も知らねえことだらけだろうに。」
「儂は知ってるんべぇよ。坊が13の時だったんべぇか親を傷つけたんべさぁ。」
俺の過去を語るな。
そう言いたかった。
でも言えない。
本当のことだったからだ。
なんで自分ばっかり苦しまなければならないんだ。
見たくもない傷跡ばかり見せられて。
不快な目で見られて。
怒れば面白がってもっと怒らせようと化け物扱いされて。
何かにあたっていないと壊れそうで仕方がなかった。
それでもなんとか生きようと頑張ったのに最後にあったのは
自殺しようとした親の姿だった。
もう限界だったのだ。
戦う気力も何もかも失った人に望みは無かった。
その時、両親を病院に連れて行ったのが文夫さんだった。
医者からはしばらくは会わない方が良いと言われた。
自殺未遂まで行った人間の完治は難しく通院しながらの寛解という結果が最良となる。
そこまで親を追い込んでしまった自分がとても情けなく思えてくる。
実際情けない如きでは済まされない。
事実上の殺人鬼を呼べるだろう。
身体を鍛えてしまっては更なる殺人鬼になってしまうからと身体を鍛えることを完全に辞める予定だった。
でも異世界に行ってもっと世界を知ろうと思った。
そう今尚現れる現実から目を逸らそうとして。
餓鬼は煽っていた。
「それが俺のために成ると思ってるのか?俺はなお前らと一緒でないと現実を見れないんだよ。」
「はははは、坊は面白いなぁ。まあ気長に待ってるよ。お前が絶望するその時をな。」
目を再度開くと顔が変わった。
「現実に戻ってきたか。」
また化け物生活を送る日々が戻ってきたが異世界に行ってストレス発散しようかと思った。
「だけど学校からは行く気にならねえな。」
教室に戻ることにした。
弁当を食べ終えてから……
昼休み、誰も居ない屋外で昼食を食べていると名も知らぬ2年生の先輩と思わしきネクタイをした人物に話しかけられた。
俺は当然のごとく無視をした。
2年生の先輩は怒っているのかプルプルと震えながら再度問いかけた。
「聞いているのか?お前がヤクザの刀赤か!」
再度俺は無視をする。
まだ弁当を食べている最中だ。
「話しかけているというのになんだその態度は。
その背中の鬼でお前がヤクザってのはわかってるんだ。
とっと美少女二人を解放しろ!」
酷い言われようだ。
ここまで噂に踊らされ、自分が正しいと思いあがるための正義感。
一切の情報確認をしていない言い草。
「お前なんて反社が平和な学校で弁当なんて食ってるんじゃねえよ!」
自分の間違った正義感のまま俺の弁当を蹴ろうとしてきた。
「おい。食いもん粗末にすんじゃねえどボンボンの童っぱ風情が他人様のもん食えなくしていいもんがなかぁ!」
俺の声では無かった。
俺ではない誰かが俺から発せられた。
「な、なんだ!?」
俺は口を開いていない。
でも俺の方から声が聴こえることに対して先輩はたじろいでいた。
「おんめえのばあさんも泣くぞ!」
傷から声が聴こえる。
確かに背中に来る振動を感じた。
「お、お前は何なんだよ化け物!」
傷が動き始めていた。
「ひ、ひい化け物だぁぁぁ!!!」
先輩もそのことに気が付いたのか脱兎のごとく逃げ出した。
「坊、初めましてだな。目ぇ閉じろ。」
言われるがままに目を閉じた。
するとかつて夢で見たモノと違う遥かに大きな巨躯を持つ鬼が居た。
力の象徴とたる角、虎殺しの証、金剛力士のような筋肉。
強さの象徴がこれでもかと散りばめられた一種の彫刻のような強者が目の前にいた。
でもひとつ不可解なことがあった。
「鎖?」
鬼は鎖に繋がられていた。
四肢、頭部の角、全てが鎖に繋がられている。
そして腹部に西の文様が描かれた錠がかけられていた。
鍵穴は無いが手形あった。
これは俺の手を入れる手形だと思った。
「ああ、俺らは白虎の輩に封印されていんかんなぁ。
なあ坊、いっちょ封印解いてみてけぇか?」
この封印は解いてしまえば取り返しのつかないことになる気がした。
「断る。」
「なんでだ?坊はいつでも白虎に回せるようになったんだべぇ儂らなんかいらねえべぇさぁ。」
「何年一緒に居たと思ってる俺の一生なんてあんたの半分以下だろうに、それとももう人の一生に付き合えないほど落ちぶれちまったのか?」
「言うべなぁ。
まあいいべぇ。
負けそうになったら何時でも封印を解けばいいべさぁ。
ま、前回、手ぇ貸したのは儂じゃねえけどもな。」
「ならここでは話しかけるな。」
「断るべさぁ儂ぁ餓鬼、誰よりも食い物を粗末にするのを嫌うのさぁ。」
鑑定
餓鬼(牛鬼族)
個体名 ジャミングされました。
飢え死んだ生命が成る鬼の一つ。
闘争本能が高く一度暴れると手が付けられない。
何よりも食うことに対して一切の躊躇が無いので彼が通った道には草一つ残らないと言われている。
「人のこと鑑《み⦆るのが好きなんだべな。坊から見て儂はどう写ったかぇ?」
「知らねえ、俺はあんたが自分の大切にしていたものを食べたのかも知らねえ。親を喰ったのかも知らねえ。」
「ほうほう、坊にしては良い答え知ってんべなぁ。」
「知らねえから良いんだよ。俺もお前も知らねえことだらけだろうに。」
「儂は知ってるんべぇよ。坊が13の時だったんべぇか親を傷つけたんべさぁ。」
俺の過去を語るな。
そう言いたかった。
でも言えない。
本当のことだったからだ。
なんで自分ばっかり苦しまなければならないんだ。
見たくもない傷跡ばかり見せられて。
不快な目で見られて。
怒れば面白がってもっと怒らせようと化け物扱いされて。
何かにあたっていないと壊れそうで仕方がなかった。
それでもなんとか生きようと頑張ったのに最後にあったのは
自殺しようとした親の姿だった。
もう限界だったのだ。
戦う気力も何もかも失った人に望みは無かった。
その時、両親を病院に連れて行ったのが文夫さんだった。
医者からはしばらくは会わない方が良いと言われた。
自殺未遂まで行った人間の完治は難しく通院しながらの寛解という結果が最良となる。
そこまで親を追い込んでしまった自分がとても情けなく思えてくる。
実際情けない如きでは済まされない。
事実上の殺人鬼を呼べるだろう。
身体を鍛えてしまっては更なる殺人鬼になってしまうからと身体を鍛えることを完全に辞める予定だった。
でも異世界に行ってもっと世界を知ろうと思った。
そう今尚現れる現実から目を逸らそうとして。
餓鬼は煽っていた。
「それが俺のために成ると思ってるのか?俺はなお前らと一緒でないと現実を見れないんだよ。」
「はははは、坊は面白いなぁ。まあ気長に待ってるよ。お前が絶望するその時をな。」
目を再度開くと顔が変わった。
「現実に戻ってきたか。」
また化け物生活を送る日々が戻ってきたが異世界に行ってストレス発散しようかと思った。
「だけど学校からは行く気にならねえな。」
教室に戻ることにした。
弁当を食べ終えてから……
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