オタク草食系男子は超肉食ヤンデレ宝石令嬢に美味しくいただかれます~純愛から狂愛へダイヤモンドの瞳は狙った獲物を逃さない~

スライム道

文字の大きさ
6 / 84

菊の花言葉は「高潔」

しおりを挟む
『そういえば聞いたことがあるな。今の私と同じく貿易商を営んでいたご先祖様は押し花が趣味だったと……これはその時の名残か。しかしこんなにもご先祖様はロマンチストだったとは』
『花言葉の起源は定かではありませんが花の生き方を模して語られた言葉がとても多いです。貿易商を営んでいたということはその土地の土地柄を熱心に調べていたではないのですかね』
『これは君に一本取られたね。どうだい、私の後を継ぐ気は無いかね?」

流石にそれは冗談だろうと思うも苦笑いが零れる。
……がエリクソンさんの隣に居た実の娘はそうは捉えなかった。

『ば、バルタザールそんなこと本気で言わないで!蒼汰さんも困ってるでしょ!!わ、わたしが蒼汰さんとけ、けけけけけっこんするなんて』

病室だというのに大きな声を出しエリクソンさんをバシバシと叩いていた。

『おや?僕は結婚とは一言も言ってないが?それに会社を継ぐという提案は軽いジョークのつもりで言ったのにレイナを本気にしてしまったのかな?いやはや僕が恋をしたのは大学を卒業してボランティア活動をしている最中だったがレイナは恋をするのが随分早いようだ』

顔を真っ赤にプスプスと音を立ててショートさせる甘夏さんにエリクソンさんはニヤニヤしていた。

『どうだい華道君、本当にうちの経営を継いでくれてもいいんだよ。今なら、こんなにも可愛い娘が嫁についてくるけど?』
『申し訳ありませんが、私は生涯独身と心に決めておりますので』
『若者の結婚離れは先進国は多いね。まあ我が家の女の血筋は諦めが悪い人物しか居ないものでね。気を付けるんだよ』

思いっきり不吉なことを言われた気がする。
蒼汰は思わず身震いしたがその評しにショートしていた甘夏さんが冷却され復旧した。

『私!蒼汰さんを振り向かせて見せます!!』
『うんうん、ただ避妊はしっかりね』

あ、そういえば今日はラノベの発売日だった。もう退院していいって言われたしラノベ買いに行こうっと
蒼汰は現実逃避をしていた。蒼汰にとっては未だに甘夏さんはさんなのだ。
会ってまだ数日しか経ってない異性にいくら好意を向けられようと生物学的に欲情することはあってもそこに恋愛感情が生まれることは無い。

『すみませんそろそろ帰る準備をしたいのでいいですか?』
『ああすまないね。後は弁護士を通して君の両親から君へしっかり慰謝料が渡ると思うから安心してくれたまえ』

エリクソンさんは連絡事項を話してから出ていった。
しかし甘夏さんは出ていかなかった。

「あの甘夏さん?」
「玲菜」
「甘夏さん?」
「玲菜です!蒼汰さん!!」

物凄い剣幕で迫る甘夏さん。

「だから玲菜です!!」
「?」
「名前で呼んで欲しいんです!」
「なんで?今まで名字呼びだったし別に今更名前呼びにすることないと思うんだけど」

そもそも蒼汰は人の名前を覚えようとすることは苦手、不得手としていた。
というのも実家の花屋の手伝いばかりさせられており遊ぶ仲間も居なかったため人の名前を覚えようとする機会があまりなかったのだ。
実際お店で覚えるのはお得意様の名字くらい。
甘夏さんの名字を覚えていたのも名字だけは覚えておけばいいという接客根性が招いた結果だった。

「私は外国暮らしですから名字呼びが慣れないんです!」
「え?でも最初の時……」
「慣れないんです!!」

もはやジャイアニストである。

「こら、玲菜、淑女たるもの謙虚でなくてはなりませんよ」

そこには玲菜さんの日本人的特徴を遺伝させたであろう人物が来ていた。

「華道さんいつもご実家の方にお世話になっております。甘夏 春菊と申します」
「お、おかあさん」

病院で見ている限り驚くときに使っている言語は英語が多かったのに日本語に成っているところをみると器用に使い分けているんだなッと感心した。

「こちらこそいつもたくさん買っていただいてお世話になっております」
「あらま、流石華道さんとこの息子さんはほんまいい教育しとりますな」
「ありがとうございます」
「それにしてもうちの子はねえ」

和服姿の春菊さんは色々混じった方言が見受けられる気がしたが育ちがよさそうなのはうなずけた。
春菊さんは娘を猛禽類のような目つきで玲菜さんを見つめた。

「玲菜は夢中になってほしいのはわかってるんやけん、おかあちゃんに言うてみい。一気に距離縮めようとしたんちゃいますか?」
「う、それは……」
「私は言い張りましたよ。人のペースに合わせなさいと」

どこか似非っぽいというか、本物に近いかもしれないが何か混じっている気がしてならない春菊さんの口調に疑問を持つ蒼汰。

「ご、ごめんなさい蒼汰さん」
「うん別にいいよ」
「華道さんあんま甘やかさんくてええから、この子には迫るのはやめりん言うときますから」

どうやらあの父親にしてこの母親ありのようだ。
名は人間を現すと言うが事実のようだ。

そう菊の花言葉「高潔」という存在を体現したような人間だと思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん

菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

処理中です...